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episode 0 大体こんなノリ (ヒイロ・リリス・フブキ・フォール)

サブタイトルの括弧の中が、その回に登場する人物になります。


「人類、皆友達だ!」 


 ヒイロは拳を握り締めて、勢いよく立ち上がる。その顔は決意に満ち溢れていて精悍としている。


「唐突にどうしたのよ、ヒイロ」


 リリスは困ったような呆れたような、意味ありげにヒイロに見る。


「……ん?」


 読書をしていたフブキも、ぱたんと本を閉じてヒイロを見つめる。


「はっ! 女共はまるで分かっていなくて困るね、ヒイロ」


 ヒイロに同意するようにフォールも立ち上がる。自分には言っていることがわかっていると、口元には笑みが浮かんでいる。


「つまり、ヒイロは言いたいことは――」

「世界征服だ!」

「そう、世界征服……ってマジですか!?」


 フォールはヒイロを驚愕の面持ちで見る。予想外の出来事にずっこけてみせるという、芸人のような技とともに。


「マジだ。大マジだ」


 オーバーな身振りで嘆いてみせる。お前にだけはわかってほしかった、といやでも伝わるしぐさだ。

 そんなヒイロを見たフォールは、くっと声を漏らして目を背ける。友人の期待にこたえられなかった悔しさが顔に表れている。


「お前とは……どこから道を違えてしまったのだろうな……」


 自分の顔を直視できない友人に問いかける。ヒイロとフォールは中学からの付き合いで、高校二年になる今年で5年の付き合いになる。お互いのことを理解しあえていると思っていたがゆえに悲しかった。


