デート/クラウディオ視点 3
だが、動揺を表に出すまいと努める。
確かにクラウディオは効率を重んじる。
効率の良い方法を”正攻法”とするならば、選択肢は限られている。
誰から指摘を受けた経験もないが、身に覚えがあると言えばある。
しかし例えその推察が正しくても、レオノールには指摘されたくない。
「それはどうだろうな。君は大して俺を知らないはずだ」
「知り合ってから日は浅いですけど、仕事柄たくさんの人と知り合うので。割とわかるんです。図星でしょう?」
仕事柄、と根拠を語られれば、また一歩クラウディオは追い詰められる。
これもまた一理ある。
クラウディオは普段から大人数を束ねる指揮者だし、先のように大人数を接待する機会も少なくない。
そのうちのほとんどを、顔見知り程度には把握するよう努めているが、逆にそれ以上に親しくなることはない。
それに比べたら、レオノールはこの性格だ。
行く先々で大勢と関わり、交友を結んでいるはずだ。そういう意味では、他者を見る目が養われているかもしれない。
「……よく知りもしないで決めつけられるのは心外だ」
「それもそうですね。じゃあ、たくさん教えてください。クラウディオ様のこと、もっと知りたいです」
ほらまた、こうやって。
周りの人間を自分の世界に巻き込もうとする。
素直に認められずに言葉を濁したのに、レオノールは意にも介さず、にっこりとクラウディオに微笑みかける。
まっすぐにクラウディオの魂を捉える強い視線は、この世の汚泥を知らぬ純粋さを秘めているようだ。
強い光はこの世の美醜も劣等感も関係なく平等に照らすのか。
眩しいのに、目を逸らすのに、クラウディオは苦心する。
レオノールはこれで裏表がないのだから、タチが悪い。
自分だけが些事に囚われる愚か者だと突きつけられる気分だ。
「レオノールが、そう望むなら……」
「良かった。クラウディオ様も、知りたいことがあれば何でも聞いてください。そう考えると今日っておあつらえ向きですね。2人きりですし、のんびりできるし」
ドキッ
”おあつらえ向き”
ズバズバと、レオノールは真っ向から切り込んでくるので心臓に悪い。
そうだ、今日は外で息抜きをしたいレオノールと、レオノールを理解したいクラウディオの利害を一致させ、作り出した機会だ。
悪意はないが、恣意を悟られてはバツが悪い。
見抜かれてはたまらないので、クラウディオは目を逸らしたままミルクをあおった。
絞ったばかりのミルクは新鮮で香り高い。
「あ、ねえ。これってアレみたいですよね。2人で街を散策なんて、まるで”デート”みたい……」
だが、生憎と味を楽しむ余裕はなかった。
袖を引かれ、やむなく視線をレオノールに戻す。
レオノールはきゃっきゃと無邪気そうにクラウディオに笑いかけた。
弧を描いていた目がクラウディオのそれとかち合うと、ひゅっと息を呑むように真顔に戻る。
途端に横一線、レオノールの頬に赤みが走った。




