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episode 6-2 なんだこの話は… (全員)

途中からテンションがおかしいですが、短いのでよければお付き合いください。


次回からはプロットを作ってますので、これよりはましになります。

「まずはこの絵を見て!!」


 ルナはチョークを片手に取り、かっかっと音を鳴らせながら黒板に何かを描いていく。どうやら絵を描いているようだった。しかし、お世辞にもうまいとは言えず、中央にある円に三角形の物体が上方に二つ付いている奇妙な物体が完成する。


「これは何でしょう!!」

「えっと……何だろう」


 困った笑みを浮かべながらも丁寧に対応するフォールは賞賛を送られるべきだろう。それほどに、謎の絵だった。これは何でしょうと言われてと、神とルナのみぞ知る……いや、神ですら分からないであろう。


「答えられない人にはチョークを投げるよ?」


 それを聞いたヒイロはチョークを投げられるのは勘弁だったので勢いよく手を上げる。


「ヒイロ!!」

「丸三角おばけ!!」

「ちーがーうー」


 『ちー』で黒板のチョーク置きからチョークを三本取り出し、『がー』でチョークをそれぞれの指に挟んで後ろに振りかぶり、『うー』でメジャーリーガーも真っ青な速さでチョークをヒイロに向かって投擲した。

 投げ飛ばされたチョークは間違った答えを言ったヒイロの口へと吸い込まれていくように向かっていき――


「危ねっ!?」


 ヒイロはすんでのところで避けることに成功する。ぎりぎりだったので頬に当たる結果にはなったが、チョークを食べるよりははるかにマシな結果だ。

 それを見ていた三人は絶句した。これは何が何でも正解を当てにいくしかない、と。答えないという選択肢はすでに消えていた。ルナにチョークを投げられるのを防ぐ孤独な個人戦が始まる。

 目線がフォールに集中する。フォールは必死の講義をするが、フブキとリリスはちらちらとルナも見ながら早く何か言ってくれとせかす。

 この間、ヒイロは痛みに耐えてもだえていた。

 ルナがとんとん、とかかとで床をけった。

 空気が震える。まるで衝撃波が起こったかのような圧迫感が教室に漂う。

 口を開かなければ、やられる――。そう頭によぎる。


「フォール!!」


 ルナがフォールの名を呼ぶ。

 ヒイロを除く二人の視線がフォールに集中する。そして驚きで目が離せなかった。

 フォールが……フォールが、手を挙げている!! 

 震えるからだを隠すように挙げている手をもう片方の手でつかんでいるが、余計に振動が伝わってしまって逆効果になっている。それでも、決して怖がっている様子など見えない精悍な顔つき。フブキとリリスは思わず涙が出そうになった。しかし、自分たちの礎になるかもしれない彼の勇姿を決して見逃してはいけないため涙は流せない。そして期待する。フォールが理不尽を打ち破ってくれることを。ゆっくりとフォールは口を開いて、その言葉を発した。


「それは……犬、じゃないかな」


 はっとした。

 そして感心した。

 確かに犬に見えなくもない。本当に頑張ればの話ではあるのだが。

 中心である円はそのとおり顔で、二つあった三角形は耳を表している。どんなに目を凝らしてみても鼻は認知できても目が確認できないのが不安要素ではあったが、犬という言葉を聞いて絵とさらし合わせて考えてみると大方の特徴が一致している。これが間違いだったら、一体何が正解だと言うのだろうか。

 不安、恐怖、期待。さまざまな感情が心のキャンパスでごちゃ混ぜになって気持ちが定まらないままフォール、リリス、フブキはルナの口が開かれるのを待つ。そして、そのときがきた。この時のヒイロといえば、本を顔の前に掲げてガードしていた。情けない限りだ。


「……正解!!」


 正解だ。

 理不尽からの開放。

 リリスとフブキなど、感極まって声が出せないでいた。

 それほどの恐怖体験。ルナの身体から放たれたチョーク砲はヒイロに傷を付けただけでなく、フブキとリリスの心さえも折っていたというのだ。

 そしてフォールはやくやった。もはや勘を頼ることしかできない状況で、よくぞ正解を導き出せたものだ。フォールは知らず知らずのうちに流れていた額の汗をぬぐった。彼にとっても負けられない戦いだったのだ。緊張していた。躊躇もした。それでも勝てると信じて挑戦した結果、みごとに勝ち取ったのだ。勝利と言う名の栄光を。

