表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「私に愛まで望むとは、強欲な女め」と罵られたレオノール妃の白い結婚  作者: きぬがやあきら


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/7

プロローグ 2

 豊満とまではいかないが、肉付きにも自信がある。


 国王陛下は確かに仰った。


「魔王オーグレイルを討伐した暁には望みのものを与える」と。


 レオノールはこの国で言うところの“勇者”だ。


 1000年に渡り人間の暮らしを脅かしていた魔王を倒し、平和をもたらした。


 勇者が国を救った暁には、王女を妻として与える。


 レオノールが持つ記憶の人生の中では、割とポピュラーな褒美だったと思う。


 しかしながら記憶は朧気で、確たる証はない。


 わかっていたのは、このまま黙って気持ちを無視したら、一生後悔するであろうこと。


 だから勢いに任せて口にした。


 クラウディオは黙ったまま不快そうに睨め付けるのみだった。


 なので、根負けしたレオノールが言葉を続ける。


「だから、ダメもとで申し上げたんです。貴方は美しいし、強そうだし、こんな機会二度とないと思って……。そんな、虫ケラを見るような目を向けるなら、どうしてもっと早く拒否しなかったのですか? もう儀式は全て済んでしまったのに」


「……一度発せられた宣言を取り消せば、臣民の信頼が揺らぐ」


 無表情・無反応を貫いていたクラウディオの瞳が、ようやく感情を映し出した。


 その視線には、冷たい憎しみと怒りが滲んでいた。


「俺は、この国の未来を担う王子だ。外交の駒として、己の意思を殺す覚悟くらいはあった。だが、それでも——戦場帰りの女丈夫が望んだからといって、その夜伽の褒美として俺を与えるなど、屈辱にもほどがある。俺がそう考えるとは……露ほども思わなかったか」


 クラウディオの影が、僅かに揺れた。


 ふと視線を落とすと、拳を握り締めた右腕がプルプルと震えている。


 そこで、レオノールはハッと気がついた。


 褒賞の授与式でも、成婚のパレードもずっと無表情を貫いていたこの人が、ずっと溜め込んでいた感情の大きさに。


 無表情なのではない、努めて感情を殺していたのだと。


 意に染まぬ婚姻だったが、責務を果たすために受け入れた。


(そうか、この人は……真面目なんだ。それもすごく。だから断れなかったのか。それで、とんでもない願いを口にした私を恨んだわけね。そんな配慮もできない女と同衾なんかできるか、ましてや愛するなど論外! と言いたいのか……)


 材料が揃った今、レオノールはクラウディオの胸の内をするすると読み解いた。


 なるほど。それなら何故、この後に及んでクラウディオが“愛まで望むな“と拒絶したのか。理由は頷ける。


「そうですね。……しかしもう、婚姻は成立してしまったのだし、前向きに努力をするほうが建設的なのでは」


 相手の意を汲み、理解できるところは同意する。


 魔王討伐の道中で身につけたその能力は、パーティメンバーを導くのに適していた。


 しかし、この場での正論は悪手の最たるものだ。


「自分の非は棚に上げて、俺には努力をしろと? 想像を絶する図々しさよ」


 クラウディオは鼻を鳴らし、嘲るような笑みを浮かべた。


 見下ろされたら、ゾッとするほど美しく、畏敬の念をいただいたかもしれない。


 だが、残念ながら身長差はほとんどない。


 クラウディオは忌々しそうに一瞥してから、ずかずかと大股で据え置かれた丸テーブルに歩み寄る。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