金髪の美少女
今回はユウヒさんがメインの動きとなります。ではどうぞ!
「で、なんやかんやあったけど説明するね!
私は、桜井 風花、この家の長女です。フウカって呼んでね。」
と言いながら私たちに自己紹介を目でうったえてくる。
「私は、影野 ユウヒ。一応お兄ちゃんもいるけど多分ベッドの上にいると思う。」
「……よろしく。」
「私は、シルフィー=スカーレット。呼び方は任せるわ。」
「じゃあ"フィーねえ(姉)"ね。よろしく!」
「フィ、フィーねえ?まあ、なくはないかも……。」
「僕は三鈴。呼び方は任せるよ!」
「……よろしく。」
「私はユカ、緋井 結花です。よろしくお願いします。」
「ユカちゃんね。よろしく!」
「あの〜フウカさん?やけに私と三鈴に態度悪くありません?」
「……だってお姉さんたち"マモノ"の感じがするんだもん。」
三鈴はしょうがないとして、私はまさか!と思った。秘密裏に魔法の練習をしていた時だ。なんとなく状態を確認したかったので兄には隠しているが"固有魔法 サーチャー"(対象の調べたいことを確認できる)を使ったのだ。その時のステータスがこうだ。
影野 ユウヒ
習得魔法
ヒール
ファイア
アイス
サンダー
各種能力エンチャントetc.
その中に気になるものがあった。
モード:ヴァルキュリア
という魔法だ。
未だ使用したことがない。といえば嘘になる。その魔法を初めて目にした私はもちろん使ったのだ。その時体の一部に変化が生じた。髪の毛の色が変わったのだ。その変化に気づいた私はその魔法を中断した、のだが。半ば強引に魔法中断したせいか、髪の毛の色は金色のまま戻らなかった。いま、髪の色が黒に見えているのは幻惑魔法のお陰である。といってもシルフィーにはバレていたようだが。それが原因でフウカにマモノとして見られたのかもしれない。かくなる上は、一旦この魔法を最後まで詠唱しきることだろう。それでその魔法が終われば髪の色も元に戻るだろうという算段だ。
シルフィーを除く皆は未だに驚きから解放されていない。この状況をさらに悪化させる原因になるかもしれないが、わたしは幻惑魔法を解きそのまま詠唱に移った。魔力の高まりを感じる。
「モード:ヴァルキュリア!」
激しい光の洪水が引くのを待ってひとときの間をおいてわたしは目を開ける。そこにいたのは剣を構えたわたしだった。もう一人のわたしがいう。
「我が名は、ヴァルキュリア。数多の戦乙女の意思を受け継ぐもの。汝、なぜ力を欲するか。」
とても重みのある声、そのプレッシャーに押し戻されそうだ。
「仲間を守るためです。」
わたしは本心からそう答えたはずだった。しかし
「否。汝は自分の弱さを克服したい故、力を欲しているはずだ。」
間違いではない。
「確かに自分が強くなるために力を欲しているのかもしれない……ただ、その先にあるものが仲間を守ることにつながると思うんです。」
「……良かろう。」
といいヴァルキュリアは下段に剣を構える。
私は無意識のうちに光剣を具現化し、上段に構えた。
「では、いくぞ!」
……速いっ!下段からの一撃を私はかろうじて受け止める。いや、受け止めたがに見えたが少しずつ押されている!
