ギルド《断罪の孤独者》
1週間でしたね。やっぱ、土曜が一番集中できるような気がします。今回のサブタイトルにギルド《断罪の孤独者》とありますが、関係するのはほぼ後半からですね。とりあえず、見てもらえればなんとなくわかると思います。では、どうぞ。
「おい、おーい。生きてますか〜死んでますか〜?」
そんな感じの声をかける。自己紹介の途中に倒れた女の子は目を覚ましたようだ。
「あれ?わたし……。そうか。あのとき倒れて……ありがとうございます。えーととりあえず自己紹介しときますね。
私の名前は、緋井 結花です。
「えっと、助けてもらって言うのも申し訳ないのですがパーティーを組んでもらってもいいですか?」
本当に急だった。ギルドがあるとはあのAIに聞いてはいたが、どうやら違うところに送られたらしく、保証は無かった。それで、ユカと名乗った少女は、話を続ける。
「見る感じギルドに所属してないようですし、この先の街に行くということは、ギルドに入るんですよね。
で、ギルドにはパーティーで加入しなければならなくて、そのパーティーの人数の下限が5人なんですよ。」
なにこの子、めっちゃ切れ者じゃないですか。しかも、こんなに小さいのに。
「へえ、そうなのか。パーティーならこっちから大歓迎さ。でもそれだと後1人必要だね。」
「それなら私が。」
「おお、ありがとう。って、誰?」
ユウヒ……は違うな、三鈴……もないな、じゃあ、ユカさんしかいないな。
「えーっと、ユカさん?からかうのはちょっとよくないなぁ。」
ユカは首を横に振る。
「じゃあ……誰が……。」
直後、脳天にかるい痛みを感じる。
「こっちだよ。」
どうやら正体は後ろにいるようだ。バッと振り向く。しかし、誰もいない。今度は耳だ。耳に微風がながれてきた。
「ふふぇ……。」
なんという情け無い声だろう。他の3人プラス1人はツボにはまったらしく笑い転げている。
恥ずかしいところを見せやがって!意地で4人目を探す。
(振り向く、いない、かるい攻撃を喰らう)という一連の動作を何度か繰り返した頃ようやく正体の根っこを掴んだ。微かだったがなにかが上に行くのが見えた。俺はわざと気づいてないふりをした。
「次は完全に掴んでやる。」
そう心に決め振り返り同時に手を上に伸ばし掴む。むにっ、とした感触が手に伝わる。
なんだ?この感触。スライムとはちょっと違うし……。
もういちど掴む。やはりむにっ、とした感触が手に伝わる。
……なんだこれ。
と思い答えが分からないまま実物を見る。
いつの間にかシンとした空気になっている。こういう時の定番といえば……いやな予感がする。おそるおそる視線を上に向ける。
むにっ、の正体はあれだ。うん。間違いない。そこには逆さで宙に浮いている人、いや、エルフがいた。そのエルフは顔を赤くし、胸を押さえている。
「デ、デスヨネー。」
体が風を感じた。この後30分の俺の記憶は無い。
「も、申し訳ございませんでしたぁ!」
記憶は謝罪から始まっている。身体には打撲痕が複数。なぜこうなったか。その記憶すら薄れかけている。
「まあ、こっちもいたずらで遊んでたし?そっちにも悪気はなかったみたいだし……。許してあげる。じゃあひと段落ついたところで自己紹介するね。
私の名前はシルフィー=スカーレットです。エルフと精霊のハーフです。今までのことは水に流して、まあ、よろしく。」
「こちらこそ。で、この5人のパーティーでギルドに登録しようと思うけどいい?」
「異議なし。」
「じゃあ、えっとパーティーの役割分担しようか。俺は剣だから前衛がいいけど、他の人は何か要望はある?」
そのまま、フィールド上での話し合いは30分続いた。途中、モンスターに襲われたが、あっけなく倒してしまった。
最終的に
俺:前衛
ユウヒ:リベロ(基本的に自由)
三鈴:前衛
ユカ:前衛
シルフィー(様):リベロ
となった。いえば、ある時は王道的パーティーで、ある時はただのゴリ押しである。そして、前衛の意味がないのではというほどの、リベロ担当の2人の強さである。たぶん、1人でも前衛3人を相手にできるだろう。
「じゃあ、街まで行きますか。」
ようやく、街まで着いた。直線距離500メートルといったところかそこに着くのに2時間近くもかかったのだ。
「なんか、疲れたなぁ……。」
思って見ると些少の戦闘と精神ダメージをもらったぐらいしかないのだが、なにせこの世界になれるのに疲れた。ユウヒは未だに目をキラキラさせ、すぐに買い出しに行き、俺が荷物持ちの人になる未来が目に見えている。なので、俺が先に釘を刺しておく。
「あ、あのユウヒさん。非常に申し訳ないのですが、その〜今日はもう休みません?」
「ええ〜?買い物したいなぁ。お願い!1人だと寂しいからみんなで行こうよ!」
純粋な目で見られる。これはダメなやつだ。
「ちょ、ちょっとだけだぞ。」
言ってしまった。そこからは地獄のようだった。案の定、荷物持ちの人になり、結果5軒の店で買い物をした。2軒目の時点でもう嫌になってくる。これは男の特徴だ。
「もう、やめてください……。死んでしまいます。」
3軒目でギブアップだった、予定だった。
しかし、それを先読みされて、《ユウヒスマイル》なるものをを見せられてしまってはもう逆らう余地は俺にはない。なんとか、この試練を乗り越えた。
次は宿屋か……。お金の残金からして2人(1人部屋)と3人(2人部屋)に別れるんだろうな。どういう部屋振り分けかな。
