女子と片鱗、男の娘?
初回の方に説明いたしますとこの物語は前作の続きとなっております。まだ見ていない方はそちらからお読みください。
前回のあらすじ
まんまと妹の策略?にハマりギルド医務室に運ばれた主人公アオイはギルドマスターシオンの超短い面接を受けることに。そして、なんやかんやあってシオンの正体を知る。となると彼女の正体を知りたくなるわけだが……爆発音の後に彼女を連れてきたシオンはやけに疲れているように見えた。ドアがバタンと閉められた時、静寂が訪れる。
「…………。」
「………………。」
「…………………………。」
「………………………………。」
それから無言の時間がしばらく経ち、第一声を聞く頃には夜もいい時間になっていた。
このなんとも口にしにくい静寂を破ったのは、すっかり存在を忘れていたユウヒだった。
「……う、う〜…………あ。」
このいつの間にか膝枕状態を作り出した、当の本人もそのことをすっかり忘れていた様だった。
妹は俺以外にも人がいるのに気づくと、バシン!と俺の頬をビンタして、そそくさと立ち去って行った。
「んな、理不尽な……。」
俺は、ふと、彼女の口元に笑みが浮かんでいるのに気がついた。この機会を逃してはいけない。直感で、そう感じた。
「えっと……。」
そこで、言葉に詰まる。名前を聞いてないからだ。こんなことなら、自称500歳以上のギルドマスター様に名前を聞いておけば良かった……。と、いってももう遅い。とりあえず今は何か口にせねば。えっと……。で止まっていた後に続いてこう言った。
「……今のって、相当理不尽だと思いません?」
「うふふっ、まあ、照れ隠しでそういうの食らうこと、仲がいい証拠じゃないですか。」
あれ、答えになってなくね?と思ったが、気にしない。今の最優先事項は会話を続けることだ。案外、気さくで話しやすいかもしれない。
「そういうことがわかるってことは、やったことがあるんですね〜。」
からかい口でそう言ってみる。
「やめてくださいっ!恥ずかしいじゃないですか……。」
そんな感じに会話は弾み、名前を聞くと言う第1目標もクリアでき、気がつくと空が白け始めていた。
「すっかり、朝になっちゃいましたね。」
「そうですね、あなたと話してると、時間を忘れちゃう。また、話しましょうね。」
「はい!」
俺は、元気よく返事した。すると彼女あらため 紫帆は、微笑み部屋を後にした。
「さて、だ。朝になってしまったわけだが、寝ますか。」
お決まりである。俺は昼夜逆転生活を送ってきていたのだ。こうして誰か(その相手のことについてはとりあえず画面と称しておこう)と話しているうちに空が白けていたのもざらにある。
そのとき、誰かがドアをノックする。
「お兄ちゃん、朝ですよ〜。」
と、いいながら入ってきたのはもちろんユウヒである。どうやら、シルフィーとユカも一緒のようだ。
「アオイさん、お体は大丈夫ですか?」
とユカ。
「なんか、スマンな。」
とシルフィー。
「まあ、それなりには回復してきたし、大丈夫。」
「それで、みんな揃って何の用で?」
「はぁ……やっぱりか……。じゃあ、ヒントをあげましょう!」
その1 何かの記念日である。
その2 お兄ちゃんに関係ある。
その3 今日は7月6日である。
「さて、答えは?」
俺は10秒ほどゆっくり思考して、とある記憶に思い当たった。
確か、あれは3年前の7月、俺がまだ小6のころ……。
「お誕生日おめでとう!」
「それにしても、七夕と1日違いってすごいよね〜。それも、1秒しか差がないって。」
そう言っているのは確かまだ小4だったであろうユウヒである。
「おいおい、そんなにからかうなよ。一応、気にしてるんだからさ。」
そうだ!思い出した!今日は俺の誕生日。7月6日23時59分59秒が俺の正確な誕生日だ。
ここで回想は途切れた。
そして、問題に対し答える。
「俺の誕生日……だな?」
「正解!ちなみに正しくは後、2時間と30分後だよ。」
「おいおい、それは冗談だろ。だって、ほら空が明るくなっているじゃないか。」
「ここでの時間は昼夜逆転みたいなの。だから、向こうでいう11時59分59秒がこっちでいう23時59分59秒なの。」
「なるほどな〜。」
よっぽど、俺よりユウヒの方がこの世界に順応してきているみたいだ。
「で、ここに来たのは、パーティーのお誘いかな?」
「いや、それがね、食材が足りなくて……」
お決まりの嫌な予感がする。そう直感した俺は演技をする。
「ゴホッ、ゴホッ。あれ、なんか調子がワルクナッテキタナー。」
「そういうと、思ったのです。」
そう口にしたのはユカだ。
「キュアー!」
俺を緑色の光が包む。それと同時に体が軽くなる。いや、軽くなってしまった。
