助っ人/セレス視点 2
そんな中で、クラウディオのレオノールに対する冷たい仕打ちに、どれだけの怒りを覚えたか。
……もしも、レオノールが少しでも音を上げたなら、連れ去る覚悟はいつでもあった。
しかし、冷たくされてもレオノールは、堪える様子もなく過ごしていた。
むしろ攻略を楽しんでいる節まであった。
それでも自分にとって大切な相手が邪険に扱われる様子は、見ていて気持ちの良いものではない。
面白くないながらも見守っていると、意外な転機が訪れた。
毒に侵され錯乱したレオノールを庇って、クラウディオが傷を負った。
レオノールをただの政略結婚の相手と思っているなら、絶対にしない行動だ。
普通の人間ならまず、錯乱状態に怯む。
それに負傷していてもレオノールはあの通りの体格だし、腕力も凄まじい。
”毒は効かない”と聞かされているなら、自傷行為が繰り返されようと「いずれは回復する」と放置してもおかしくなかった。
けれど結局、クラウディオはレオノールの容体が落ち着くまで、傍を離れなかった。
そこでセレスの淡い希望は潰えたのだ。
あとは自分の想いが風化する時を待つだけだったのに……。
全く、あのノーキエの王子は余計なことをしてくれたものだ。
「殿下が早々に手を打ってくださったお陰です。近くまで来ていたので、予定を早めてこちらへ向かってくれるそうです」
「それは有難い。時間を問わずこの部屋に通してもらえるよう、門兵に伝えておこう」
それ以降のクラウディオの働きには目を見張るものがあった。
セレスはまだ新米騎士でもあるし、国事の中枢にいるクラウディオから詳細を聞く立場になかった。
だが、指揮系統を見る限り、騎士団の全権を握っているのはクラウディオだとわかった。
レオノールの容体を悟らせぬよう、使節団の護衛を30人余り選定し、指揮官を副団長エルネスト・ガライに任命した。
その一団が行方知れずになり、ノーキエと交渉を重ねながら救助隊も編成しようとした矢先、ノーキエからの要求が飛び込んだ。
”勇者を遣わせろ”
何の茶番だと鼻白む要求に、セレスも憤慨した。
その間に、主要ポストに就く貴族の一部から批判の声が上がった。
国家の運営に関する最終判断は国王の手に委ねられている。
とはいえ、実質的に重要な決断を下しているのはクラウディオだった。
国王は近いうちに王位を継承する心積もりがあるのだろう。
クラウディオが指示を仰ぎ、国王が判断を下す流れとなっていたし、クラウディオは優秀な後継者として頭角を表していたため、これまでは誰からも異論は出なかった。
しかし、今回は違う。
クラウディオとレオノールの婚姻をよく思わない集団が、こぞって主張した。
”早期に王太子妃を派遣せよ。何のために勇者を娶ったのか”と厳しい批判を掲げ、邪魔者の排斥をもくろんだ。




