敵編隊発見
第二次攻撃隊が攻撃を終えようとした時、カーン飛行場にシェルプールレーダー基地から緊急入電が入った。
『こちらシェルプールレーダー基地。レーダーに多数機影確認!およそ90機です!』
「了解した。バウムガルテン司令!遂に来ました!ウェールズ空軍です!」
「数は?」
「90機です!」
司令室に緊張がはしった。ついにjg2の戦いが始まる。
「うむ、全機出撃せよ!」
「了解!」
カーン飛行場にスクランブル警報が鳴り響く。
「お、来たか!全機直ちに離陸しろ!ビリは帰ったら基地10周だ!」
ファルケンベルクはそう言うと、真っ先に離陸していった。他のパイロット達も、轟音をたてて次々と離陸していく。そしてヨハンはそれをぼーっと眺めていた。
「おいヨハンどうした?ぐずぐずしてるとビリになっちまうぞ」
ぼー、としているヨハンにハンスが声をかける。
「え?あっ、すみません!直ぐに行きます」
「ったく、発進の仕方がわかりませんって言うのかと思ったぜ」
「はは、流石にそれは・・・・・・」
「よし、じゃあついて来い」
「了解」
ハンスに連れられてヨハンも離陸を開始した。
スロットル全開。速度が増すにつれて、コックピットがガタガタと揺れだす。カウンタートルクの影響で機体が左により始めた。ヨハンは右のラダーペダルを踏んで機体を真っ直ぐに調整しようとするが、緊張のせいか右足がぷるぷると震えて上手く調整出来ない。ヨハンがチラッと速度計を見ると、bf109はすでに最適離陸速度の165キロを優に越える200キロに達しようとしていた。仕方なくヨハンは操縦棒を引き、左斜めにふらつきながら離陸した。
「あ、危なかった。たかが離陸でこんなに緊張するなんて」
無線から声が聞こえる。
『随分危なっかしい離陸だったな』
「ハンス中尉!すみません緊張で・・・・・・」
『まぁいい。着陸はしっかりやれよ』
「はい!」
『とりあえず俺について来い。お前からみて2時の方向にいる』
ヨハンが2時の方向を見ると、左右交互に翼を傾けてる機体がいた。
「あのバンクしている機体ですか中尉?」
『そうだ。ついて来い』
「了解!」
『この機体の最適上昇速度は260キロ前後だ。260キロを維持して上昇しろ』
「了解!」
ヨハンはハンスの後ろにぴったりくっつきながら、上昇を開始した。
そしてしばらくすると味方の大編隊が見えて来た。
「すごい・・・・・・」
ヨハンの目の前には、空を覆い尽くさんばかりに味方戦闘機がひしめいていた。
『全部で120機だ。あと少しすればル・アブールの基地からも増援が来るだろう。そしたら200機は越えるな』
「200機ですか!?すごい!」
『バトル・オブ・ウェールズの時はもっといたさ。じゃ、第2中隊の所に向かうぞ』
二機は第2中隊の最後尾についた。
『遅かったじゃないか二人とも。ビリはえーと、ヨハンだったかな?おめでとう!君が基地10週だ』
「えぇ!そんな!」
『初めてだからしょうがないけど、決まりは決まりだからね。私は第2中隊代理隊長のヴァルターだ。よろしく』
「よろしくお願いします。ところで代理とは?」
『私はハンスの代わりなんだ。ハンスは頑なにロッテの相手を作るのを嫌がったから、司令に隊長職を取られたんだ。なぁハンス」
『余計なことを・・・・・・』
『ははは、許せよハンス。よし!ファルケンベルク大尉!第2中隊全機揃いました』
『よし全機揃ったな。ビリはヨハン!10週だ。第2中隊メンバーも連帯責任で基地5週。そしてハンスは監督責任で15週だ』
「えええええ!!」
『ははは・・・・・・しょうがない、しょうがない』
『ヨハンてめぇ・・・・・・』
無線から第2中隊メンバーのため息が続々と聞こえだす。
「すみません!すみません!」
『ほれ、第2中隊しっかりしろ。これより方位301に進路をとるぞ』
『こちら第二中隊。301に進路をとります』
『俺達第一大隊はこのまま前進する。第二大隊は俺達より少し後方で待機して、俺達が狩り残した機体を始末してくれ。第三大隊他に敵が来ないか周囲警戒をしてくれ』
『了解しました。ファルケンベルク司令』
Jg2の120機は、まるで渡り鳥の群れの様に綺麗な編隊を組みながら、三方向に別れて行動しだした。
そして第一大隊が前進を続けると、海の向こうからもう1つの群れがやってきた。
『こちらファルケンベルク。敵編隊発見』