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シャドウダンス4空飛ぶ怪異  作者: 六青ゆーせー
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96音がない

蹴った感じでは確かな重さがあるが、動きは数センチの昆虫程に敏捷だ。


手強い…。


一瞬でサソリは誠を振り返ると、尾の毒針を頭上から落としてきた。


透過と、薄く体を床から反発させ浮かせる、というトリックで、誠はなんとか毒針を逃れた。


影の手でサソリを攻撃するが、その体は影の手の刃も跳ね返す。


敏捷すぎる未来の戦車のようだ。


落とすにも、ここは地上450メートルだった。

地下階がないはずもなく、実際押上駅も地下深くに通っているはずであり、また、これだけの高層建築は地震用のダンパーや様々な設備も、土台と共にあるはずなので、落とすとしたら1キロ近く落とさねばならないだろう。


流石に誠も、自分に可能かどうか判らない。


空に逃げれば追っては来ないだろうが、それではユリや川上、小百合がこの化け物と出会う事になる。

なんとか誠がこれを仕留めるしかなかった。


誠は少年の体を攻撃したが、少年は、その体からサソリを生み出している。

巨大サソリ同様の頑強さだった。


誠は、背後に飛んで距離を取った。


背後から誠を、小サソリが襲ったが、これは偽警官に防がれた。


が、巨大サソリは体重が無いように素早く誠に迫る。


誠は、サソリを落とした。


正確には、片足だけを落とし、透過を停止させた。


床材が、流石に頑強な大サソリの足を切断する。


やったか?


と、思ったが、少年はニヤリと微笑み、


切れた足に小サソリが群がって、新たな足となった。


どうも、切断では、この少年は倒せなさそうだ。


なら、逆はどうだ?


誠は、近くのサソリを、影の手で取ると、少年の体内に透過し、押し入れた。


一瞬、少年は苦しそうな顔をしたが、


「なかなか不愉快な事をする…」


と、余裕の笑顔を見せた。


(誠! 

今のが一番手応えがあったぜ!)


聡太が囁く。


と、なると…。


周りを見回すと、館内放送用のスピーカーが天井にあった。


それをサソリの体内に突っ込んだ。


硬いサソリの殻が、バリンと割れた。


が、すぐに素麺のような繊維が傷口に溢れ、修復する。


一連の戦いで効果があった方法を誠は続けた。


死者の荷物や、靴、ハンドバッグ、帽子、あらゆるものをサソリの体にこじ入れる。


少年は苦痛を顔に表し、大サソリの動きも鈍った。


とにかく影の手を四方に伸ばして、死者の荷物をサソリの体内に投入した。


と…。


大量に入れた中の何が効果を発揮したのかは判らなかったが、少年が苦痛にもがいた。


顔色が青くなり、やがて紫に充血してくる。


大サソリも身をよじった。


少年は吐血し、サソリの体と共に、グシャリと潰れるように丸まった。


(おいおい、誰か毒でも持ってたのか?)


田辺が聞くが、あらゆるものを放り込んでいたので、誰にも、何が少年を殺したのか判らなかった。


(まー、ほら洗剤なんかでも混ぜるな危険、みたいなの、あるじゃん?)


横山が苦し紛れに、何かが組み合わさったのではないか、と仮説を述べた。


(薬なんかでも、結構劇薬、とかあるわよね)


とキャバ嬢アサミ。


確かに、病院帰り、みたいな人が、数ヶ月分の薬をバックに入れていたら、かなり危ないかもしれない。


原因は不明ながら、誠はなんとかサソリ少年を倒し、それと共に回廊のサソリは全て消え失せた。





え、隆也がやられたのか!


カフェで優雅に緑に染まったスカイツリーをみていた白井は驚愕した。


スカイツリーの天辺、いわばラスボスのつもりで配置したメンバーだ。


だが、種を植えるにはいい機会でもあった。

白井は、カフェからテレポートして展望回廊に飛んだ。


あいつか…!


小田桐誠が、隆也の死体を調べていた。

が、死を確認すると、床から落ちるように消えた。


飛べる上に、床抜けも出来るのか!


白井は驚いたが、今は消えてくれて助かった。


白井は、不意さえ打てれば、どんなに強い影繰りでも体を奪える自信はあったが、しかし素の戦闘力が高いわけではない。


あの隆也を倒すほどの影繰りとまともにやり合うのは無料だった。


それより今は隆也にホレポレの実を植えつけ、最強の戦士とするのが先だ。


隆也のためにはスカイウォーカーの実を用意していた。


どんな化学反応が起こるか、楽しみだった。





小百合は入口からスカイツリーに入った。


スカイツリーを草が覆っているのは、まだ一部の人間しか気がついていなかったが、警備員らしい数名が点検にまわっていた。


観光客は、ソラマチを楽しむのに夢中のようだ。

怪獣映画なら、皆、外に逃げようとパニックになるところだが、ソラマチは観光地らしい日常が、まだ続いていた。


エスカレーターもエレベーターも動いていたが、エレベーターは止まったら動きが取れないのでエスカレーターへ乗った。


階段を探すのも面倒だし、導線的にエスカレーターならスカイツリーに直結するはずだ。


どこかで、敵が何かをするのは判っていたが、どこかは判らない。


ソラマチは街とつながった、端的に言えばショピングモールだが、水族館やツリーは、ある意味、大きな密室と言えなくもない。


防犯カメラぐらいはあるのだろうが、そのくらい敵も分かっているだろう。


小百合は数本の髪を伸ばして上階を探った。


どの階も観光客で溢れている。


異常は無さそうね…。


と、思った小百合だが…。


二階に上がり、周囲を見回す。


カップル、親子連れ、男同士…、様々な人間が歩いているが…。


顔は笑顔だ。


が、話し声が全くない。


音が聞こえない類の影なのか、とも思ったが、よく見ると全ての人間が、何も言葉を発していなかった。


ただコンピュータの作った映像のように、笑顔で歩いているだけだ。


芸の細かいことに、時折立ち止まって商品を見たり、互いを見つめたり。


どこかを指さしたりはしている。


だが、何の声も無かった。



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