可愛い悪戯 2
けれどそのような常識を、持ち前の豪胆さと快活な性格が打ち破った。
どうしてもあの男性が欲しかったから、ダメ元でもお願いした。
1週間ほど協議がなされ、結果的に利害が一致したから、レオノールは迎え入れられた。
皇后陛下が二人の結婚に前向きであった点も、レオノールには幸いだった。
皇后は勇者の血を王家に迎え入れることを喜んだ。
他にも救国の女神として好意的に受け止めてくれる人々のいる一方で、図々しい、とか恥知らずとか、その他諸々の批判。
批判なんて生易しい言葉で括れないほどの罵詈雑言が飛び交っているのも知っている。
シャヘルは後者らしい。
レオノールは椅子の背もたれに腕を載せて振り返る。
ツンツンした少女が、どんな風に自分を困らせようとしているのか、とても興味がある。
「いいよ。どんなの?」
尋ねると、フッ、と嘲るような笑みが返ってくる。
シャヘルがクローゼットを覗きもせずに差し出したのは、淡いピンクに安っぽいレースが縫い付けられた、寸胴のワンピースだった。
ドレスとは名ばかりだ。
「こちらが、よろしいいかと。南部名産の織布を使用したドレスです。ゆったりとした着心地で中産階級の間で人気を博しております。王都でも流行しつつあるデザインですよ。もっとも、お妃様のご出身ではこういった流行もご存じないかと存じますが」
確かに、レオノールはファッションに関する流行には疎い。
しかし、旅の途中で南部には立ち寄った。
市場で売られていた布や既製服くらいは見かけている。
南部織は原料の繊維が固く、通気性が良い代わりに、やや肌触りが悪い。
当地では好まれ、誰もが身につけていると言っても過言ではない。
だが季節によって寒気の入る王都で流行するとは思えなかった。
十中八九、レオノールに対する嫌がらせのためのセレクトに違いない。
(わざわざ探して仕入れたのか、それとも《《このため》》に布から仕立てたのか……)
どちらにせよ、そのための労力を考えると感心する。
「お気に召されたようで何よりです。では、お召替えを」
己が策に掛かったと、シャヘルは口の端をわずかに歪め、笑いを噛み殺すような表情をしていた。
それは、獲物を仕留めたと確信した捕食者の顔だ。
くすんだピンクは、健康的に焼けたレオノールの肌の色に合わない。
気に入ってもいないけれど、シャヘルが絶対的に成功を確信した顔をしているから、まあいいかと受け入れた。
思い通りに行っていると信じてくれたほうが御し易い。
「昨日の服はどこへやったの? あれならサイズは問題ないはずだけど」
「あちらは洗い場へ回しております。それに王太子妃ともあろう方が二日続けて同じ服をお召しになっては笑われてしまいますわ。後学のためにも覚えておいてくださいませ」




