第十話
午後、黒江詩の姿はカラーイッシュのメンバーと過ごすシェアハウスにはなかった。
彼が今いるのは、マンションの一室の扉の前にあった。その場所とは彼の姉である黒江朝日が住んでいる一室であった。
なぜ彼がこの部屋の前にいるのかというと、もともとの予定で午後から姉と買い物をするという事になっていたので、姉を向かいに来たからである。
「お姉ちゃんー、来たよー。」
扉を三回ノックしながら同時に聞いたが返事がない。
今日買い物をすることは前日に連絡していたから、忘れているという事はないけど、もう一度連絡してみるか。
そうして何度かかけ直しているとついに電話がつながった。
「・・もし・・もし。誰・・ですか。」
「もしもし、お姉ちゃん。詩だよ。もしかして先まで寝てた?」
「ふああああ~、そうね、寝てたわ。昨日は、遅くまでゲームしてたから。それでどうしたの、連絡してくるなんて?」
どうやら、姉はまだ寝起きのせいで今日買い物をすることを忘れているようである。
「あのね、昨日買い物を一緒にするって連絡したじゃん。だから、今部屋の前の扉にいるんだけど、もしかしてまだ準備できてない感じかな?」
「あっ。やっば!すぐ準備するから待ってて!」
そう言って電話を切ると、準備を始めたようだ。部屋の中からどたどたとした音が聞こえてくるからそんなに時間はかからないだろう。少しだけ待っていると、扉が開いた。
「待たせてごめん、いますぐ買いに行こうか。」
出てきた姉の姿は双子の自分であっても見惚れるほどきれいだった。肌は色白で髪は腰にかかるほど長く、きめ細やかで手を通すとさらさらと触感が簡単に想像できる髪である。
「もう、何で昨日遅くまでゲームしてたの?昨日買い物に行くって連絡したはずだよ。」
「ごめんごめん。友達とやってたらから、気づいたら遅くまでやっていた状態だったんだ。」
「もう、分かったよ。今度から気を付けてよね。」
「はーい。」
そういって、二人は買い物へと出かけていくのだった。
二人が買い物に出かけたのは色々なお店が集まっている総合モールである。
そんなところになぜ来たのかと言えば、簡単に言えば服探しである。双子という事が関係するのか二人の服の趣味趣向は同じような感じであるため、お互いの服の交換も簡単にできる二人はお互いに着る服を選びに来たのである。
そんな二人は今女物の服を選んでいる途中であった。
「こっちとかはどうかな?このワンピースに中に黒色の短パンとかいい感じじゃないかな。」
「こっちの方がいいわよ。この肩を出したトップスにフリルが多いスカートでかわいさを表現するのよ。」
こんな感じで、ふたりはお互いを着せ替え人形のようにして満喫したのであった。
「ふう~、いろいろ買っちゃったね。」
姉の言う通り、僕たちは一通り夏のアイテムを買うことが出来た。しかし、予想以上に色々あったため、多く買ってしまった状態ではあった。そのため、二人はフードコートで休憩しているところである。
「そうね、こんなに買うと思ってなかったから。電車出来ちゃったけど帰りが大変ね。・・・面倒だから帰りはタクシーでも使いましょう。」
「そうだね、そっちの方がいいかも。それよりも少しお腹すいたね。何か小腹に入るものでも買いに行こうか姉さん?」
「確かにそうね、何か簡単なものでも食べたいわね。でも、今回は私がおごるわよ。遅刻した責任もあるんだしね。」
「そう。じゃあお願いね。」
そいって、姉は何かを買いに行き。僕は座って待っているところであった。
そんな待っている僕に二人の男が近づいてきた。
「お姉さん、今暇?」
どうやら、一人でいる所をナンパにしに来たようだ。
「今僕たちすっごい暇なんだけど、僕たちと一緒に遊ばない~?」
「ごめんなさい。今連れを待っているんだよね。だから、どこにも行けなんだよね。」
「そんなこと言わないでさ、お姉さんみたいな人ほったらかしにしている人の方が悪い人だよ。だから、俺たちと一緒にどっか行こうぜ。」
どうやら、僕の容姿から女と勘違いしているようだ。こんなナンパ面倒だしさっさと真実を教えて帰ってもらおう。
「あの~、お兄さんたち勘違いしているみたいなんで言うんですけど・・」
「なになに、勘違いしてるって。聞かせてくれない?」
「そうそう、俺たちはお姉さんと話をしているだけど楽しいのに。何を勘違いしてるのかきになるなあ~」
「お兄さんたち、僕の性別勘違いしてますよ。僕は男ですよ。」
「「はあ、?」」
どうやら、認識出来ていないようだ。もうめんどくさいし、さっさと帰ってくれないかな?
