人質と引き換えに 3
”頭の固い王太子”がクラウディオを指すなら、既に二人は接触していたことになる。
「アルヴァロ王子は、消息不明じゃなかったんですか?」
少なくとも、レオノールはそう聞かされていた。
「……ノーキエからは、再三君を派遣するようにとの要請があった」
「そうだったんですか? ……それも知りませんでした。教えてくれれば」
「使節団の一行が事故で消えたなら、自国からも救助隊を派遣するのが常識だ。なのにノーキエは君を寄越せとの一点張りで、どうにも不自然さを感じていた。それに、こちらに非がない中言われるがままに要求に応じれば国の威信に関わる。だがまさか、こんなことが起きていたとは」
クラウディオは躊躇いがちに口を開く。
救出活動が難航しているのは当然知っていた。
だから、レオノールは自分を派遣して欲しいとクラウディオに直談判をしに向かった。
だが、遅々として進まない現状の裏にそんな事情があったとは。
「察しが良くて何よりだ。確かに私は帰国の途中でマナの中に落ちた……。一見すれば不幸な事故だが、私はそれがきっかけで目覚めたのだ。我が内に眠る真の力にな!」
アルヴァロは満足気に笑うと、右手を高々と掲げた。
まるでその右手が、この世の全てを支配するとでも言うように。
「聞いたことないけど、マナに落ちてハイになった? 普通なら死んでるけど」
レオノールは呆れたように両手を上げた。
マナには世界の至るところに存在する、純粋なるエネルギーを生み出す源だ。
量に差はあれど、どんな人間もマナを保有している。
マナを消費して肉体を強化するタイプはレオノールのような戦士に向いている。
体外で操る才能があれば魔法を使える。だが、それらは天賦の才だ。
後天的に会得するなど、あり得ないのが常識だ。
マナ溜まりはマナが濃厚な泉と化したものだが、高エネルギーを直接浴びたら最後、待っているのは死しかない。
運よく命を取り留めても、意思の疎通も図れず、生きる屍になる……レオノールの知る限りではそれが通例だった。
「信じられないのも、無理はない。以前の私は非力だったからな。まあ、百聞は一見にしかずだ」
鏡の中のアルヴァロはとても上機嫌だった。
何がおかしいのか、クツクツと笑いながら左手の指を鳴らすと、鏡からフッとアルヴァロの姿が消える。
代わりに映し出された光景に、レオノールとクラウディオは驚愕する。
「エルネスト!!」
「ガライ卿!? それに、騎士団の皆……!?」
「どうなっている!? 何が目的なんだ!」
そこに映し出された人物は、負傷したエルネストと揃いの騎士服を着た騎士団のメンバーだった。
レオノールの見知った顔もある。
いずれも憔悴した様子で、全員が縄で拘束されていた。
周囲は薄暗く、まるで牢にでも押し込められているようだ。
「簡潔に言おう。彼らを解放して欲しければノーキエに来い、レオノール」




