第一章 異世界にて【現状】
会話や話の中で矛盾が多く見られたので、話しをまとめつつ、『1章』となっている五から九話をまとめ終わった時点で削除します。
私には人とは違う能力を持っている。私を育ててくれたあの人は私を、神の目を持つ者<覚醒の瞳>だと言った。
私の瞳にはあらゆる者の本質を見ることができる、それは相手の能力であり、相手の力であり、相手の存在だ。
私を育てた人は光の巫女と呼ばれる称号を持っていた。称号とは世界が定めた個人に対する評価だ。
光の巫女を持つものはこれまであの人以外見たこともなかった。あのあたたかい光で一度私は助けられた。
生きるのをあきらめた私に、あの人はその力で私に生きる元気を、勇気を、力をくれたのだ。
あの魔族を前にしたとき、人類では到底勝てないと分かった時、私は自分の死を悟った。
あの人に「あきらめるな」と言われていたはずなのに、もう一度死を受け入れた。
あいつがまた生きるのをあきらめた私に光を与えてくれた、その時まで。
◆◇◆◇
「あら?エレナじゃない。どうだったSSSダンジョンは?あんたの事だから結局一人でいったんでしょう?」
「・・・こんにちはエルシー。ちょっとしたアクシデントがあってね。最下層まではいけたけど封印エリアは失敗したわ。すべてのアイテムが登録状態になってたの。依頼は失敗ね」
ダンジョン内には封印エリアという場所があり、その中には特別なアイテムがある場合が多い。
中でもレアリティが高いものはアーティファクトと呼ばれ使用者に一定の魔力を与える。
とある世界ではMP回復薬とか呼ばれるそうだ。
ギルドカードをエルシーに渡す。エルシーは受け取ったカードをガルドにかざす。
ガルドとはギルドカードに登録してある依頼情報を読み取る機械だ。ガルドはカードを登録するとギルド職員だけに見えるような画面がガルドの上に投影されるらしい。
「では、依頼失敗として登録します。ギルドランクA+50からー10引かせていただきます。・・・はい終わりましたよ。知ってると思いますがA+40からあと-40でBランクに下がりますのでご注意ください」
「ええ、わかってるわ。今回の依頼はいけるかと思ったけれど予想外の出来事って起こるものだわ」
「でもエレナが依頼を失敗するとは思わなかったわ。SSSのダンジョンだから危険は最大だったけど、ねぇ今このギルドで一番勢いがあるあなたが失敗するなんて何があったの?」
「なにがあった・・・ねぇ。言えるのは私はまだまだなってなかったってことね」
生きるのをあきらめるなんて、まだまだ私もだめだ。
「へぇエレナがなってないかぁ。それで?次はどの依頼を受ける?Aランクの依頼はここには2枚だけおいてあるわよ?」
「毎度思うけど、鑑定士のあんたがなんで事務作業まで引き受けてるのかしら?」
「ギルド職員なんて職種に就きたい!ってやついないわよ。特にこの街じゃね」
「そうね。だからガルドなんてものまで作られたものね。じゃあ殲滅依頼・・・と言いたいところだけど私すこし休むことにしたの。悪いわねエルシー」
エルシーは私が駆け出しのころから何かと依頼などの受注に関して報酬依頼が高い依頼などを取っておいてくれていたのだ。
今回のこの二つの依頼も彼女が私の為にと残しておいてくれたのだろう。
討伐依頼の高ランククエストはSランクの奴らかAランク上位がいつも持って行ってしまうのだ。
私も今この街のギルドの中ではトップでランクを上げたが、私より上にいる人間をまだまだ多くいる。
特にこのガレイア公国という国自体が、ダンジョン生成数が高く、難易度がSSSランクダンジョンが数多く存在している国だ。
このギルドに冒険者登録している者は半数がダンジョン攻略者となるべく来ているのである。
ダンジョン攻略事態、難易度別でギルドが分別しているため入れるランクは違えど、収入面でいえばFランクのダンジョンであっても封印エリアさえ見つけられれば一年は遊んで暮らせる額が手に入る。
エルシーもまた、冒険者であったがとある事情から冒険者からギルド職員となったらしい。
しかし、ギルド職員の給料事態がそんなにいいものではなく、人で不足となっている状態だ。
「え!?なになに?一体何があったのよ、あなたが依頼受けずに休むなんて!!」
「ちょっと面倒を見ないといけない奴ができたのよ。さてじゃあまた来るわエルシー」
「え!ちょっともうちょっと詳しく話して、ま、まって~エレナ~」
◇◆◇◆
母に小さいころ言われた言葉がある。
「早く寝るのよ!寝れば育つ!早く寝ればいい『夢』が見られるのよ!」
俺の母親事態少し変わった人だったため、とりあえず寝ろと言いたかったのだろう。
ただ、小さいときの俺は母の言葉通り寝て、いい『夢』を見た。
今、俺は寝るとき夢を見ることはない。なぜなら今の俺にとって『寝る』ということはただの人間としての欲求であるからだ。体が睡眠を欲し『寝る』ただそれだけだ。
あの召喚に巻き込まれる前であれば俺はしっかりと『夢』が見られたのだろう。
悲観しているわけではない、残念だと思っているわけではない。ただ、寝るという行為が俺の中でただの行為になったのだということだけだ。
俺の記憶はあの時、あの突然転移させられた場所でエレナと共に襲い掛かる魔の者達を一掃した時で切れている。あの後何があったのか、どのようにしてあの場所から出られたのか俺にはわからない
あの洞窟では食の面では安心はあった、でも不安はいつもつき待っていた。
もしかしら、俺はここで死ぬんじゃないのか
そんな中で俺を救ってくれた彼女に、まずお礼を言わないといけないな。
そんなことを横になりながら考えていた時、ふと今まで考えようとしなかったことを思い出した。
『俺はなぜこの世界に召喚されたのか』
前召喚の時には俺は勇者として神殿で召喚された。つまり召喚対象は召喚者のそばで召喚可能ということだ。
しかし、なぜか俺は洞窟に召喚された。エレナの言葉から封印エリアと呼ばれるところのようだが。
普通、異世界から召喚しようとしたものがそんなところに転移させるだろうか?
そもそも召喚術事態異常なことなのだ。世界を監視する神が数万年蓄えたエネルギーをもってして一人の人間を世界の境界線を破りこの世界へと送りこむのがやっと、というほどに。
しかし、あの魔法陣はあの場すべての人間をこの世界へと転移させた。これは確かだ
つまり、俺があの場所に召喚されたのは事故ではなく、何らかの意図、それか召喚者による物である可能性もあるということだ。
また、あの魔方陣には俺の目の前を歩いていた高校生の集団も巻き込まれていたはずだ。
だとすれば彼らも俺と同じ場所に転移したはずなのだが、俺一人しかいなかった。
もしかしたら、召喚者は俺を召喚しようとしたわけではなく、彼らの中の誰かを召喚しようとしたのではないだろうか?
だとすれば俺は、この世界で何をするべきなんだろ。
この世界から元の世界に飛ぶためには偉業を達成しなければならない。偉業を代償として世界を飛ぶことは可能となるのだ。
だが、何もないとすれば。俺はこの世界に取り残されるこのになる。
でも、まだ希望はある。この世界はあの世界であることは確証できた。
エレナの魔法構築、力、世界法則。この三つがあればこの世界がどこなのか。
想像できた。
「異世界ガディア」
神の権能によって一度この世界に来たからこそ、俺は理解できた。
俺はまたこの世界に来てしまっているのだ