 この時、ヒイロは掲げていた本を下ろし、何でもなかったぜとばかりにあごに手を添えてキメ顔を決めていた。

 それぞれが、ルナの難問を乗り切り、喜びをかみ締めていたところ、


「ではでは第二問!!」

「二問目はいいから!! シリアス作ってた空気ちょっと読んで!!」


 ルナはまだまだ何だろうクイズをしたかったようだが、ほかのメンバーの制止により叶わないものとなる。


「なれないことはするものではなかった」

「身振りで語るって言うの、僕も疲れたよ……」

「なんか俺だけ無駄にチョーク当てられてないか?」

「ばーれーたー」

「その手はもうくらわないぜ!!」


 今度はきちんと本で防ぐことに成功する。普通に女子高生が投げているのと変わらない速度で向かってくるチョークなので簡単に見切れた。防がれたことに眉をしかめるルナに笑って挑発するヒイロ。本格的な二回戦が始まりそうだ。


「そうだ、ところでリリス。チョークは何の成分でできているか知っているかい?」

「あの二人は放っておいていいのね……。チョークね……知らないわ」

「そっか。僕も知らないんだ」

「へえ、そうなの」

「うん」

「………………」

「………………」


 リリスとフォールが無言でいる中、後ろでフブキがくしゃみをしていた。


「この収まりきらない感じ!!」


 リリスの叫び声を聞いて、チョークを投げ合っていたヒイロとルナがやってくる。制服にいたるところに白い粉が付いていて、白熱した戦いだったことを思い知らされる。


「リリスどうした?」

「チョークが何たらって言う会話!!」

「なに興奮してんだよ……」

「うんたら!!」


 ルナが叫ぶ。あの時は起きていなかったはずだよなと思って、ヒイロはルナの顔をまじまじと見る。無邪気そうな笑顔、これが仮面でその下に醜悪な感情が眠っているとしたら……。いや、ルナに限ってそんなことはないだろう。

 そこでヒイロに説明をする。

 つまり、チョークって何でできてるか知ってる?→知らん→僕も僕も→そっすか→無言→だったら聞くなやあ!! とリリスは言いたいらしい。


「それはリリスがコミュ障だからだろう」

「私コミュ障じゃないよ!?」

「ははは。何言ってるんだ」

「こいつ聞く耳持ってない!!」

「待つヒイロ。ここはきちんとして友達の人数の少なさで定義つける。皆で言い合ってみよう」


 にやりと笑いながらフブキの提案が出る。友達の数で勝負。持たざるものには無慈悲な提案だった。ヒイロは、反論を言うこともできず、ただ青ざめていた。

 そんなヒイロを見たリリスも笑みを浮かべる。


「あれれ~? どうしたのヒイロ。なんか具合悪そうね。でも、私をコミュ障と称したヒイロは、たくさん友達がいるんだろうなー? 言ってみてよ、何人いるの?」


 ヒイロはしばし固まっていたが、突然意識を取り戻したかのように動き出す。


「そうだな。チョークの話だったな」

「友達の数の話」

「……よ、よし。ルナよ、チョーク戦争やろうぜ」

「友達の数の話らしいよ?」

「…………つ、疲れたなー」

「僕も友達の数の話聞きたいなー」


 無言でフォールを睨むヒイロ。同じ中学校のフォールは完全におもしろがっていた。しかし、そんなフォールを見て天命が降りた。


「そ、そうだな。皆が知っているなかでは一人かな」


 自信満々に語った。範囲を限定した中での人数。数を語ってはいるが、決して全体の人数ではないため少なくても問題はない。ヒイロはそう思った。

 しかし、ほかのメンバーの反応は真逆と言ってもいいほど違った。

 リリス、フブキ、ルナの三人はヒイロを信じられない様子で見たあとに自然とフォールに注目が集まる。フォールは苦笑している。彼女たちが雑談集会として名を連ねた時にヒイロが顔合わせとしてフォールのことを自分の友達だと紹介していたのが思い出された。また、ヒイロはそれぞれメンバーがどの組に所属しているかも知っている。そのクラスには友達がいないということ。そこまで思考して、三人は頭を使うの事をやめた。これ以上は、危険だと本能が忠告していた。


「別に私は何も言わないから……けど、相談があったら気兼ねなく言ってね」

「ヒイロ、今までごめん」

「大変だったんだなあ……」

「お前ら……止めろよ。心が抉れる」


 本当に泣いてしまいそうだった。


「お、お前らが知らない範囲ではたくさんいるんだからな」

「そうね……そうよね」

「ヒイロ、強く生きて」

「生暖かい目なんか向けないで!!」


 ヒイロは教室から逃げ出した。

 残される四人。

 たまには、ヒイロを一斉攻撃してもいいだろうと数日前から機を狙っていたのだ。そして、今日。ヒイロに精神ダメージを与えられそうだったので、実践に至った。特にリリスは最近不満が溜まっていたので、満足する結果に至った。


 後日、拗ねたヒイロをなだめるのは、これ以上に時間を要したのだった。

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