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―Prologue―



「あっくん、寒くない?」

 そう言うと、母は両手でぼくをギュッと胸の中に抱き寄せた。


 蒼黒い山腹さんぷくの闇の中、見上げた満天の星空の中に、一際ひときわ美しく輝く星を見た。


「うん、平気。お母さんはとっても温かいよ」

「そう、よかった・・・」

 いつもと変わらぬやさしい笑顔だった。だけどそれは、ぼくが生涯最後に見た母の笑顔だった。

 安心したぼくは目を閉じ、その胸の中で、心地よい眠りに落ちていった。大好きな母のにおいと、暖かな温もりを感じながら。


    


「おおい! いたぞぉ、こっちだぁ‼」

  

 飛び交う救助隊員達の声で目が醒めた。気が付くと夜は明け、太陽はすでに高く昇っていた。

 けれど、ゆうべ感じた母の温もりを、なぜだかぼくは感じることが出来なかった。


「ああっ、ダメだ、母親の方は息がない!」

「子供の方はまだ生きてるぞっ‼」   


 ――おおっ!


 声と共に誰かの手が伸びてきて、母の亡骸なきがらからゆっくりとぼくを引き離し、そのまま高く抱き上げた。その時、天から降り注ぐの光が、まだ寝惚ねぼけまなこのぼくの目に妙にまぶしかった。


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