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#0 【14】
#0は、これで終わりです。
そのすぐ後だろうか。
不意に視界が歪んで、意識が遠のいていくのを感じたのは。
目の前にある筈の、大通りの景色が、遥か遠くに見える気がした。意識の消えかけている僕には、最早『見えない』に等しかった。
狼の方に目をやると、相変わらず半開きの寝ぼけたような目で見つめている。
しかし、狼の輪郭も、数秒後には原形を留めていなった。
「お帰りなさい……」
意識を失う寸前、ふと、誰かの声が聞こえたような気がしたけれど、『聞こえた』と認識する前に、僕の意識は消えた。