はっ!これってまさか……。
「う、うーん……。」
俺はどうやら眠っていたらしい。手が何かにあたる。とりあえず、触る。この時、考えれば簡単だっただろう。しかし寝起きの俺にはそれ以上考える余地はなかった。
「ひゃっ……うーん……もうやめてよ〜」
ユウヒの声を聞き、俺の脳は、一瞬で覚醒する。と、とりあえず状況確認だ。よかった。ユウヒはまだ寝ている。
ここは、宿屋の1人部屋。俺は着くと同時にこのふかふかなベッドに倒れ込んで……。で、今に至る……と。で、なんで1人部屋に2人という状況になってるかというと、例の買い物である。お金を使い過ぎたのだ。いろんな意味で女子の買い物の怖さを再確認させられた。
ところで、シングルベッドに2人というこの状況は一体?まあ、とりあえずユウヒを起こそう。改めてユウヒの寝顔を見ると、まだ子供だなと思う。俺はユウヒの頬をツンツンと指でつつく。
「う、うーん。あ、おはよ〜お兄ちゃん……。」
ぽや〜というまだ眠気が残っている顔をしながら、今の状態を認識したらしい。ユウヒは顔を赤くして、顔をベッドにうずめる。そして、少し経ってから起き上がり、
「これは、その〜成り行きというか、あの〜その……出てって!」
「ふぁい!?」
言葉に詰まった結果なぜかキレられた。あまりにも理不尽だろ……。
「だから、この部屋から出てって!」
まあ、俺は 優しい ので素直に従っておく。
「大丈夫?なんか声がしたけど。」
目の前にいるのはユカだ。
「ああ、大丈夫、大丈夫。起こしたらなんか顔を赤くして怒っただけだから。」
「それが大丈夫なのかよくわからないんだけど……。」
「大丈夫、よくあることだから。それより追い出されちゃったんだけど……。」
「実は私もそうなのです……。」
「ええっ!?そうなの?こっちはまあ状況がアレだったからわからなくはないけど、そっちは何があったの?」
「とても平和だったのです。つい、さっきまでは……。3人でジェ◯ガをしていたんですけど、シルフィーが風魔法で、邪魔をして、その結果、三鈴さんが怒って……結果、今2人での真剣勝負をしています。」
「なんだ。そこまでおおごとじゃなくて良かった。ところで、おでこを押さえているけど、どうしたの?」
「シルフィーが風魔法を使ってジェンガを抜いたんですよ。それが飛んできて……イタタ……。」
「どんまい。結果、2人とも追い出されちゃったっていうことだけどどうする?」
「ここで、待つのもアレですし、下のロビーで待ってましょう。いろんな話をしたいのです。」
この時点で、俺はこの世界の違和感について話そうと思っていたのだが、そんなこと口に出せるわけもなく、結局、詳しく自己紹介をしただけだった。しかし、話は想像以上に盛り上がり、待っている時間を忘れるほどだった。
30分ぐらいした頃だろうか。3人が揃ってロビーに来た。
「よし、みんな合流したし、ギルドに行きますか。」
この街には、ギルドは2つ存在している。
そのー
《断罪の孤独者》(ジャッジメント=アイソレーター)
このギルドは、現在、相当小規模であるが、個々の実力は、相当なもの、ゆえにギルド連合にも一目置かれている存在。参入条件は、実技、パーティー全員での面接による。皆がワケありらしい。(ユカが言っていたのはこのギルドのことである。)
その二
《風林火山》(ふうりんかざん)
このギルドは、大規模で、パーティーを組むことにおいては苦労しないだろう。しかし、大規模ゆえに戦力差が大きい。トップの人は、一人で、小規模1ギルドを上回るという。参入条件は、特にない。
俺たちは、前者を選択した。大規模は、ロクでもない連中が多いという、ユカの意見を参考にしたのもあるが、俺たちはなにせ、ワケありの集まりなので、大規模ギルドでは相当な注目を浴びてしまうだろう。
「ということで、ギルド(断罪の孤独者)についたわけだが、ここで、ギルドの名前について考察しておこう。別名(ジャッジメント=アイソレーター)と言うわけだがジャッジメントは確か断罪、制裁っていう意味なんだが、アイソレーターを直訳すると……。」
流石、俺の頭だ。思考回路がショートした。
「絶縁体だよ。」
不意に上から声が聞こえる。そこには、少女と少年が手をつなぎ浮いていた。
「ゆ、幽霊!?」
ユウヒがほぼほぼ、悲鳴のような声をあげる。
「ははは、心外だなぁ。これでも最高のおもてなしなんだよ。」
「と、とりあえず、降りて来てもらえます?」
なぜだろう。この2人に何かしらの違和感を感じる。
スタッ。と2人は綺麗に着地した。いや、違う。
「皆、臨戦体勢をとれ!」
直後、少年が攻撃を仕掛けて来た。子供とは思えない素早い拳だ。俺は間一髪のところで、それを避けた。しかし完全には避けきれてなく少年の拳が頬を掠める。
「なっ……!」
掠っただけのはずだった。それなのに、ものすごい衝撃が俺を襲った。直撃していたらどうなっていた事だろう。
「いや〜おみごと、おみごと。よく、この攻撃を避けたね。だいたいこれでだいたいの人は終わるんだけどな。あ、そんなに構えなくていいよ。」
いや、いきなり攻撃されて身構えない方がおかしいとおもうのだが。少年に気を取られていた俺は遅まきながら、気づいた。さっきの少女がいないことに。ユウヒたちの方には行ってないみたいだ。となると残るのは……上か!
