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「私に愛まで望むとは、強欲な女め」と罵られたレオノール妃の白い結婚  作者: きぬがやあきら


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恋に落ちた勇者 2

「俺も君を前にすると、胸が苦しくなったり、妙に落ち着きがなくなったりするんだ。同じなら、君は俺に恋をしていることになる」


 口にしながら自分でも、随分と浮ついたセリフだと自覚していた。


 まさか自分がこんな言葉を誰かに投げかける日が来るなんて、思いもしなかった。


”氷の彫像”の二つ名は伊達ではない。


 これまではどんな局面でも、顔色ひとつ変えずに乗り越えてきた。


 そういう意味ではひょっとしたら、レオノールとクラウディオはどこか似ているのかもしれない。


「恋なら……元々私はクラウディオ様が好きでしたけど。……って、今サラッとすごいセリフを言いました? クラウディオ様も私に!?」


 しかし、レオノールの前では難しい。


 こんなにも顔が火照るし、大きな声では言えないが手汗もひどい。


「好きと恋は、似ているようで同一ではない。俺も君を、人として好きだと言い聞かせていたが、たった今観念した。レオノール、俺は君に恋をしている」


 レオノールもクラウディオと同じで、真っ赤に赤面していた。


 何も言わずとも肩と胸が上下して、忙しなく呼吸をしているのが分かる。


「レオノール。君に触れても?」


 クラウディオが一歩分近づくと、レオノールはピクリと肩を跳ねさせた。


 先ほどは咄嗟に手を振り解いたからだろうか。


「……はい」


 警戒するように返事をしておきながらも、拒否はされない。


 クラウディオがそっと肩に触れる。


 レオノールの肩に宿る緊張が指先を通して伝わってくる。


 それでも構わない。


 触れた瞬間、何かが変わるわけでもない。


 ただ確かなことは、目の前にいるレオノールがクラウディオにとって特別な存在だということ。


「……苦しいか?」


「はい。とっても」


 直視を避けるためか、レオノールは目を瞑って呼吸を整えていた。


 前向きな姿勢はありがたい。


「……俺もだ」


 自分の中の逃げ出したい衝動と戦っているレオノールを前にして、またしてもフフッと失笑が漏れた。


「これからはゆっくりやって行こう。互いに知らないことが多いからな。君が俺に恋をしてるかどうかも、時間をかけて確かめてくれればいい」


「私が元から好きだったのは譲れませんし、いまいちよくわからないけど、クラウディオ様の言葉がほんとなら」


 その吐息がふと震えを帯びる。 


 レオノールは恐る恐る目を開けた。


「こんなに嬉しいことはないので、しっ、死ぬ気で頑張ります」


 物騒な宣言と共にクラウディオと視線が重なった。


 その瞬間、微かに笑みを浮かべる。


「良かった。それなら一緒に王都へ戻ろう。戻って……続きをしよう。デートの」


 クラウディオは、長くはばかっていた単語を自ら口にした。


 本当ならレオノールの手を取って、馬上まで導くまでが男性のエスコートだ。


 しかしレオノールは、当然ながら自分で馬上に収まった。


 そっと肩を支えるまでしかできずに残念だ。


 だが2人とも似た者同士なら、ゆっくりと距離を縮めていければいい。


 クラウディオはそう考えていたが、現実は往々にして思い通りにはならない。


 王都に戻った2人を待っていたのは、セレスからの緊急連絡だった。



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