プロローグ 魔王討伐!!
初めての投稿で読みにくい文ですが、お付き合いいただければ幸いです。
その昔世界がひとつになり強大な敵と戦った時代があった。
生ける全ての種族を根絶やしにせんと魔族の王が突如世界に向け覇道を唱えた。
人族以外は亜人と呼ばれる種族で、元は共存していたが魔王の出現とともにその立ち位置を変えた。
まず、魔族は魔王派か共存派かで真っ二つに割れた。
魔王派は各地に散らばっていた魔族を呼び戻し、魔王城を建造。魔物を育て人族との戦いに備えた。
共存派は魔王派に殺される者も居たが獣人族を介し人族と結託。魔道のエキスパートとして魔族の戦い方を伝授していった。
次にエルフ族は当初無干渉を貫いていたが西にある主要な森を襲われて以来人族側についた。
エルフも魔道のエキスパートだがエルフは光や水、風の魔法が得意であり魔族は闇、火、土魔法が得意である。
獣人族は当初から人族との共存を続ける事を宣言。各地に散らばった獣人族も派遣された騎士団と共に魔族を撃破していった。
・人族の勇者は異世界より招かれし者
・獣人族の勇者は東方随一の拳士
・エルフ族の勇者は西方一の弓の名手
・魔族の勇者は北方の魔道国家の手練
この4人が協力し魔王城までたどりつき、魔王を追い詰めた。
魔王城 謁見の間にはおびただしい量の骸が転がっている。
体がひしゃげた者、真っ二つになっている者、黒こげになっているもの、矢だらけになっているものなど。
「ぐぅ.....」
頭に巨大な角を2本携えた魔王が唸るように漏らす。
2mを越す体には長い刀が貫き、体には無数のあざと矢が刺さっておりその体には幾重にも呪文が刻まれその行動を縛っている。
一方、刀を握るのは黒目黒髪の青年で全身に返り血を浴び黒いマントは赤く染まっている。
青年を赤い瞳でにらみながら赤く染まった髪の色がグレーに変わっていく。
「......」
グシュッ
魔王の心臓から刀を引き抜くと、血を払い刀を構える。
刀を引き抜くと魔王は背中から地面に倒れこみ、ニヤリと笑うと右手を勇者にかざす。
その手には魔力ではない紫色のオーラが揺らいでいる。そしてオーラをボール状にして平次に向かい飛ばしてきた。
紫の玉は平次の体をすり抜けて空中で霧散した。
すると魔王は何かを感じたのかハッとした表情で勇者を見た後、狂ったように笑い出した。
「そうか、貴様は異世界の勇者であったか!!!
道理で、道理で我が術が効かぬ訳だ!!!
グッ...グハハハハ!!!」
狂ったように叫ぶその眼は狂気で染まっており、全身を纏う黒い甲冑がビリビリと震える。
「..............」
獣人族で獅子の勇者キールは愛用の手甲も砕け、腕は折れている。赤いオールバックのたてがみは返り血で黒く染まりつつあった。
腕は折れ、あばら骨も砕けているが魔王の配下を蹴り技のみで圧倒し、寄せ付けなかった。
人族の剣聖相手に一歩も引くことなく、己が拳のみで渡り合う武術の達人である。
あばらが砕けた、腕が折れた程度でとまることは無い。
「耳を傾けてはいけません」
エルフ族のアリスは魔弓を引き絞る。美しい金髪がすすで汚れ白いバトルドレスはところどころ焦げている。
その青い瞳は魔王の動作をつぶさに観察し警戒を解かずに居た。
西の森の出身であり魔族に焼かれた森の中で一番最初に被害にあった場所でもある。
彼女は魔族に捕らえられ、辱めを受けそうになったところで人族の勇者に助けられた。
彼女の魔族を恨む気持ちは人一倍強い。
「ベエル様....」
褐色の肌に白銀の髪、金色の瞳をもつ妖艶な魔族のイルザは手に持つ細長い魔剣に魔力をこめる。