ビンゴだった。しかしどう見ても何かをしているようには見えない。反応したのはシルフィーだった。
「みんな、今いる位置から動いて!」
わけもわからずとりあえず動く。刹那、その場所に穴が開く、それと同時に、突風が吹く。
「うおっ……と!」
転ぶ寸前でなんとか耐える。さて今のはなんなのだろうか。
今度は、少年がいない。直後、背後で打撃音が聞こえた。今度は、結花が狙われた。徐々に押され、こっちに来る。結花はバックステップで俺の横を通り過ぎた。
「ちょっと借りるね!」
そんな声が聞こえた。そして俺は結花を振り返り見ると、その手には木刀が握られていた。そこから形勢は逆転まではしなかったが拮抗している。アイコンタクトで結花は俺に合図した。
「とりあえず、避けて!」
ということだろう。どういう意味なのか分からなかったが、とりあえず避ける。
「魔法剣!」
その技名発声とほぼ同時に冷気を感じた。もといた場所は凍っている。もし、あの場所に立ったままだったら間違いなく、昇天していたことだろう。2人の戦闘はどうなっているかというと形勢逆転している。魔法剣の効果なのだろうか。速度も上がっている。
今度、教えてもらおうかな……。
いやいや、そんなこと考えてる場合じゃない。実際、4人で相手をしているが、ほぼタイマンでやっている。それほどに割り込む隙がないのだ。さて、もう一人はどうなっているかというと、ユウヒが魔法の連続攻撃を相殺している。
「お兄ちゃん、避けるのよろしくぅ!」
「え!?あの、ちょ……」
というと、問答無用で1メートルを軽くこえるジャンプで、飛び乗って来た。
何故、この世界に来てからというもの、おんぶをこんなにもしているのだろう……?
こうしている間にも魔法弾という名の弾幕はどんどん増えていく。しかし、筋金入りのゲーマーにとってはまだ密度が低い。
「なんだ、このぐらいの弾幕か。大したこと無いな。しっかりつかまっておけよ!」
軽く横移動縛りで第一陣は乗り切ってみせた。
「さて、ユウヒは……。ね、寝てる!?」
いや、限りなく小さな声で魔法の詠唱をしている。それが、また寝息に聞こえて集中力を奪って来るのだが……。と、考えてる間にも第二陣が来た。しかし、まだ余裕がある。と、思っていたのだが、特殊行動が加わった。一定時間ごとにレーザー、それも十字型のが加わった。さすがに初見はびっくりしたが、2回目以降は楽だった。
さて、第2陣乗り切ったからもう大丈夫かな。多分、詠唱も最終段階だし。
しかし、第3陣は、想像以上に早く来た。その間約5秒。こういう時の決まりごととして弾幕には極太レーザーが追加されると相場が決まっている。ほら、お出ましだ。濃い弾幕密度の中太レーザー(半径=2m)を避けるのは至難の技である。1回目は肘を擦り2回目は靴の先を掠め足の指がこんにちはした。3回目のレーザーが来るとき、
「5……4……3……2……1……。」
とユウヒがカウントダウンをした。これは魔法を打つタイミングだろう。しかし、レーザーを相殺する程度の魔法の詠唱にこんなに時間がかかるだろうか?カウントダウンが0になった。それと同時にレーザーが……いや、何かが違う。レーザーの発生直前、少女は向きを変えた。全方位に攻撃してくるつもりなのだろうその範囲には、シルフィーや結花も含まれる。(あれ、三鈴はどこにいった?)と思いながらも俺はみんなに声をかけた。
「早く逃げろ!」
(つづく)
いかがでしたか?もう、存在を忘れかけていたことでしょう三鈴さん。次回活躍してくれる?かもしれません。次回の投稿は色々ありますが2週間以内で頑張ってみます!ではまた次回!