表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「私に愛まで望むとは、強欲な女め」と罵られたレオノール妃の白い結婚  作者: きぬがやあきら


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/9

可愛い悪戯 1

 その日のうちに、レオノールの身体(しんたい)は西の棟に移された。


 西の棟は東の塔と違い、完全に主塔から独立している。


 王太子に与えられた居住空間で、レオノールはクラウディオと生活を共にする。


 この、静かな二階建ての館には、生活に必要な物はなんでも揃っていた。


 新婚夫婦に与えられた離れのようなものだろうか。


 ただ、王城の中心は主塔であるため、常駐しているのは必要最低限の使用人だけだった。


 衛兵も控えてはいるものの、主塔に比べて人の気配は薄い。


 クラウディオの意向か、華美な雰囲気は何処にもない。どちらかと言えば簡素で落ち着いた趣だ。


 王族としての格式を保ちながらも、どこか隔離された空気が漂っていた。


 夜――レオノールは、隣室である王太子の居室に耳を澄ませた。


 聞こえるのは、ひとり分の足音だけ。


 夜具が軋む音、ページをめくる気配、時折カーテンが揺れる音もある。


 誰かを招いた様子はまるでないし、他所へ向かう気配も感じられなかった。


 それでも、二人の部屋を繋ぐはずの部屋の内扉には、きっちりと鍵が掛けられている。


 翌朝は、大人しく言いつけを守って、侍女が来るまで部屋で待った。


「レオノール様のお世話を申しつかりました、シャヘルと申します。お召替え後に朝食のご案内を致します」


 シャヘルと名乗った侍女は若年に見えた。

 明らかにレオノールより若い。


「まあ、なんて硬いお(ぐし)でしょう。今まで手入れはなさらなかったのですか」


 ツンと澄ました表情と、顎を突き出し、こちらをどうにか見下そうとする願望が透けている。


 こ憎らしい、から一周回って可愛らしい。


 小柄な身体に黒髪をきちっと纏めているから余計に小さく見える。


 どこぞの高位貴族の子女だろう。


 得体の知れない元平民に仕えるなんて屈辱だとでも言いたげだ。


「したこと、ないね。結婚が決まってから髪伸ばし始めたくらいで。そんなに硬いかな?」


 髪の毛の手入れなど、結婚が決まるまで、したことがない。


 旅の途中は近所の水場で洗ったら、洗いっぱなし。


 洗わない日が続くこともザラだった。


「用意されているドレスのサイズが合いませんので、別の服でもよろしいですか」


 身長もさることながら、骨格にも恵まれたレオノールの体型は一般女性と比較にならない。


 シャヘルの言は一理あるものの、しかし結婚式に用意されたドレスはピッタリだった。


 嫁入りにかかる支度の一切は、王家の側で整えてくれた。


 レオノールの出自は庶民中の庶民で、養父母は穀物や薬草やらを育てる傍らで飲食店を営んでいた。


 “家業”と呼べるような職はなく、できる事は何でもして日々の糧を得ていた。


 家格が釣り合わないどころの問題でなく、輿入れのためのまともな知識すら持ち合わせない家庭だ。


 だから、普通なら「王子と結婚したい」なんて願望は抱きもしないはずなのだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