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「私に愛まで望むとは、強欲な女め」と罵られたレオノール妃の白い結婚  作者: きぬがやあきら


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3/8

プロローグ 3

 寝台から離れたその場所には、深紅のテーブルクロスがかけられた、丸い大理石のテーブルがある。


 銀の盆の上に黄金縁のグラスとワインボトルが対をなして並び、その脇には契りを象徴するように深紅と白の薔薇が一輪ずつ、生けられていた。


 グラスのすぐ横に置かれたワインボトルに手を伸ばすと、クラウディオは流れるような手捌きでワインを注ぐ。


「あ、それは私が」


 契りの盃にワインを注ぐのは妻の役目だ。


 身支度をしてくれた女官長からはそう聞かされていた。


 手を伸ばして駆け寄ろうとするも、あっという間にグラスをあおったかと思うと、クラウディオはワインをすっかり飲み干していた。


「これで、義務は果たした。後はどうとでも好きにするが良い」


 興奮のあまりか、はぁっと息を継ぎ、口元を手の甲で乱雑に拭う。


「今からどこへ行くのです? こんな時間に」


 割れるのではと危惧するほど乱暴にグラスを置くと、クラウディオは真っ直ぐに扉へ向かう。


 レオノールはどうにかガウンの裾を掴んで、懸命に呼び止めた。


 普通の花嫁なら、振り払われて終わり。の細やかな抵抗だったろう。


 だが、悲しいかな、レオノールの剛力さは尋常でなかった。


 払われた手はびくともせず、ガウンを掴まれたままクラウディオは前進した。


 その結果、後ろに引かれたガウンだけが大きくはだけ、生身の肌が剥き出しになった。


「何の真似だ、恥を知れ!」


「わあ、違うんです。ごめんなさい!」


 レオノールは咄嗟に掌を開いたが、その目は夜闇に晒された裸体をしっかり捕えていた。


「つくづく、破廉恥な女め!」


 バタン!


 片手で胸元を掻き合わせ、恥じらうような格好で、クラウディオは寝室を去った。


 余計な抵抗が、油に火を注ぐ結果となってしまった。


(もういない。本当に行っちゃった……)


 閉じられた扉を薄く開いて外を見回しても、既にクラウディオの姿はない。


 廊下の端に立っている護衛とうっかり目が合った気がして、レオノールは薄笑いを浮かべつつ首を引っ込めた。


 やむを得ず寝室の中心まで戻るが、何をどうすることもできない。


 クラウディオには戻り、休める部屋があるだろうが、レオノールにはない。


 明日になれば、誰かがレオノールの居場所へ案内してくれる。


 けれど王城(ここ)はあくまで嫁ぎ先であって、全く知見のない場所だ。


 この部屋で夜を明かす他にない。


 何気なく頭を巡らせれば、薄いチュールを重ねたような天蓋から、広々としたベッドが透けて見える。


 純白の絹のシーツと金糸の刺繍が施された枕が二つ、蝋燭の薄明かりにぼんやりと浮かび上がっていた。


 広すぎるベッドに一人で入る気にはなれず、テーブル脇のカウチに腰掛けた。


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