表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/8

攻略6

まただ。またあの景色に戻ってしまった。

六年間も見た噴水や校舎。まだ幼さの残る学友たち。そして今回で三回目となる殿下とお嬢のやり取り。


みんなが入学式のために、当初あたしが体育館と勘違いしていた講堂へと向かっている。でもあそこに行ったらまたあの学園生活がスタートしてしまう。殺される。

死ぬ瞬間はいつだって覚えている。不思議と痛みは無かったけど、加速する意識の中、徐々に全てが崩れていくかのような感覚。マジで無理。本当にもう味わいたくない。



気がつくと学園から逃げ出していた。



無我夢中で駆け抜ける。気がつくと舗装された道からとっくに外れ、鬱蒼と草木の生い茂ったところにいた。無意識にかけていた身体強化の魔法のおかげで、半日ほど走ってもあまり疲れないし、学園なんて全く見えないほど遠くに来ていた。


「……パパ、ママ。あたし、何か悪いことしたかなぁ」


ここがどこかも分からなく、多分誰もいないだろうと思ったら自然とそんな言葉が漏れた。ヤバい、泣ける。本当に、何で死ぬような目に遭わなきゃならないんだろう……


この世界に来てから既に六年。あの頃よりはだいぶん大人になった気がする。でも振り出しに戻るたびに、心が体に引っ張られるように15歳の私に戻ってしまう。あたしは17歳なのに。


でも悪いことか。私にとっての両親は、あたしが学園から逃亡した事によりおそらく捕まるだろう。

あたしだって六年間学園で過ごして、何となく私は特別なんだって事ぐらいわかる。そして私を学園に推薦したのは間違いなく王族だ。そんな王族の顔を潰してしまった以上、タダでは済まないはず。

そう思えば、報いを受けるべし悪行を行なったとも言える。でも因果逆じゃん?


怒りやら悲しみやら情けなさやら、もう心の中が本当にぐちゃぐちゃ。何をすればいいの?なんでこんな目に遭うの……


「誰か……助けて……」


「ほう、これはこれは珍しい。こんな辺鄙なところにお嬢さんがおるわい」


本当に気配なんて全くしなかった。


泣き腫らした目をあげると、いつのまにか仙人みたいなおじいちゃんが佇んでいた。長い総白髪を後ろで結わって、これまた白い髭は胸の辺りまで伸びていた。しわくちゃの顔をニカッと笑わせて、何故だか不思議と警戒心を抱けない。


「お嬢さんその制服、ハイランド王立学園の生徒さんか。ここからは随分と距離があるもんだが、もしかして迷い込んだかいな」


「迷い込んだですか。ある意味ではそうかもしれません。逃げ出して、どこともしれず走り抜け、気がつくとここに居ました。ご迷惑でしたらすぐに去ります」


「走り抜け….…。つかぬことをお伺いするが、ここへはどれくらいの時間をかけて来たのかのう」


「さあ、今朝から走って、半日ほどでしょうか」


「半日か。学園との距離を半日……。相当な才を持ってるとお見受けするが、なにから逃げ出したというのかいな」


何だろう、おじいさんの目つきが変わった気がした。しかし半日走ったって情報で何の才能がわかるのさ。駅伝?襷に青春をかけろってか。

でもまあ、なんだか何話しても良いかなって気もする。自棄になってるのかもしれないし、話しても信じられる内容じゃないし。


どうせ知らない人だしと、これまでの経緯を話してみた。


庶民なのに学園に入学することになったこと。

何故か殿下やその取り巻き達と仲良くなったこと。

お嬢が暴走して殺されたこと。

何故か一年生からやり直しとなったこと。

仲良くならないよう努めたけど、結局無駄だったこと。

そしてまた違う人に殺されたこと。


一応違う世界の記憶がある事とかは伏せておいた。なんかややこしくなりそうだし。


神妙な面持ちで、時折うんうんと頷いたおじいさんは、あたしの話を全部ちゃんと聞いてくれた。

なんか、我ながらだいぶん無茶な話だよなぁ。でも話してすごく楽になった。


「おじいさん、聞いてくれてありがとう。私、学園に戻ってみます。初日に欠席くらいならまだそんなに重いお咎めも無いでしょうし」


そういってお辞儀をし、もと来た道を戻ろうとした時、ガッと肩を掴まれた。


「そう焦らんでもよい。どうせ今のままでは学園に戻ったところで解決策などないのだ。ならばいっそのこと、ここで強くなっていかないか」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