「…………それじゃあダメだよ。もっと優しく剣にあわせないと……。そうだなぁ……ここを、親指と人差し指だけで持ってみて?あとの指は剣の柄に添えるだけ。ほら、支えといてあげるから。」
脳内で誰かの声が反復する。隣で誰かの体が実体化する。体は薄く透き通り、今すぐ消えてしまいそうな感じだ。言われた通りに剣を持ち替えてみる。するとどういうことだろうか。今までかかっていた力が嘘のように少なく感じた。
「……ほらね?あとは自分と剣を信じること。それさえあればいくらでも強くなれるよ。」
それを境に彼(彼女)の声は聞こえなくなった。
「ありがとう。」
そう口にして、私は目の前の戦いに集中した。剣を信じること。今の私には剣自身が意思を持っているように感じられる。激しい鍔迫り合いの中私は剣の意思を感じた。その意思に抗うこと無く私は鍔迫り合いをやめ、相手との距離をとる。これで決着がつくだろう。相手もそのことを確信したらしく、二者の間に緊張した空気が張り詰める。先に動いたのは相手、ヴァルキュリアの方だった。先ほどより速い動きだったが私は自然と力を抜いていた。そして、相手の剣の鍔が私の剣先に触れる寸前、振り上げる。
「カキン!」
金属の弾ける音が響く。ヴァルキュリアの剣の空を切る。剣はキレイに2つに割れていた。
「お見事です。この力あなたに授けましょう……。」
といいヴァルキュリアは後ろを向く。
「ありがとうございます……ところで、剣の片割れはどこ行ったんですか?」
上をヴァルキュリアが指指すので見てみるとその片割れは天井に刺さっていた。
「え、天井?」
いつの間にか景色は屋敷に戻っていたのであった。
「いやーお見事。なかなか見られないものを見せてもらったよ。普通ならこのまま負けて英霊魔法が使えなくなるところを勝っちゃうんだからね。」
英霊魔法?そういう魔法もあるのか。それにしても気持ち良かった。いやいや、勝利の余韻に浸っている場合じゃない。フウカは確かにこう言った。「見せてもらったよ。」と。で、天井に剣の片割れが刺さっているところを見ると戦場はここだ。でも、あのとき真っ白な空間にいて……。
「考えがまとまらないみたいだね。」
若干バカにしているようにフウカが言う。そしてその反論を待たずに話を続ける。
「では、答えです。ではお願いしまーす。」
とフウカがいうと目の前に透明の半球が出てきた。その中には三鈴とユカ。そして模擬戦をしている。
「……あっ!そういうことか!」
多分、あの半球の中は白色に見えているのだろう。マジックミラーみたいな構造なのだ。みんなはこれを通して一連の戦いを見ていた訳だ。私は頬が少し熱くなるのを感じた。
「お疲れ様。模擬戦にしては随分最後の方ヒートアップしてたけど、なんかあった?」
これは軽い質問のはずだったのだが、二人の反応はわかりやすかった。
「う、ううん。なんでもない(です)。それより……」
最後の言葉を濁す感じで終わる。こんな終わり方をされたら気になるというのが一般論だろう。無論、私もそれに同意だ。
「ン、何?何か言いたいことがあるの?怒んないから話して?」
文字として見ると恐喝にも見えなくはない場面だろう。もう一歩歩み寄って、ユカに聞きたい意思を明確にする。
「……そこまで言うなら………………あのーキレイです。とてもキレイです」
え?というのが私の初期の感想だ。むしろ、なんで(私)?という自身に対する否定の方が大きかった。ユカの暴走はまだまだ続く。
「……お姉ちゃんと呼ばせてくださいっ!」
突然すぎることだった。わたしはそのまま硬直に見舞われる。脳の命令が体に届くまで実に10秒の時間を要した。
「ちょ、ちょっと待って、一旦落ち着こうか。ほら深呼吸。吸って〜はいて〜。もう一度。吸って〜はいて〜」
さて、これでユカの暴走も終わるだろう。そう思っていた私がいた。だが、むしろこの発言は逆効果に終わった。
「で、お返事はどうなんですか?お姉ちゃん呼びしてもいいですか?ダメなんですか?」
これは、ユカの本心からなのか。だが、あまりにも急すぎる。普通ならそれなりの前兆があるはずだが、ユカにはそれが見られなかった。そういうのを隠して、その募っていく気持ちが爆発したら伝えるタイプなのか?それだったらフラれた時のショックがデカいだろうに……。という脇道に逸れかけた思考を元の路線に戻す。どうやら時間も無いようだ。時間が経過するごとに下からの上目遣いの目線が強くなってくる。……よし、決めた。
「べ、別に構わないけど、どうしてこんな急にそんなこと言ったの?」
嬉しそうな顔をした後ユカは黙り込んでしまう。これは地雷だったか?そう思ったのも束の間、助け船が出される。傍観者3名から「後ろ見ろ」というアイコンタクトが送られた。
後ろになんかあったっけなぁ〜。