「はい、これで大丈夫です。みんなと一緒にショッピング行けますよ、良かったですね。」
ユカはそう言い、小悪魔っぽい笑顔を見せた。
「あ、ああ。良かったよ……。ところで、三鈴はどうしたんだ?」
「あ、そうでした。先に買い物の偵察に行って貰ってるんです。」
「じゃあ、待たせても悪いから、行くか。」
俺は、自分の格好のことを思い出して、聞いた。
「ちょ、ちょっと待って欲しいんだけど、俺の服ってどこ行ったの?」
皆一同、沈黙する。このことによってだいたい察しがついた。
「捨てたん……ですね。予想はしてましたけど。」
ということは、この白衣っぽいもので買い物に付き合わされるわけか……。
「さすがにこの格好で行くのはなぁ……。」
「そういうと思いました。私が服を用意しましょう。」
声の方向には、いつの間にかギルドマスター様がいた。どうやら、この件はすでに伝わっているようだ。と、いうことは少なくとも7人以上でパーティーか。
元の世界の俺だったら、病名:コミュ障によって逃げ出していただろう。
しかし今、この世界では、人数が増えて逆に嬉しいぐらいだ。俺がこんなにも変われたのは、今の仲間の影響があってこそだろう。俺は、透明の雫が溢れそうになるのを抑えながら、
「ありがとうございます。じゃあ、着替えてくるから外で待ってて。」
と、言うとギルドマスター様について行った。そして案内されたのは……大部屋である。そこには、いろんな服がありったけ用意されていた。とある特徴を除いては。
「さあ、この中から好きなものをどうぞ。」
「いや、その……なんで女性用の服のコーナーなんですか?」
「あいにく、在庫が無いもので……。」
まるでショートコントのような会話だ。と思った。
ギルドマスター様は苦笑しながらそう言った。そして、いつの間にか俺は着替えさせられていた。
ミニスカート、ニーソックス……それ以外は俺の語彙力では出てこなかった。
「はい、行って来なさい。誰も違和感感じないから。」
確かに鏡を見ても、いたって普通の女子(どちらかというと美形)に見えなくも無い。と言うより、体の形が服に合わせて変わったような……。俺は、渋々
「はい、行って来ます……。」
と、言った。外に出ると、みんな(三鈴を除く)が待っていた。どうやら、ギルドマスターの妹さんことシホも一緒のようだ。異変は会話で起こった。ユウヒの言葉だ。
「遅いよ〜。お 姉 ちゃん。遅いから、出発しちゃうところだったじゃん。」
ン?聞き間違えかな?お姉ちゃんと聞こえたのだが。次にシルフィーがこう言った。
「遅いですよ、アオイちゃん。じゃあ行きましょう。」
アオイ……ちゃん?聞き間違えだよな、うん。そうに決まっている。
「そうか、悪戯だな!みんなで女子扱いするっていう。」
知らず知らずのうちに声までもが少し高くなっていた。しかし、俺はそのことに気づけなかった。何故ならみんながキョトンとしていたからだ。あたかも、俺が元から女子だったように。悪戯なら少しは笑いをこらえるなどするはずだ。
(このとき、1人だけいたって普通の顔、しかも笑いをこらえていたのだが、みんなに気を取られていた俺は気づけなかった)
「いいや……なんでも無いよ。じゃあ、行こうか。」
で、どうしてこうなった!?
ユウヒが主導権を握っているのでついて行ったのだが、一番最初は女性服専門の服屋である。(道中で三鈴を拾ってからだったが)食料が足りないって聞いてたんだけどなぁ……。
「さてさて、全員揃ったことだし、じゃあ、1人1つ好きな服を選んでバックに入れて、シャッフル!」
と、ユウヒがいうと、みんなが服を選び始めた。さすがに選ばないのは、怪しまれるので、ネタ枠を選んでバックにこっそり入れた。みんなが戻ってきた。さあ、誰がネタ枠をとるのかな?と、ちゃっかりこの状況を楽しんでいる俺である。
「では、みなさん選びましたね。店員さーん!これ全部購入でー!ここで着ていってもいいですかー?」
奥から、若い女性の店員が出てくる。
「えっと、合計20,000ピーツになります。着替えの件はきついでしょうが、奥の物置部屋をご利用下さい。申し訳ございません。」
「あっ、お釣りは大丈夫です」
と、言ってユウヒが1枚の紙切れを店員に渡すとその店員は驚いたような顔をして奥に戻っていった。
「今の何?なんか店員驚いたような顔をしてたけど。」
「ああ、あれね。シオンさんがくれたんだ。だいたいこれでいけるって。」
「で、結局何なんだ?」
「1.000.000ピーツ札」
それに答えたのはシホだった。『いつぞやのド○ツのお金の単位ですか?』と苦笑せざるを得ない俺だった。
「じゃあ、もうメンドくさいし全員同時に着替えちゃうか!服をとる順番だけど、お姉ちゃん行く?」
「……いや、残り物には福があるっていうし、最後で。」
