表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「私に愛まで望むとは、強欲な女め」と罵られたレオノール妃の白い結婚  作者: きぬがやあきら


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/10

忍び寄る悪意 4

「誰がお前の心配などするものか! お前の郷里ではどうか知らんが、女が寝巻き姿で他人前に出るなど狂気の沙汰だ。狂人として幽閉されたくなければ二度とするな」


 王太子たる者、いつでも泰然自若として、冷静でいなければならない。


 クラウディオはそう教えられ、いつでも実践してきた。


 だが、このレオノールの前だけは別だ。どうにも怒りを堪えられない。


「ならまずは誰かに服を持ってきてもらわないと。それくらいは、探しに行っても?」


「く……! 俺が呼んでくる! 部屋から一歩も出るなよ」


 何故この俺が従僕のような雑用を。


 更なる不満が噴出しかかったが、すんでのところで飲み込んだ。


 口惜しいがレオノールの主張は正しい。


 納得はしていなくとも、レオノールはクラウディオの正妃だ。


 クラディオが避けるのは自由だが、妃としての扱いが必要だ。


「ありがとうございます。クラウディオ様」


 満足そうな謝辞を背中に受けながら、クラウディオは塔を降りた。


 不可思議ながら、今現在この塔にはクラウディオたちしかいなかった。


 階下は主塔と回廊で繋がっているとはいえ、警備兵が一人もいないのは考えられない。


(俺が塔を降りたせいか……? しかし勝手に持ち場を離れるなど、あり得ない)


 塔を降り、主塔へ続く回廊へ足を踏み入れた瞬間、クラウディオはさらに眉根を寄せた。


 気配が薄い。守備の気配りがまるでない。人気のない倉庫のようだ。


(静かすぎる。あり得んな)


 普段は使用されずとも、昨晩は特別な日だ。


 二人以上の警備兵が常駐し、侍女も控えるよう定められていたはずだった。


「おい、誰かいないか」


 声を張ったが応じる者はいない。


 回廊の先の扉を開くと、ようやく囁く程度の人の声が耳に入った。


 階段を足早に駆け上がり、2階の廊下でようやく給仕用の扉の前で侍女の一人を見つけた。


 こちらに気づいた侍女が慌てて膝を折る。


「東の塔の担当は何処へ行った。もぬけの殻だぞ」


「申し訳ありません、殿下……恐らく、別の階の点検に――」


「余計な言い訳は要らん。今すぐ、妃の衣を持って塔へ上がれ」


 凍てつくような声に、侍女は青ざめて立ち去った。


 レオノールにやり込められた分が重なり、過分な怒気を孕んでいる。


 クラウディオは額に手を当てる。


(警備が空になるなど前代未聞だ。誰かが指示を誤ったか、それとも……)


 内側の誰かが、意図して動いたのでは。


 そんな考えが脳裏を掠める。


 クラウディオがレオノールを疎んじれば、多かれ少なかれ影響があるだろうと予想はついた。


 だが、家人が、王太子妃を疎かに扱うなど論外だ。


(近衛の指揮は……ベラスコ公の管轄だったか。場内の警備体制は今後、俺が直に掌握する。二度と、こんな失態は許さん)


 冷たい怒りを胸に、クラウディオは静かに踵を返した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