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第一章 異世界にて【始まり】 

私は小さな村の生まれだ。

父は農業を、母は機織りの仕事をしていた。

生産性のない村ではあったが、家族があり親戚がいて近隣とも中がいい。


とても、ほのぼのとした生活を送る毎日。


そんな私の人生の折り目に出会うのは7歳の誕生日の事だ。

私の村に盗賊の一団が村の食料を奪うため襲いに来たのだ。


父と母は盗賊に殺された、いや村のほとんどの者は盗賊に殺されたのだ。


残されたのは数人程度の子供、盗賊たちはその子供を彼らの住処に持ち帰える。

その中に私はいた。


◇◆◇◆


彼女を見た時、僕は彼女の流麗な剣の太刀筋に見惚れた。


あの時持っていたのは剣ではなくダガーだったか。

殺気に満ちた視線を僕に向ける、その彼女はいまだ僕の記憶にとどまっている。

僕は彼女の事を覚えている。もう何年も前の話だ。  


僕の故郷の村に盗賊が略奪に来た。僕の村は貧乏な村だ。

村には警備隊もなければ兵もいない。領主様は村の事すら気にかけてくれない。

生産性もなにもない村だった。


僕らは何もできず盗賊たちの言いなりになり冬に備えて備蓄していた麦や家畜を引き渡すしかなかった。

そんな時僕らは彼女とその師匠であろう人に救われた。彼女と彼は剣を持った盗賊たちに圧倒し撃退してくれた。

彼女の師匠の太刀筋は本当にきれいで力強いものだった、そして彼女の太刀はそれ以上の気迫と殺意をもっていた。


「師匠は私の本質を、その力を、その思いもなにもしらないでしょう」


「それは、あんたが歩み寄ればいいんじゃない?」


「無理よ、歩み寄れば彼は気づいてしまうもの。知ってしまうもの。彼は真実をしれば私を殺すでしょう」


カレンは、もう僕の事を覚えていないのだろうか。いや、あの時の反応を見ればそれは分かる。

あの日あの場所で彼女はすべてを失った、その時をただ見つめていた自分の事など覚えたくもないのだろう


「ねぇアルト君、君は私を知ってる?」


ただ許されるなら、どんな状況でもいい、どんな関係でもいい。

ただ君に僕の気持ちを知ってほしいんだ。


◇◆◇◆


熱い、この世界の季節はどうやら夏のようで日中出歩くと元の世界で味わったような猛暑に見舞われてしまう。

できればこのまま引き返し空調が行き届いているあの宿でのんびりとしたいものだ。


しかし、そんなことをすればエレナの重い一撃が容赦なく俺の溝をつくことは容易に想像がつく。

俺が今向かっているのはこのカレドア公国の繁華街イデアに一つしかないギルドである。


前回の召喚の時にもこのような場所はあったが登録はしなかった。

あの時の俺には世界の救世主|〈勇者〉という肩書と、とある国の後ろ盾があった。

金に困ることはなかったし仲間もいた、なにより勇者という存在は民たちにとって希望となっていたため頼み事があればすぐさま彼らは答えてくれた。

まさに破格の待遇を前召喚では受けていたわけだ。


なぜ客観的に俺がそんなことを言っているかといえば、今の俺はその状況の真逆の立場にあるからだ。

いわゆる、「ああ、あの時はよかったなぁ」と思っている所だ。


「ここがエレナが言っていたイデアのギルド会館か」


ギルドに入ると中は閑散としていてあまり人の出入りがなかった。

俺の想像していた所とは少しイメージと違っていた。

こう、よくあるRPGなどでは暑苦しいおっさんたちが仕事を求めてギルドに詰め寄っているというイメージだったが昼間とは言えここまで閑散としているとは・・・・


「不況な世の中だ・・・はぁ」


「いやいや、ただ単に君の来る時間が遅いからだよ」


小声でいったつもりだったがどうやら聞こえていたらしい

一度はいってみたいもんだろ?こういう言葉ってさ。


「エルシーさん、でよろしかったでしょうか?私エレナの仲間の日向といいます。エレナから話が言っていると思うのですが・・・」


「え?あなたがエレナが言ってたヒナちゃん?」


「はい、そうです」


「そっかそっか、でも、へーそうなんだ。エレナが依頼を突っぱねるほどの子がどんな子かと思ったけど・・・まぁそれらしいこと」


「なんです?」


「あの、それでエレナから聞いていると思うのですが、ギルド登録をお願いします。」


エレナから今朝突然


『ヒナ、そういえばあんたギルド登録していないんだったわね。私の友人にギルド職員がいるのだけどあんたのことを話してギルド登録してもらうように話たから。昼頃までに手続きすましてね。』


