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『白き船(最後の夢)』

掲載日:2025/12/28

とりあえず読んでみてください。

 

ひとつ 呼吸が ほどけて

胸の 灯火が

静かに 海へと沈む

 

まだ 光は 消えていない

まぶたの裏で

かすかに 揺れ

 


遠い 記憶の 岸辺から

白い舟が

音もなく

近づいてくる

 

声は もう 届かない

 

けれど

風に ほどけた

涙のぬくもりが

 

まだ名のない 名を

そっと

しかし

強く 抱きしめていた

 

そのとき わたしは 気づいた

 

あの声は

母の声だった

 

忘れていた 

やわらかな音

わたしを 

この世に呼び出した

最初の 祈り

 

かつて わたしが

はじめて 息をしたとき

母は 泣いていた

 

その涙のぬくもりが

いま わたしの頬を 伝っている

 

それは 

わたしの涙だった

けれど たしかに

あのときの 母の涙でもあった

 

ふたつの涙が 重なり

ひとつの 祈りになった

 

わたしは

わたしを 離れながら

なお この身に

とどまっていた

 

輪郭は

水に映る

星のかけらのように ほどけ

 

世界は

やわらかな 闇に

包まれていく


 

それは 終わりではなく

ただ 還ることだった

 

はじまりよりも

さらに古い

 

夜の根にある

ひかりのほうへ

 

白き舟に 身をあずけ

 

名もなき川を

わたってゆく

 


読んでくださった方々、ありがとうございました。

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