貴方の妃でいるために 1
「でも一人で来いと言っていた。アイツは怪しげな魔法を使えるようになってるし、騎士団が人質に囚われている以上、要求は呑んだほうが無難です。大丈夫ですよ、私はちょっとやそっとじゃ死にません。知ってるでしょう? 毒を盛られたってへっちゃらです」
レオノールは敢えて軽い口調で答えた。
正直なところ、魔法に対しての耐性がどれくらいのものか、レオノールは知らない。
魔法使いと戦闘した経験はないし、セレスと実験まがいの試みはしなかった。
「そうではない。何度も言うがあいつの目的は君だ。……この意味がわかるか?」
これまで再三、レオノールをノーキエに派遣しろと迫られていたのだから、レオノールが目的なことくらいは分かる。
だが、クラウディオの言い方は含みがある。
レオノールを呼びつけて、何をさせたいのか。
「分からないのだろう? ならば余計に行かせるわけにはいかない」
クラウディオは不機嫌そうに語気を強める。
「だったら教えてください。今は1秒も惜しいのに。ここで問答している暇はありません」
レオノールが折れないからか。
気が立つ理由は理解できなくもないが、どこか馬鹿にされた気がしてレオノールも面白くない。
「ああそうだ。すぐにでも対策を講じ出発しなければならない。だから君は、ここでおとなしくしていると約束してくれ」
「どうしてそうなるんですか? 私が行かなきゃみんな殺されますよ。貴方の親友も!」
拘束を緩めてくれない手を、今度は少しだけ強く握った。
アルヴァロの定めた期限は3日後の日没まで。
王宮が置かれるノーキエの首都バルロウまでの道のりはおよそ250km、移動に慣れた騎士たちでも5日はかかる道のりだ。
レオノールが単騎で駆ければもう少し短縮はできるが、3日では間に合うかどうかも際どい。
「それでもだ! アルヴァロは君を単身でおびき寄せ、己が物にしようとしている。思えば奴はエルグランに滞在中から君に執着していた。奴は単に気が触れただけでなく、魔力を得て好機とばかりに君を狙いに来たんだ」
何を言われようがレオノールの意見は変わらない。
一刻も早くエルグランを発とうと考えていた。
けれどクラウディオの剣幕と内容に、目が点になった。
「己が物って……自分の女にしようって意味で? アイツが、そういう目で私を見てたって言うんですか!? うまいこと従えて、働かせようとしてるんじゃなくて?」
寝耳に水で、見開いた目がこぼれそうだ。