「いいかげん帰ってくれないかな。めんどうなんだけど。」
「いやいや、男なんて何冗談言っているの。こんなにかわいい顔してるのに、あり得ないでしょう。」
「そうだよ、これで男なんて言われたら。俺の見る目がないとしか言いようがないね。」
どうやらあきらめてくれそうにはないみたいだ。どうしようかと考えていると不意に聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「あっ、詩だ。どうかしたのかい。」
「この声、要。」
そこにいたの僕のバンドメンバーでもある黄瀬要であった。
「休みに合うなんて。奇遇だね。それにしても周りの男は何だい?」
どうやら僕が男たち絡まれていることに気づいたみたいだ。
「ナンパだよナンパ。僕が男って説明してもそんなわけないとか言って絡んできたんだよ。」
「そうなんだね。まあ、その容姿をしているなら間違われてもおかしくはないかもね。」
そうなのです、今の彼の姿はパッと見てもさほどの人が女の子だと思うような服装に見た目なのです。
ダボッとした大きめなパーカーで体全体のシルエットは見えずらくなっており、ハーフパンツをはいているため、色白で艶めかしい太ももが丸見えの状態であった。
「言っちゃ悪いけど、その服装じゃ間違われてもしょうがないんじゃないかな。」
「まあ、そうだよね。でもこれが今のお気に入りだからしょうがないじゃん。」
「ちょっとおねえさん。俺たちの話にいきなりはいいてっこないでよ。今俺たちがこの子を飯に誘おうとしてるところなんだから。」
「そうそう、俺たちが先に話してんだから後にしてくれないか。それともお姉さんも一緒に俺たちご飯してくれるの?」
どうやら割入って来た要に対してもナンパしているようだ。もうなんだかめんどくさくなってきた。そう感じていたのが顔に出ていたのか、そのことに気づいた要が動いた。
「お兄さんたち、僕の友達が困ってるみたいだからさ、変わるに僕が少しだけ付き合ってあげるから。ちょっとこっちに来てくれないかい。」
「え、なになにお姉さんが付き合ってくれるの。」
「それいいじゃん、じゃあお願いしよっかな」
「じゃあ、一回ゲーセンの方に来てもらえるかな?」
「ああ、いいぜ。」
「俺も、問題ないぜ。」
そういうと、要はナンパ男二人を連れてゲームセンターの方へ向かっていったのだ。
行く途中でこちらの方に一度顔を向けてウインクをしてきた。ゲーセンに行くという事はこのゲーセンにはあれがあるという事か。
そう思うと、連れていかれた男たりが哀れになって来た。そんなことを考えていると、どうやらクレープを買って戻ってきた姉が見えた。
「おまたせ、何かあったみたいだけど、大丈夫?」
「大丈夫だよ、ただナンパされてただけだから。偶然来ていた友人が助けてくれたから。まあ、相手の男たちが心配だなとは思っているけどね。」
「男たちが心配って、どうしたのよ?」
「ああ、気にしないで。それよりもそのクレープ早く頂戴。」
「わかったわよ、はいこのチョコレートのでも大丈夫だったかしら。」
「大丈夫だよ。じゃあ食べようか。」
「「いただきます」」
そうして二人は、クレープを食べてその後の買い物も楽しんだのだった。