一話
【現状把握】
とりあえず、真っ裸で洞窟で考えても仕方ないと考えた俺はあたりを調べてみることにした。
洞窟といっても案外明るい。どうやら光る石のようなものが光を出しているようだ。
「とりあえず服がほしい」
こんな姿、お、女になってしまったのだからこんな姿でいては人と遭遇した時に痴女と間違われかねない。
それはまずい。
しかし、周りを見ても外を出る道はおろか、何もなかった。
俺としては召喚されたときの何らかの影響であちらの世界のものが落ちていないかと期待したのだが、ないようだ。
「うーむ、これは困ったな」
異世界へ再召喚されました。代償に性別転換しました。服はありません。周りに召喚者の姿もありません。
なんにもわからないんです。
「ゲームだったら、運営にクレームの嵐だろう」
うんうん、とうなずく。
異世界か、俺は召喚・・・されたんだよな。
「だったらできるかもしれない」
それは以前の力を引きだすことだ。異世界を離れる際においてきた力。魔法と呼ばれる力だ。
この世界が、前召喚された世界かもわからないがやる価値はある。
「ステータスオン」
そういうと、俺の目の前に俺のステータスが現れた。
これは前の世界のそれと同一だった。もしかしたら前の世界なのかもしれない
だったら知り合いが何人かいる。どうにかなるかもしれないと一安心。
「しかし、これどうなってるんだ?」
Level 100
HP 9999/9999
MP 9999/9999
STR 100/???
VIT 100/???
DEX 100/???
AGI 100/???
INT 100/???
属性 光
特性 回復 属性付与
称号 巫女 回復役 異世界召喚されしもの
「俺の前の仕事は前衛だったから、攻撃メインだったはずなんだが。なんだこの後衛ステータスは」
いや、ある程度おかしなところはあるが、称号を見るとどうも後衛のステータスに見える。
巫女ってなんだ、巫女って。ステータスをいじると概要が出てきた。
『巫女』
巫女服を出すことができる、また破損部分の修復を行える
巫女服着用時回復量+10%付与
なんても言い難い称号だ。
男の時ならば女の人が巫女服やった!となるが自分が着るとなるとなぁ。
「しかし、裸よりもましか。しかたない」
これは仕方がないことなんだと自分に言い聞かせ巫女服を出す。
前回の異世界召喚では魔法などの発動には音声認識の要領で行った。
ステータス同様たぶん発動できるはずだ
「巫女・発動」
すると体の何かが消えていく感覚を覚えた。そして俺の体が光に包まれる
「日本の巫女装束ってやつだな」
服も何とかなったので次はどうやってここから出るかを考えないとな。
ふむ。ステータスを表示してどうやったら抜け出せるか考える。
Level 100
HP 9999/9999
MP 9899/9999
STR 100/???
VIT 100/???
DEX 100/???
AGI 100/???
INT 100/???
「MPが減っている?魔法を使ったせいなのか。しかし、巫女服だすのに100も使うのか。」
魔法的には服を出す程度に100も使うことは想定外だった。意外とMPの消費が多い魔法なのかもしれない。
しかし。???とはどういうことだろう。
これから上がってくと言うことなのか、限界ということなのか。
しかしLevel100というのも気になるが、100でこのステータスははっきりいって弱いのではないか?
ほかの奴のステータスを見たわけではないが、弱い気がする。
「俺のステータスじゃここから出る手段がないな」
だって後衛職だもの。
【出会い】
・・・・あれから一週間がたった。
あ、なんで時間がわかるかはステータスに時間と日時が記載されているからである。
いや~ステータスさまさまでほんとに便利な機能だよ。前の召喚の時にもかなりやくに立った。
異世界においての良い処だ。ほんとべんりべん・・・・
「いつになったらここから出れるんだよ!!!」
ほんとなんもない、なんもない、なんもない。ウガーと寝っ転がりまわる。
洞窟は思ったりも広くちょっとした迷路のようにもなっていたが、それだけで扉もなにもない。
しかし、洞窟の中に黄金の箱がいくつもおいてあった。なんで?なんてものはどうでもいいが、中にはリンゴやブドウなどの果物がぎっしり詰まっている箱やペンダントや腕輪などの、なんか高く売れそうな感じのものが入っている箱があった。
「食料があるのはありがたいけど、それもいつまでもつか」
結構焦りもある。なにより何もできないのがつらいのだ。
「いいや、寝よ」
出れないんだ。しかたない。
俺、ここで餓死するのかなぁ。いやだなぁ。
「なんでこんなことに、……どうしよぅ……っ!」
さすがに弱気になって泣きそうになる。ないてないもん
うぅ~この体になってなんだか女々しくなってきた気がするのは気のせいか。
「………よ!ここ……」
そんなとき、何処からか声が聞こえてきた。
聞き間違えかと思ったけれど、ずっと静かなところにいたからか聴力が衰えているのかなんなのか、聞こえにくい。
「……はここ……ね!」
「やっぱり!だれかいる」
聞き間違えじゃない!!ぜったいだれかいる
慌てて起き上がり、あたりを見渡すが何も変化はない
「だれか!だれかいるんですか!!」
洞窟に俺の声が反響する。
……なにも……返答がない
それから少し時間が流れたが、まったく声は聞こえなくなってしまった。
「…まじかよ……おい」
一瞬生まれた希望が絶望へと変わった。
はぁとため息が出る。一体いつになったらここから出ることができるのか。
膝の力が抜けて地面に座り込んでしまった。
…………ゴーンという音が洞窟の中で反響する
俺の目の前の壁が崩れ落ちたのだ。何が起きたのか把握できないまま空いた壁を見つめる
「あら?やっぱりここが隠し扉だったのね!ようやくお宝にあり付けるわって……だれあんた?」
空いた壁の先から、中世を思わせる格好の女の子?だろうか、俺と同じくらいの年頃の娘がそこにはいた。
手には剣?だろうか、俺を見て警戒の目をする。
「ここ、あの扉を見る限り1000年は開いていないと思ったのだけれど、ねぇあんたどうやってここに入ったのかしら?もしかして魔物の亜種?」
少女はそう言いながら剣を俺の目の前に突き付けてくる。
俺が下手に動いたら殺すと目が語っていた。
「お。俺は一週間ほど前にここになぜか転移させられて。魔物じゃない、人間だ。えっと助けてくれてありがとう」
「別にあんたを助けたわけじゃないわ。そう転移ねぇそんな罠このダンジョンにあったなんてしらなかったわ。まぁいい、私この隠しダンジョンにある宝を取りに来たの。失礼するわね」
まだ警戒の視線を俺に向けつつ、俺に向けていた剣を下してくれた。どうやら話は通じる人のようだ。
「宝?宝ってもしかしてネックレスとか腕輪とかか?」
「あんた場所しってるの?なら早い、そこに案内してくれないかしら? どうやら私はあなたの命の恩人みたいだし、同じ冒険者でも私に譲ってくれるんでしょう?」
少女はそう言ってまた剣を俺に突き刺してきた。
……それは脅しなのではないか。
どうやら厄介そうな少女に出会ってしまったのかもしれない。