と言われたのが俺がギルドに来た訳だ。

俺自身、ギルド登録というものはしようと思っていたので問題はなかった。


「はいはい、聞いてますよ。さてまずギルドの説明はしたほうがいいかしら?でもエレナのパートナーなら別に彼女から聞けばいいだけか・・・?」


「いえ、できればお願いします」


エレナにギルドの説明なんて聞いても意味がない、彼女はベストオブアバウト

物事に対して、とりあえずこんなもんよ~とあいまいな回答を出す。


エレナとはもう三か月は彼女と同じ部屋で生活を送っているが、この三か月は俺にエレナの言うことは8割は適当だということを気づかせてくれた月日だった。


エレナのガサツな性格と自分本位な口調、しかしそれとは裏腹に負けず嫌いで寂しがりやといろいろと彼女を知ったのである。

ただ、一つ俺の中に彼女に対して芽生えたものがあった。それは


【エレナに聞くより何も知らない他人に聞いたほうが良い】


「では、説明いたします。ギルドというのはいくつかの職種によって受ける依頼を選べることができます。

主は生産職、戦闘職、労働職ですね。」


【生産職】冒険者全体の装備類の整備、開発をギルドの依頼として受ける人たち

【戦闘職】ダンジョン攻略者、魔獣、魔物の討伐を国・ギルドに依頼を受けて討伐する人たち

【労働職】ギルド職員、戦闘面以外の事柄に対しての依頼を受ける人たち


「職種はあるといってもその職業だけを選択するわけではなく、優先度を決めていただいて依頼の優先度をギルド側で決めていくことになります。つまり戦闘職を選んだ場合戦闘依頼を他の生産職・労働職を選択している冒険者より先に見ることができる、ということです」


「つまり、私がもし戦闘職を選んだ場合、生産職の依頼を受けた時、別の生産職の冒険者も同じ依頼を選んだ時生産職の冒険者の型のほうに依頼が行くということですか?」


「そうなりますね。しかし基本的に戦闘職の方はダンジョンが向かわれるのが殆どなので依頼のいざこざは一年に一回あるかないか程度になっています」


ギルドに所属する冒険者を選別する際にある程度その冒険者の求める依頼をギルド側が理解しておきたいという事だ。


「職種については後で決めておいてください、それでは次にランク制度について説明します。ヒナさんはエレナさんのギルド内のランクを知っていますか?」


「えっとAランクだったかな?」


確か初めて会ったとき「Aランクのエレナよ!」なんて言葉を言われた記憶がある。

あのエレナが自慢気にAランクを強調していたことを考えるとAランクは文字通りかなりの上ランクなんだろう。


「そうです、ギルドのランクはSからFまであります。エレナさんはAランクになったばかりですね。ランク制度では依頼内容によってポイント獲得量をこちらで決めさせていただいています。これを貢献度と呼ぶ人もいますが依頼に失敗するとポイントは引かれますのでご注意ください。」


「ランクによって受けれる依頼はかわってくるんでしょうか?」


「はい、ヒナさんは初心者冒険者ということですのでFランクから始まります。Fランクの受けられる依頼は戦闘職では討伐依頼まで可能です」


戦闘職の依頼にはランクによって受けられる依頼が変わってくる。

簡単に割り振るとすれば、一番危険が低いのは討伐依頼、次に襲撃依頼、そして壊滅依頼がある

Fランクが受けられるのは討伐依頼のみらしい。


また、戦闘職にはダンジョン攻略者と呼ばれる依頼も存在する。

これは国からギルドの冒険者に対して出されている依頼だ。

この国のダンジョン生成数はほかの国と比べ多いようで、FランクダンジョンからSSSダンジョンまで存在する。

また、俺がいたあのダンジョンはSSSダンジョンだったそうだ。


ああ、ほんとエレナと出会えてよかったよ


「私はエレナと一緒にいることが多いと思うので戦闘職で登録をお願いします」


「はい、では登録します。ヒナちゃん、今日はいったん帰りますか?それとも討伐依頼かダンジョン攻略依頼を受けますか?」


「エレナから言われたのはギルドの登録する事だけなので、今日はいいかなぁと」


まず俺単体では、攻撃の要がいない。

以前の召喚の時は剣を武器として使っていたが、それは俺のその時の力が攻撃の方に力が向いていたからだ。

今回の俺の力は攻撃ではなく援護の方に向いている、それではどうやって俺は敵を倒すのか。


「あのね、エレナのパートナーのヒナちゃんだからこんなお願いをいうのだけど」


少し申し訳なさそうな表情をしながらエルシーさんが一枚の紙を渡してきた。

紙には「ゴブリン討伐依頼」と書かれていた。


「えっと・・・?」


「今、うちのギルドには新しく入った冒険者が数人いるのだけど、その中の一人の子が資金難でね。討伐依頼を受けに来たの。でもね、その子これまで一度も討伐依頼なんて受けたことないのよ。できればエレナがパートナーと認めているあなたに彼女と一緒に行ってもらいたいの。あ、これは強制ではなく私個人からのお願いなんだけど・・・」


そう申し訳なさそうに言いながらも、俺に話を持ち掛けたということはそれだけエルシーのいうその子が心配なんだろう。


「その子は戦いで戦闘が行えますか?いえ、純粋な戦闘面の話ではなく攻撃という面での話です」


「ええ、まぁ・・・・。戦えると思う」


「・・・では一度確認のために彼女と合わせていただけませんか?」


「ええ、そこの掲示板の端にいるはずだから一緒についてきて」



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