もともと魔王 ベエルの配下にして魔将 十二柱が一人”魔導師イルザ”は膨大な魔力を複合しさまざまな魔法を行使する魔族だった。
人族の勇者が北方の最前線で保護した彼女は勇者の働きかけで仲間になり今に至る。
「...イルザ、貴様もか..うっ....ぐふぅぅ」
魔王は牙だらけの口から大量に血を吐く。
息も絶え絶えに魔王は最期の足掻きとばかりに体中の魔力を集める。
「っ!!!ヘイジ殿!!!!」
アリスは弓をつがえたまま勇者のほうを見る。
人族の勇者ヘイジ、本名周防平次はこれまで戦った中で目の前に居る魔王が一番の強者だと認識していた。
平次は魔王の魔力を読み取る。これは会得した能力で相手の魔力の流れを読み次の攻撃を予測するものだ。
魔王がやっている事は手のひらに魔力を集めているだけだ。ただそれだけなのに、ずいぶんと胸騒ぎがする。
「終わりだ、魔王」
平次が刀を構え、一気につめると魔王は手のひらに集めた魔力を平次に向かって放った。
「!?」
反応が一歩遅れた平次はまともにその魔力を浴びてしまう。
大体の攻撃魔法なら跳ね返す魔術が織り込まれたマントが一切反応せず、魔力は平次の体に入り込んでいった。
全身に浴びた血が黒い魔力に吸収されるように消えていく。
「なっ、何をした!!!」
アリスが矢を放つが、矢は魔王に刺さることなくその身を通過していった。
「!!」
驚くアリスに対し、キールとイルザは魔王の状態をじっと見ていた。
魔王の体は手足の先から崩れていき、顔にはひびが入る。
「ククク、名も知らぬ勇者よ。
貴様には我が一部を預けた。我が力が貴様の力を上回るとき、貴様は我になるだろう....
忘れるな、勇者よ。我は貴様と共に」
いい終わる前に平次は刀で残る体を一閃した。
「...確かに、すごい魔力だ。
だが、貴様の様にはならん」
平次は消え去った魔王に向けて言った。
あたりにいた魔物の気配も魔王が敗れ去ったと見るや散り散りに消えていく。
「....終わったのか、ヘイジ」
キールが地鳴りのするような声で話しかけてきた。
「..ああ、まだ完全に決着はついてないけどな」
刀を鞘に納めて異空間に収める。そして魔王のツバイハンダーソードを手に取り玉座に突き立てた。
『汝、悠久の時越え主呼び戻すこと許さじ
”封印”』
そして剣に向かい魔力を注ぐと、剣は光り輝き一瞬で消え去った。
玉座も同時に消え、代わりに封印陣が地面に刻まれる。
「...ふぅ、これでよし」
振り返ろうとすると、ふわりと花の香りと共に強く抱きしめられた。
ずいぶんと昔のように感じてしまう懐かしい匂い。
「っ!!アリス」
あわてて彼女を抱きとめるが、その肩は震えていた。
「ヘイジ!!!体はなんとも無いの!?どこか痛むとかは!?
全部終わったんだよね!?」
両目に涙をため、平次を強く抱きしめながら顔を目いっぱい近づけて質問をぶつける。
アリスは小柄だが、平次の首に手を回してぶら下がるように抱きついているので顔が近くなる。
そして、いつもはキリリとした態度なのだが平次といるときはこのように口調が幼くなってしまう。
「だ、大丈夫だ。このとおり体はピンピンしてるさ」
ドキドキする気持ちを抑えてアリスに向かって微笑むが、イルザは全てを見透かすかのように何も言わなかった。
.....もうちょっとだったんだ。あと少しだった。
平次達は周囲の魔物の死骸を焼却し、魔王城をあとにし王宮へと帰ることにした。
アリスは平次の横に、キールとイルザはその後ろを付いていくいつもの形だ。
「よかったぁ.....これで帰れるね。
やっと落ち着いて休めるし...