「しかし、もうそんなことを憂いても遅いのだろう……」


 フォールを突き放す言葉だった。しかし、


「……まだ、僕たちは理解しあえる」


 ぽつりと、けれども力強くフォールの声が耳に届いた。


「……え?」

「お前の言葉を取り違えたのは僕の責任だ。けど、まだ僕たちは分かり合えるんだ……!!」


 転んで床に尻を付けていたフォールがゆっくりと立ち上がる。その顔には不敵な笑みが浮かんでいる。

 フォールは手を差し出す。その手は、親しい友人に向かっている。


「俺は、その手をとっても構わないのか……?」

「もちろんだよ、ヒイロ」


 お互いに認め合うように軽く笑った。そして両人の手が結ばれようと距離をつめる――


「あー寒いー。なぜか寒気が襲ってきたわー。ねえ、フブキ?」

「うん。北極か南極にテレポートしたかと思った」


 今まで無言で男二人の芝居がかった会話を聞き続けていたリリスとフブキが、身体を温めるように自分を両手で包みながら話していた。


「今まで黙っていたなら、最後まで見届けろよなー」


 よほど不満だったのか眉をしかめながら二人を見るフォール。


「感謝こそされど、憎まれる筋合いはないわよ。展開急過ぎで意味不明」

「そこまで言うか? 男のロマンっていうものが分からないかな。ねえヒイロ」


 問いかけられたので、うむと頷く。


「世界征服は男のロマンではあるが……展開をしくじったのは否めないな。まあ、うだうだと反省しても仕方ない」

「とりあえず、今日は世界征服がうんたらというわけなのね」


 リリスはため息をつく。しかし反論はしない。


「そうだな。まあ、世界征服だ」

「……うんたら?」


 本を読み返していたフブキが、顔を上げる。


「ごめん。気にしないで」

「うん、分かったら」

「……フブキ?」


 リリスに返答すると、言うべきことは終わったとばかりに本に目を戻す。


「うん、気にしたら駄目たら」


 フブキが目を合わせてきたので、ヒイロはそう返す。

 何か言いたげにしていたが、フブキはそのまま隣に目を向ける。すなわち、フォールだ。

 フォールはにやっと笑う。


「うん……たら」


 うんたらだった。


「この団結力いやああああああ!!」


 フブキが目に涙を浮かべて叫ぶ。

 いつものことなので、気にする者はいない。


「気を取り直すぞ。うんたらリリスはうんたらと泣いてないで、うんたらと静かにするんだ。うんたらとな」

「あんた覚えてなさいよおおおおおお!!」


 つかみ掛かるとまではいかないが、身を乗り出して叫ぶ。どうどうと軽くあしらって、皆の注目を集める。


「本日は世界征服について実現可能な案を上げていくぞ」

「てっきり世界征服のシチュエーションでもするのかと思っていたんだけど」


 意外そうにフォールが言う。


「できれば俺もそうしたかったのだけれど、さすがに人数が足りないからな」

「なるほどな」


 少数精鋭というシチュエーションも有りだが、二桁にも満たないヒイロたちではスケールが小さすぎる

 そこで、フブキがおもむろに手を上げた。ヒイロは進行役としてフブキに発言の許可を与える。


「まず世界的な制服なのか世界を征服するのか、そこから考えるべき」

「一理あるな」

「おお、確かに」

「ちょっと世界的な制服って何!? 考える余地もなくない!?」


 うんたらと縮こまっていたリリスが、急に声を張り上げる。静かにしたり騒いだり不安定だなとヒイロはたじろぐ。

 しかし、進行役として黙っているわけにはいかない。

「考える余地がない、と決め付けてはいけないぞ。きちんと議論をしなくちゃいけない」

「じゃあ世界的な制服って何か説明してみなさいよ!!」


 ここで、私がとフブキが手を上げる。


「リリスが世界的な制服を知らないとは残念。言葉通りに意味を理解すれば、おのずと解は導かれる。世界的に公的な場で使用されている制服、つまりスーツ」

「最初からスーツって言いなさいよ!! 特別な何かと勘違いするから!!」

「リリスは制服に可能性を感じすぎじゃないか? 変な性癖でもわずらっているんじゃないか?」

「……制服フェチ、だと!?」

「……っ!!」


 その言葉を聞いて、フォールとフブキははっとしたようにリリスから距離をとる。フブキに至っては、ずいぶんと脅えた表情までみせている。


「変な解釈するなああああああ!!」

「え、えと。僕は別にリリスが何に興味を持っていようが平気だからね」


 ひきつった笑みを浮かべながら、分かったとばかりにフォールはリリスとの距離をつめる。しかし悲しいことに、距離をとる前よりは離れているのだった。


「………………」

「フブキは何か言ってよ!?」


 ぶんぶんと首を振りながらフブキはリリスを拒否する。二人の間の壁はなかなか壊せそうにないようだ。

 リリスはキッとヒイロを睨みつける。こうなったのはあんたのせいだから、と顔が語っている。


「リリスが変態であっても、それはどうでもいいんだ」

「変態とか言うな!!」

「人類、皆友達だ!!」


 してやったりと笑みを浮かべるヒイロ。


「今になって、やっと真意が分かったよヒイロ」

「……なるほど」


 一瞬目を見開いて、頷きヒイロを見つめるフォールとフブキ。その顔は晴れ晴れとしている。


「人それぞれ、一人ひとり違うわけだ。そこに変態な性質を持っていても関係ない」

「それを受け入れられない人間がいてはいけない」

「なぜなら人間は、等しく平等に友達だから!!」


 がしっとそれぞれの手をつかむ三人。どんな争いがあっても、どんな試練があっても、結託して立ち向かう仲間のような連帯感が、確かにそこにはあった。

 そして学校の閉門の時間が近づいた合図のチャイムが鳴った。

 学生が活動できる時間はここまでだ。各々が変える準備を始める。


「いつまでもうずくまってないで帰るぞリリス」

「変態を返上したかったのに……」


 いつの間にかグッドエンディングに向かっていたので口を挟めなかったのだ。


「そんなことをしても意味ないだろう。リリスなら返上しても、すぐに変態挽回できるだろうからな!!」

「……ヒイロ?」


 じろりとヒイロに憎しみの視線を向けるが、疲れているのかそれ以上のことはなかった。フブキとフォールは我ら関せずとばかりに二人で雑談をしている。ヒイロはリリスから逃げるようにそこに加わった。リリスも一人になりたかったので追うようななことはしない。

 そして、しらばくして気づいた。


「あれ、世界征服の話じゃなかったの?」

初めて小説を書いて投稿してみました。拙いところばかりですが、温かく見守って下さい。よろしくお願いします。


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