表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私、勇者になります!!  作者: るる子
一章 私が勇者となるまで
2/32

旅立ちは計画的に!2 はじまり

 フェルトリーリエ王国には、『運命の赤い糸』という特殊な婚姻制度がある。

 そもそも、魔道大国として名が知られているとおり、フェルトリーリエ王国の国民の大半は魔女・魔法使いだ。

 平民ですら簡単な魔法が使えるのは当たり前だし、貴族に至ってはその魔力保有量は言うまでもない。

 だが、魔力が高いということは、総じて子供が生まれにくいということでもあった。

 魔力が高いものほど、相手の魔力と反発しあってしまい、子供が出来にくい体質となっているのである。

 そこで、出生率を上げるために、魔力の相性がいい者同士を見つけるための特別な魔道具が開発されたのが、およそ200年前。

 まるでそれは『運命の赤い糸』のようだと、フェルトリーリエ王国の結婚出産に関する様々な法律は、総称して『運命の赤い糸』と呼ばれるようになった。

 そして、今日にいたるまで貴族階級と、平民の中でも特に魔力保有量が高い者は『運命の赤い糸』により、ほとんど産まれたその瞬間に結婚相手を定められてきたのである。



―どうして、私の許嫁はあんなにも完璧超人ハイスペックイケメンなのだろう。

 その許嫁に贈られた姿絵を眺めては、マリアベルはいつも憂鬱な気持ちとなる。

 神に愛された美貌、妖精王の寵児、この世界に現れた奇跡、ええっと他になんだっけ…?

 ともかく、私の許嫁様は、色んな言葉でその容姿が讃えられるほど美しい人だった。

 男ですけどもね!そう、彼は男なのです。

 けれど、私が知るどんな女性よりも美しい人だ。

 月光を編んで作られたような、白銀の髪に、透き通るような白い肌。

 瞳は月色(ムーンライトブルー)で、髪と同じ白銀の長い睫に縁どられている。

 少し前まで美少女のようだった外見は、少年から青年へと変化しつつある今は、中性的な容貌となっている。全体的に酷く儚げな容姿だ。

 彼を見た者は老若男女問わず、守りたい、むしろ守らせてくださいと思ってしまうらしい。

 まあ、いくら容姿が儚げでも、本人は世界最強の魔法使いなのだが。

 そう、奴は、いやあのお方は、容姿だけでなくその能力も優れているのだ。

 フェルトリーリエ王国始まって以来の類を見ないほどの魔力保有量に、抜群の魔道センス。

 許嫁様のおかげで、魔道技術の進歩が100年は早まった…らしい。

 これだけでも、うんざりするほど結婚相手としては好条件なのだが、さらに奴は…なんと王子様なのだ。

 比喩でもなんでもなく、王子様。我が国の王太子様。

 つまり私はこのままでは、この国の未来の王妃様となってしまう。

 そのことが、憂鬱でならなかった。最近では気が付けば溜息ばかり吐いている。

 嫌で嫌で仕方ないのに、王太子―ルイ・レティウス・アマリシア―と、結婚する日が、つまり私の17歳の誕生日が近づいているのだ。

 

 何も知らない小さな頃は本当に幸せだった。

 奇跡のように綺麗な王子様と、愛読していたお伽噺に出てくるどの王子様よりも素敵な王子様と結婚することが決まっていて、その王子様は誰よりも私に優しくて。

 妖精のように愛らしい母に、これまた母の遺伝子をきっちりと受け継いだと思われる美形な2人の姉、2人の兄、そして弟。

 だが、いつからだろう。

 私が夢から覚めてしまったのは。

 私の周囲は確かに美形が溢れかえっていたかもしれない。そのせいで、気が付くどころか考えもしなかったのだ。

 私自身は、いったいどうなのだろうと。


―6歳で入学した王立中央魔道学院で、私は真実を知ることになった。


 私は決して美形ではない。ごくごく普通の平凡な十人並み顔。

 本当に、グラディウス家の娘なのだろうか、と疑う程の。

 だが、母や兄弟姉妹はともかく、父は私によく似た顔立ちだし、そもそも親子判定は魔道具を通して魔力の質により判定されるため万が一にも間違われることはない。

 薄汚い豆狸。嘲りとともに言われたのはいつのことだったっけ。

 さらに、普段当たり前のように、ルイ様や母、兄弟姉妹を見ていたせいで気が付かなかったが、あの人たちは美形は美形でも、特別な美形だった。

 誰もが振り返り、認める程の。

 私のような平凡すぎる容姿の人間が、隣に並んでいい存在ではないのだ。

 というか、無駄にキラキラしすぎて隣に並びたくないというのが本音だ。


(あの、あの女なんであそこにいるのよ!?的な視線が本当きついんだよね…)


 私だって好きでこんな容姿に生まれた訳ではない。

 加えて、私には―…。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