里はもう無くなっちゃったけど、平次とならどこでも良いよ!」
魔王城の城門を前にアリスは腕を組みながらエヘヘと輝くような笑みを返してくれる。
その笑顔が心に刺さる。
あと一瞬、気づくのが早ければ。
最後まで油断しなければ。
「ああ、そうだな」
言ってもしょうがない。新たに加わった役目を終わらせるため、
平次は魔力を一瞬開放しアリスを睡眠魔術で眠らせた。
平次相手で油断していたのか、疲れていたのかアリスは一瞬で眠った。
倒れるアリスをあわてて抱えこむ。
長いまつげが揺れ、頬は少し上気している。
いつもならこんな事できないな、とお姫様だっこ状態のアリスの横顔を見ながら思う。
後ろ髪を引かれる思いで彼女をキールに預けた。
「今も魔王の魔力が俺の体を蝕み続けている。気を抜くと意識を持っていかれそうだ。
自分の中の魔王にも決着をつけるが、俺が暴走すると厄介なんでな。ここでちょっと休ませてもらう」
「.....そうか」
キールは口数が少ない武人だ。平次とはぶつかる事も多かったが一族の仲間よりも仲間らしい相手といえる人物だった。
その平次が今にも泣きそうな顔でキールへアリスを預ける。
目の前の青年が、どのような思いでこの決断をしたかはキールには想像もできない。
だが目の前の武人が信じて自身の愛する女を預けてくれたのだ、同じ武人として受けぬはずはない。
アリスを抱きかかえると、キールは腰の袋から魔力のこもった真紅の宝玉を平次に渡した。
「これは?」
「我が一族に伝わりし秘宝、エリキシル。一度だけ死を免れる。
アリスは強い女だ。だがお前なしではダメだ。
必ず帰って来い」
キールはエメラルドグリーンの目をしっかりと平次と合わせた。
「....ああ、約束しよう」
平次はそれを受け取ると、腰の袋にしまった。
「......平次様。わたくしがしっかり魔力の流れを見切っていれば....」
イルザは申し訳なさそうに小さくなってモジモジと平次に声をかけた。
両手を合わせているせいで豊満な胸がさらに強調されている。
「イルザのせいじゃないよ。これも俺の不覚だ。
.....アリスをたのんだよ」
ポンと頬に手を置くと、その手を愛おしく包み込み自分の胸に引き込んだ。
「必ず、必ず帰ってきてくださいませ。
私とアリスはいつまででもお待ちします。
いつまでも、お慕いしております....」
イルザは一筋の涙を流すと、名残惜しそうにその手を離した。
「...ああ、行って来るよ。必ず帰ってくるから安心して待っていてほしい。
いつ戻ってくるかわからない。でも必ず帰ってくる」
腰の袋から手のひらの大きさほどの首飾りを取り出し、キールとイルザに預けた。
「これは俺の魔力に反応するものだ。俺が近くにいるときはこの首飾りが光る。
もし俺が戻ってきたときにこの場所がなくなっていても、この首飾りが教えてくれる」
そう言うと、平次は3人に背を向け魔王城へと歩き始めた。
その姿が魔王城に消えるまで、2人は平次の姿を見ていた。
「キール様、参りましょう。
王都に戻りこの状況を報告し、戻ってまいりましょう」
平次を見届けたイルザは再びキリリとした表情になると、強い目でキールに提案した。
キールはアリスが起きたときどのように説得するかを考えながらイルザに答えた。
「....そうだな、あの者が眠るこの地を守らなければ」
キールも平次が眠るこの地に他人が入ってくることを良しとしなかった。
二人は王城で暴れるアリスを説得し、再び三人でこの地に戻ってくるとそれから彼が目覚める間ここを守ると誓った。
当初は英雄三人が王都を離れるのを嫌った王が引きとめようとしたが、彼が眠る地に行くことを阻まれそうになると
全力で抵抗するアリスに王が折れ、キールの進言もあり三人は魔王城へと戻って行った。
ちなみにアリスとイルザには王都に戻ってから爵位と婚姻相手まで見繕われていたが二人が一切取り合わなかったため、
ことごとく王の目論見は崩れ去っていた。
―そして彼が眠ってから約千年たった今、魔王城の地下封印殿に強力な魔力が満ち溢れた