反応が遅れたのはもちろんお姉ちゃん呼びに慣れていないからである。
「じゃあ……それ以外はランダムでいいかな?」
「賛成!」
全員の意見が揃った。
「じゃあ、適当に取っちゃって!」
俺はみんながとったことを確認して残りの服をバックごと持って部屋に入った。店員さんは、きついと言っていたが、それでも十分すぎるほどの広さだ。
だが、俺は見つけてしまった。天井に張り付きうごめくものを、俺の天敵を。そう、奴の名は……
Periplaneta fuliginosa
ことクロゴキブリである。俺がなんでこんなことを知っているかというとやつの駆逐方法を調べる上で知らざるを得なかったからだ。だが、ここには奴の息の根を止めるほどのものは無い。それを知るや否やプチパニック状態に陥る。その結果となるものは無論、悲鳴だろう。
「きゃーーー!」
俺は、女性に負けず劣らずの悲鳴をあげた。嬉しいというべきか、悲しいというべきか、この部屋は防音性が高いようで助けがくる気配は無い。実質、男子1人?と、女子5人というゴキブリ耐性が高いとは思えない編成だ。俺の悲鳴を聞いてか、みんなが俺が見ている天井を見る。
「なんだ、Gか。」
と、シルフィー。
「あ、ゴキブリさんだー。」
と、狂ったようなことをいっている三鈴。
「なんとなくそんな気はしていたのです。」
とユカ。
「…………。」
見たら負けだと思ったのか、下を向き、着替えが終わってるユウヒ。
「……駆逐してやるっ!」
俺と似た行動回路を持っているのか、辺りを見回すシホ。
行動に出たのはシホだった。辺りを見回し、アイテムが無いのを確認すると、ゴキブリを軽く蔑視すると、言葉を一言。
「……デス。」
音は聞こえなかった口の動きから推測してそういったのであろう。正解のようらしく、ゴキブリがポトッと天井から剥がれ落ちた。そして、その遺骸は木箱の奥へ。
「ふうっ。スッキリした〜。」
「ありがとう」
と今は、感謝どころか崇拝したいぐらいの俺だった。
「さて、邪魔立てが入っちゃったけど、着替え再開しようか。」
と、言いつつ俺の手を握って離さないユウヒだ。
「それじゃあ、着替えられないじゃ無いか。」
この言葉が、ユウヒの何かを刺激したらしく、よりピトっとくっつかれる俺だ。
「……じゃあ、着替えさせてあげる。」
「ン、なんだって?」
「ストップ、ストーップ!」
と、ここでツッコミを入れてくれる優しい人は1人しかいない。そう、ユカだ。
「それじゃあ、不平等です。私にも手伝わせてください。」
あれ、なんか違う方向にかたむいていっているような……。こういう時は「逃げるが勝ち」だ。と、誰かが言っていたなぁと思い、そっと後ろのドアを開けようとした。が、そこで聞こえたくない呪文の詠唱が聞こえてしまった。
「……ストップ」
体が動かなくなる。いくら抵抗しようとも、ビクともしない。
「逃げるのは、よろしくないですね。」
と、動きを止めた俺に向かって近づきながらいうのはシホだ。そして耳元で囁く。
「この首筋……なかなか興奮しちゃう………………なんて、冗談ですよ。まあ、あなたの体に興味があるっていうのは、あながち間違ってないですけどね。」
本人はああ言っているが、冗談ですまない雰囲気を醸し出しているので尚更怖い。
「みんなしてズルイや。僕も入れてよ。」
と、三鈴。
結果として、この場の女子が満場一致で俺をいじる(着替えさせる)こととなった。
「あまり…………イタくしないでね……//」
ある意味、フラグ満載の台詞を言った俺だが、本当に何もできないので彼女たちに身を委ねざるを得ない。例えば、裸にしようと思えば出来るので、この体は完全に彼女たちのものとならざるを得ない。つまり、絶望成分多めというより過剰である。
聞いたことがある。女子たちだけの時は非常にどす黒いことになると。これは、偏見だと思っていたが、嘘ではなかったのかもしれない。
さて、この先に待つのは絶望か、はたまた、普通に終わってくれるのか。(天国はない)
俺は断然後者推しだ。
「では、まず身ぐるみを剥がしまーす。」
あ、この言い方は……。目の前に大鏡があるので、俺は自分の状態をかろうじて確認できる。
これは救済というべきなのか?
この後俺は女子の片鱗、すでにそうなりかけだが触れることになった。
いかがでしたか?なんという時間に投稿してしまったのでしょう。意外とあとがきって大変なんですよね。全く関係ない近況報告:スキー楽しかったです。筋肉痛です。本当に布団はいって原稿書いちゃいけませんね。危うくデータが消し飛ぶところでした。突然ですがストーリーの方の話です。登場人物増えてきましたし、情報整理編とかを気がむいたら書くかもしれません。(あれ?ストーリーとは一体)締めが悪いですが今回はここまで!また次回でお会いしましょう!