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しかし、この『何か』がイヌ科の動物だとして、目が蒼いのは、どういうことなのだろう。イヌ科と言えば、犬とか狼だけれど、目が蒼いのはいない気がするけれど……。
僕が色々と考えている内に、『何か』は僕の方へ歩み寄ってきた。距離が縮まった事で、『何か』の姿が露になる。
『何か』とは、蒼いふさふさの毛に、白の混ざった毛の――狼だった。狼は僕の足元で立ち止まると、寝ぼけたような目つきで僕を見据える。
白い吐息が、ゆっくりと宙を舞う……時間が、止まったような気がした。
「……えっと」
何をすればいいのかよく分からなくて、僕はとりあえず狼の頭を撫でてみる。柔らかい毛の感触が、手一杯に広がった。
気持ち良かったのだろうか。狼は小さく鳴き声を上げると、そっと擦り寄ってきた。