実技試験、面接試験?
前回の大雑把なあらすじ
シルフィーとの出会い、ユカとの親睦を深めた主人公の蒼はユカの勧めによりギルド《断罪の孤独者》に行ってみることに。そこで待っていたのは奇襲。消えた三鈴の謎。仲間に迫るピンチ!そこで蒼がとった行動とは?
「早く逃げろ!」
俺は叫んだ。しかし、みんなは逃げる様子を見せない。声が小さかったのだろうか?なら、
「早く逃げろ!!」
さっきより大きな声で叫ぶ。しかし、相変わらず逃げる様子を見せない。まだ、声が小さい?なら、
「早k……ンゴ……?」
もう一度叫ぼうとするが、それは妹の手によって遮られた。
「うるさいなぁ、もう。眠れないじゃん。」
「いやいやいやいや……眠れないじゃん。ってそれよりも!この状況、この状況を見ろ!」
「うわ〜弾幕だ〜。きれいだなぁ〜。」
「そうそう、きれいきれい…………じゃなーい!みんなが危ないんだって!声も聞こえてないみたいだし。」
「いや、聞こえてると思うよ。実際、お兄ちゃんが大声出してたときしかめっ面してたし。ここで聞いてたけど声が大きすぎて失神するかと思ったもん。」
「じゃあ、なんで逃げないんだ?」
「いや、わたしが何をしてたかもう忘れたの?向こう側にリフレクトアーマー張ってたんだよ。」
ここで、1つの疑問が浮かび上がる。それを声に出す。
「ちょっと、ユウヒさん。今、向こう側に、とおっしゃいましたよね。では、ほんの些細な疑問なんですが、こっち側って……。」
「ごめんね、お兄ちゃん。辛うじてわたしの分は張れたんだけど、そこで魔力が枯渇しちゃって……許してね、テヘ!」
同時に『ユウヒスマイル』を喰らった俺に妹を責める気など起きなかった。かわりに、
「Noooooooooo!!!」
と外国人じみた悲鳴をあげる。まあ、それでどうにかなるわけでもなく容赦無く弾幕は体にあたり、とてつもない衝撃を受け、意識が飛びかける。
結局、三鈴はどこへいったんだ……?
朦朧とした意識の中、わずかな疑問を残し俺の意識は完全に飛んだ。
「あちゃー、もろに食らってますね。これじゃあ半日近くこのままかもな〜。」
俺はその声を聞いて目を覚ました。体を動かそうとする。しかし動かない。動かないというより固定されているように。
「コンコン。」
ドアをノックする音がする。
「どうぞ。」
と謎の声の持ち主が言う。
「失礼します……。それで……お兄ちゃんは、大丈夫なんですか?」
この声は間違いなくユウヒの声だ。
「まあ、大丈夫でしょう。無理に体を動かそうとしなければ。」
『じゃあ、動かすとどうなるんだ?』
この声ならざる声(思念)と言うべきものをユウヒに発声する。その声が聞こえたのだろう。トタトタと俺の方に歩み寄ってきてるのであろうユウヒの足音が聞こえる。そして、
「お兄ちゃん起きてるの!?」
側から見たら異様な光景に見えるだろうが、これは、必然的な反応である。意識が戻ってないと思っていた人が形が特殊とはいえ声を出したのだから。
『ああ、一応な。ところで体を動かせないんだけどどう言うこと?』
『うーんと、分かんないから聞いて見るね。』
「お兄ちゃん、意識は戻ってるみたいなんですけど、体が動かないみたいなんです。どうしてか分かりますか?」
「うーん何でだろうな……ちょっと強めの刺激を与えてみたらいいかも。肉体的にも精神的にも…………ね。」
「分かりました。」
刺激を与える。実際にはどういうことをするのだろう。この流れだと妹が何かをするということになるが、いったいどんなことを……。
「おにーちゃん、だいすきっ!」
と、言いつつベットで横になっているであろう体に覆い被さる感じで密着させてきた。
『おい、ちょっとまっ…………ッ!』
複雑でいろんな感情が支配しているのも一瞬だった。直後、俺は激しい痛みに襲われる。それもそうだろう。俺は全身打撲?のような状態で運ばれてきて?ところどころ疑問符が浮かぶが、とりあえず言いたいのはひどい怪我だったってことだ。そこに負荷がかかったら…………ということだ。
「痛っ!」
さっきまで声を出すことさえ出来なかったのが嘘のようだ。雷にうたれたような衝撃を受けてか、節々が痛むものの体を動かせるようになった。
「あ……りが……とう……なのか?」
ぎこちない声での第一声はこう口にした。確かに妹のおかげで治った、(現実世界に)復帰できたのだが、その原因を作ったのもまた、妹である。ある意味義務レベルでは無いのだろうか?
