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第一章 異世界にて【理由】

ここはそういう町なんだと彼は笑って言った。

その為に自分は生かされている。

だからごめん、君とはどうやらここまでのようだ。

だけど、最後に君をもう一度見ることが出来て良かった。俺は幸せ者だな。


そういって彼は笑っていたけど、私は納得いかなかった。

だってそうでしょう?そんな理不尽が許されるものか

だけど彼は満足そうに笑っていた。


止めたい、けれど私には彼を止められない。

彼には生きていてもらいたいけど、どうやったら彼に生きてもらえるんだろうか。


分からない、本当に分からないわ!何日も考えた、何日も寝ずの番を過ごしない頭で考えた。


でも私の選択肢は××しかなく、それ以外の方法を見いだせなかった。

しかし、それを行ってしまった時果たして彼は私を見てくれるんだろうか?


◇◆◇◆


林の森の中、私はただそこにいる。

いつもと違うのは、一風変わった服装を身にまとう少女が隣にいることだ。

ギルドで初めてチームを組んで、初めて魔獣を殺す任務を受けた。

なにもかもが初めてで、そして何もかもが懐かしかった。


ゴブリンは亜種魔獣だが、行動は集団単位で人間や動物を主な主食とし、人間レベルの生活をおくる種だ。

人間に近く、また人間には遠い野蛮な魔獣。


彼らを倒すには、集団の中にいる長を倒すことが一番だ。長が死ねば集団としての機能を失う。

ゴブリンは基本単体としては魔獣最弱の種だ。武器であるこん棒を振り回す、それ以外には何もできない。

そんな彼らを統率し集団として確立されているのがゴブリンキングと呼ばれる長だ。


狙いは集団の中にいるゴブリンキング、そいつの首をはねれば任務は終わる。

ああ、大丈夫だ。


カレンあなたは死を恐れない、あなたは死を殺すことができる。あなたは私を殺すこともできるんだから。


「・・・大丈夫、大丈夫だ」


愛武器であるナイフを持つ手を強くする。

もうすぐ彼女から合図がくる、私はそれをみてゴブリンの集団の中に飛び込むだけだ。

決意を固めただその時を待つ


《癒しの力》発動!!


どからか声が聞こえてきたその瞬間、私のすぐそばで白い発光が起こった。

彼女がやったんだろう、でもこの魔法はなんだろうか。いくつか相手の視界を奪う系統の魔法は知っているが空中でいきなり光る魔法を見るのは初めてだ。


彼女の魔法をみて呆気にとられ出る時間を誤った、しかしあの魔法のお陰でゴブリンたちは動けないでいる。

チャンスは今だ!


ナイフを手に私のできる限りの速さでゴブリンの集団に飛び込んだ。

その中でも通常のゴブリンより頭一つ分大きいゴブリン。あいつがゴブリンキングだ。


「殺った!」


彼女が放った光で混乱しているゴブリンキングの首元に向けナイフを振り下ろす。


【お前はそれでいいのか?】


わかっていたのに!わかっていたのに!わかっていたのに!

なんで、ここであなたの言葉が私の中で響くんだろうか。


近くから焦ったような声が聞こえる。目の前には固まっている私の姿を見て手に持っているこん棒で私の頭を殴ろうとしているゴブリンたちの姿があった。


これが私の最後なのかな?


いつか来ると思っていた瞬間がこんなにあっけなく訪れてしまった。

これが私の罰なのかと、絶望よりも、もっとこうなにか違う感情が私の中で駆け抜けていくのが分かった。


そこで、私の意識は途絶えた。


◆◇◆◇


一つ迷いがあった。

簡単な話だ、俺にはこの世界でなんの思いで戦いに向かえばいいのだろうか、ということだ。

俺は別に戦いが好きなわけではない、また戦いが得意なわけではない。


前の召喚の時は家族が待っていた、友達が待っていた、あの日の日常が待っていた。


だが今は?今俺はあの世界になんの未練があるのだろう

だからあの洞窟でも死ぬことに恐れを抱いても、あの世界に戻れなくなるということを恐れを抱けなかった。


では一体俺は何をもってこの世界で生きればいいのだろう。

その答えは出ないまま、エレナの言われるがままここまで来てしまった。


≪俺は何のために生きればいい≫


別に死にたいわけではない、どちらかといえば生きていたい。

別に生きたいわけではない、どちらかといえばこのままでいい。


わけがわからないが今の俺の定義はこのような感情からなっているらしい。


≪生きてくれ、ただ生きて、そして義務を全うしろ!!≫


いつか俺に叫んだ男がいた、そいつは最後最愛の人を、最愛の人と知らずに殺しそして死んだ。

俺はそいつのことを、そいつらのことを絶対に忘れない。忘れてはいけないとそう思った。


≪日向、あなたは幾千万の人を助けることができる人間よ、だからお願い助けて≫


自分の無力をしりながら、自分の浅はかな願いをしりながら。

それでも彼女は俺にそう言ったのを俺は忘れない。


あいつが今の俺を見れば生きぎたないとののしられるかしれないな。


いろいろと考えていくうちに、いろいろと分かってきたものがある。

今の俺に必要なものは。


この世界で生きていく意味、という解なんだろう


◆◇◆◇


俺としてはゴブリン討伐なんてものは簡単なことだとは思っていた。

カレンの腕前は、道中の動きや反応の速さ、そして洞察力の面からいって一流といえるほどのものを持っている。

一流というのは暗殺という面ではある。


俺の今の力を考えれば、彼女の力を増幅、援護することでゴブリンの無双は可能だろう、と。


不安はあった。端的に言うとカレンの目は殺意は持つことはできても諦めと妥協を秘めていた。

あの目は前にも見たことがあった。だからこそあそこで彼女を挑発し、俺とパーティーを組むよう仕組んだ。


ただ、あの時の彼女には。ゴブリンにナイフを突き刺そうとした時の彼女の表情には恐怖が表れていた。


「さて、どうしたものか」


エレナの指令は討伐任務をクリアすることだが、彼女とパーティーを組むことになれば問題が多いのだろう。

かといえ、俺ではゴブリンを単騎で倒せない。

普通この場合、ほかのメンバーを見つけることの方が効率がいいだろう。


だけども、背中に背負っているカレンの何かに苦しむような姿を見る。


「ま、見捨てられないよな。エルシーさんにも頼まれちゃったしな」


今のまま討伐任務を受けようと彼女がすれば間違いなく死ぬ。


かかわってしまった、彼女のことを少しでも知ってしまった瞬間、彼女はもう赤の他人ではない。

だから、俺は彼女は見捨てられない。


「自分の生きる意味、ここにある目的。それを見つけるのも課題だが、とりあえずはやっぱり目の前の仲間を助けないとな」


さて、では一度街に戻るとしようか。


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