そう思いながら振り返る私。そこには鏡があった。そこには無論、ユカと私…………が映っている。言い直そう。ユカと私ともう一人。だ。事実として映っているのは2人だけなのだが、今の私には分かる。彼(彼女)だ。どうしてわかるか。その理由は至って簡単だ。私の髪が金髪のまま戻っていないからだ。私は私の中のもう一人に話しかける。
「うーんと、さっきはありがとう。ところで、呼び名が分かんないから名前教えて?」
「アリス」
「じゃあアリス、これは貴女の力?」
と言い、自分の金髪を指す。
「うーん、どうだろうなぁ。実際こうしてひとと同調すること自体初めてだし」
この答えを聞いて肩をガックリ落としたわたしだった。
わたしは恥ずかしいのでこの色が嫌だったのだが周り受けはむしろ前より上がっている。ただ、今は
「解せぬ」
この一言につきる。結局このままの色でも気にしないようにすれば良い。と、思っていたのだが肩より長くなった髪が、動くたびひっきりなしに視界に侵入してくる。気になってしょうがないのだ。しょうがない、これも一種の慣れでなんとかなるさ。と割り切り今度こそ気にしないことにした。それ以外に変わったことといえば、ユカがなぜ?というほどに懐いている。これぐらいだろう。
さて、本題のパーティーの準備にようやく取りかかれる。料理は、桜井家のシェフが作ってくれるらしい。スムーズに事が運べそうで胸をなでおろした、わたしであった。
ーー
「コンコン。」
ドアがノックされる。
「はーい。どうぞー」
俺は、半分ドキドキしながらその時を待った。
「じゃあ、行きましょうか」
真っ黒なドレスに身を包んでいるのはシホだ。黒のドレスに対照的な白い肌がまた美しさを引き立てる。
「すごく似合ってますよ」
本心からそう思えるような格好だった。ちなみに、吸血鬼という種族は20歳ぐらいまでなら好きなように年齢と体の大きさを変えられるらしい。(ただし、それまでに成長する予定だった範囲内で)彼女の場合は170cmぐらいだ。
一方の俺といえば、タキシードといきたかったところなのだが、あの懲りないギルドマスター殿の命令に逆らうわけにもいかず無理やり着させられたのは、メイド服だ。さっきの半分ドキドキというのは裏を返せば半分の諦めがあったという事だ。
「どこに行くんですか?」
俺は目的地(パーティー会場)を聞かされていなかった。シホは「あっ、そうだった!」というような顔をした。それから少し考えて
「うーんと、秘密です!」
というと俺の目を手で覆った。そのまま彼女の指示のままに歩いた。しばらく経って
「5秒間目を瞑っていてください」
と言われたので暗闇の中、目を瞑る。覆っていた手が外され、光が入り込む。反射的に目を開けそうになってしまいそうだったが、なんとか耐える。
「はい、いいですよ」
とちょうど5数えたところでシホがいう。俺は目を開ける。
「ここは……。」
その広さに呆然としてしまう。前を向くと、みんながテーブルの向こう側で笑って手を振っている……のだろう。テーブルというか長机を何個も並べたようなパーティーで見るやつだ。にしても長い。人の顔がぼやけるぐらいには長い。20メートルはある。手を振ってるということはこっち来て、ということだろう。この服で走るのか。シホはどうやってこの距離を5秒で……なんて考えてるうちに、
「おーい、お兄ちゃん〜!あと10秒でセルフタイマーが起動しちゃうよー!」
これは酷い。この格好で全力で走れと言っているのだ。確かに間に合わない距離では無いが、1度できっちり撮ることは無いだろうと思いながら走る俺であった。(もうお兄ちゃん呼びになっていることには突っ込まない)
2秒前、息をゼイゼイ荒げながらなんとか間に合った俺に声をかけたのは金髪の美少女であった。
「ほら、早く座って!せーの!はい、チーズ!」
と言いながら彼女は俺の肩によりかかってきて、右腕に抱きついた。反対側ではシホが同じようにした。美少女2人に挟まれた俺は気が動転したがなんとかこらえて笑顔を作る。
パシャ!とシャッター音がなる。しっかり写真が撮れたのを確認した俺は立ち上がり2、3歩距離を置く。
「ン?あ、そうか。これね。」
と金髪の美少女が言う。俺の知っている人なのだろうが心あたりは無い。どっかで結構な頻度で聞いた声のような気がするのだが。
「じゃあ、これで分かるかな?お兄ちゃん!」
一瞬だったが髪の毛が黒になった。その人は見覚えが無いはずがない妹だった。
「ユウヒ、なのか?」
「当ったり〜!」
その後の楽しい一幕は俺の中に留めておこう。その楽しさ故か、この時の俺は気付けなかった。隠れて自分の身体、及び周辺を観察しているものがいることを……。
1日遅れ投稿です。すいませんでした。べ、別にとある昨日から上映された映画を観に行ってそのままその映画のことを考察していたらいつの間にか寝ていたとかそんなことじゃ無いですからね?(震え声)
はい、テスト前だというのに映画を観てきました。面白かったです。
小説の方はテストがあるので2週間後となりそうです。ではまた次回お会いしましょう。