「ところで、三鈴ってあの時何してたんだ?」
「気づかなかったの?ユカちゃんが戦ってる時、その手助けしてたんだよ。主に相手の足止めを。」
『なるほどな。で、だ。この状況いつまで続くんだ?』
再び、思念なるもので発声する。この状況というものは、2人が頬が触れるほどに密着していることだ。
『この状況が嫌なの?』
困惑した。俺が予想したパターン(といっても1つしかないが)それと正反対だったからだ。そのパターンとは赤面して退いてくれるというものだった。しかし返ってきた答えは、この状況を続けたいという趣旨のものだった。
『あの、いや、嫌っていうわけじゃ無いけど……』
『なら、もう少しこのままにさせて。わたし、おにーちゃんに謝りたいの。ごめんね、本当にごめんね。』
いつしかその瞳は薄くかがやく膜に濡れていた。
『うん、わかった。このままでいよう。』
妹の細い嗚咽を聞き、背中を撫でながらも俺は疑問に感じていた。一体、あの2人は誰だったのだろうか?なんの為に俺たちを襲ってきたのか。しかし、だいたいの検討はついている。治ったらもう一度あの場所に行こう。そう決心した。
気がつくと妹の嗚咽は止んでいた。かわりに今は寝息を立てている。
「本当によく寝るなー」
と半ば呆れたように口に出した。
「まあ、良いじゃないですか。寝る子は育つとも言いますし。」
「そうですね。でも胸は……。」
自然と会話が始まっていることに遅まきながら気づく。俺はその声の方向を見る。そこには、
先ほど戦っていた男の子がいた。しかし、俺には警戒心は無かった。理由は2つある。そのうち1つは推測であるが、こうして治療してくれたというのが1つの理由である。そしてもう1つは、
「ありがとうございます。《ギルド 断罪の孤独者(ジャッジメント=アイソレーター)》のギルドマスターさん。」
「…………そこまで分かってましたか。なら説明の必要は無さそうですね。実技試験は全員合格です。面接試験はこの場でも良いならやりますが、なに、ほんの3つの質問ですよ。他の方は全員終わりました。いかがですか?」
「こんな姿勢でもよろしいのであれば。」
「では、面接試験を行います。」
「では、名前、年齢、家族関係の有無、また親族等の有無を。」
「私の名前は影野 蒼です。
15です。家族、親族は今、上に乗ってる妹だけです。」
「ありがとうございます。」
「………………」
「………………」
いっときの静寂が場を支配する。これも面接の内なのか?と、思いながらも口に出す。
「...…あの、他には?」
「ははは、何言ってるんですか?もう3つ答えたでしょう?名前と年齢、家族、親族関係を。」
「いや、その、はい。そうですね。」
普通、今の3つで1つじゃないですか!と、ノリツッコミを入れたくなるのは分かるが、はちゃめちゃなのは今に始まった事ではない。だが、
「で、今ので面接が終わったというわけですが……ちょっと少なすぎません?」
やはり、こう口に出さずにはいられなかった。
「ですよね。じゃあ、なんか過去にあった出来事について話してください。…………別に記憶を覗くことも出来ますが。」
なんかしれっと恐ろしい事言ってる!?でもここは、
「でも、情報量が多いので、その……覗く?方が楽ですよ。」
これは紛れも無い事実である。どう口にすればいいものか上手く分からない。
「ですが、いろんな意味で負担がかかりますよ。」
「いいんです。アレを表すにはボキャブラリーが少なすぎますから。」
「では、ちょっと失礼して。」
少年ことギルドマスター……(そういえば、名前聞いてないな……)は、笑みを浮かべた。そして横に座ると、
「失礼します。」
と言った。一刹那の間かすかな痛みと眩みに襲われる。
「……失礼しました。」
何があったのか分からないが腕を見ると何故か絆創膏が貼られている。少年の口元にはほんの僅かながら血液が付着していた。つまり、この少年の能力はヒト(じゃなくてもいいのかもしれないが)の血液を摂ることでその人の記憶を覗くことが出来るのだ。
「確かにこれは言いにくいですね。それと最高位モンスターとの接触、あるいは同化。」
「あなたは一体……。」
俺はこれに複数意味を込めた。もちろん名前のほかに説明不十分なところがいかんせん多すぎる。
「そうでしたね。まだ名前も名乗ってなかったですよね。僕の名前は"小鳥遊 紫音"ギルド《断罪の孤独者》のギルドマスターです。察しはついていたみたいですが。」
そして、この大人びた口調、見た感じ10歳の口調とはどう考えても思えない。
「失礼ですが、何歳で?」
「495……そこからは考えるのをやめました。」
つまり、彼は推定でも500年は生きていることになる。
「…………」
そんな気がしていたので想像を超えはしなかったが、やはり500年という年月を思うと、思わず口を閉じてしまう。ここで、疑問に思うことがある。と、するとあの少女は何者なのだ。ということである。
「じゃあ、あの子は何者なんですか?」
「僕の妹、って言っても100歳は年の差がありますが。」
「呼んでもらうことって出来ます?いろいろ彼女とも話したい事があるので。」
「いいですよ。」
そういうと、彼は部屋を出た。
5分後、彼は彼女を連れて来た。なぜか、2人とも、息が激しい。そういえば、待ってる最中に揺れを伴うほどの爆発音が聞こえたのだが……。まあ、2人には関係ない……だろう?彼は、彼女を連れて来ると
「じゃあ、僕は用事があるので、ごゆっくり〜。」
年相応の少年のように言い、部屋を出て行った。なんか出る直前に小声で、
「……相当手強いぞ。」
と言われたような気がした。気のせいだと信じたいのだが……。
ドアがバタンと閉まる音を皮切りに静寂な時間が流れ始めた。
連日投稿になりました。執筆衝動に駆られるときってありますよね?今週、来週の2週間は忙しいので、ゆっくり2、3週間待って頂けたらと思います。では、また次回!