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シャドウダンス4空飛ぶ怪異  作者: 六青ゆーせー
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集合

「おいおい!

何かってなんなんだ?」


「まだ判りませんが、大規模なテロになる、と予測できます!」


永田は頭を抱えた。


元々日本の内調などは、来日した単独、または数人の問題ある影繰りに対応する、程度の組織なのだ。


誠のように野生種の影繰りが生まれ、争奪戦が起こる、だけでもてんてこまいなのに、無論、野生種の誠ありき、なのだろうが数ヵ月おきに大規模なテロ事件が起こるようになってしまった。


前任の田代が内閣府に食い込んでいなければ、官僚たちの責任のなすりつけ合いで組織がガタガタになっていてもおかしくなかった。


幸い、田代に、今は鳳首相肝いりのリーキー・トールネンもいるため、組織はより大きな基地を得、大規模テロに備えうるよう改編中ではあった。


が、なんにしろ影繰りは少ないのだ。


小学生から大学生まで学生が中心になって戦ってはいるが、実戦経験豊富な大人の影繰り、となると、そうそう呼べるものでもない。


「永田!

顔無しの堤が、来てくれそうだぞ」


アクトレスが珍しく興奮して指令室に入ってきた。


「顔無しか…。

名前は聞いているが、人間的にはどうなんだ?

こっちはガキのお守りみたいなもんだぞ」


アクトレスに人間性を問うのもいかがなものかだが。


「あー、まあ戦場を長年、ウロウロしてた奴だからな。

トチ狂ってはいるが、まあ怒らせなければ大事はないんじゃないか?」


アクトレスも、なぜか誠は可愛いようなので大人しくしているが、長年紛争地帯を選んで生きてきた人間であり、実戦モードになったら大変な騒ぎになる。


「日陰さんが入ってくれれば良いんだけどなぁ…」


ハッ、とアクトレスは笑い。


「あの人は大金持ちだよ。

今は趣味の世界に生きているのさ」


「仕方ない。

堤さんにお願いするか」


オペレーターの中野は、こっそり顔無し、とキーボードに打ち込んだ。


曰く、全身をバラバラに出来る影繰り。

その鼻一つで1個小隊を壊滅させた、と言われている…。


データベースには不穏な文字がまだまだ並んでいたが、


「おい中野!

アクトレスにスカイツリーのあらましを教えてやれ!」


言われ、中野はデータベースを消さざるを得なかった。




「ほれ、ヨシオドールだ」


トー横広場でレディがカードを出すと、ホゥン和也が頭を抱えた。


「それ、やっぱ反則だよな!」


ヨシオドールが少年誌に連載されていたのは五年前になる。

漫画は、終わっていたが、アニメはシリーズ化され、漫画には無い主人公が元気にデュエルバトルを続けていた。


漫画のヨシオドールはホラーテイストのアクション漫画で、ヨシオ少年は悪魔のカードに魅込られ、人形になってしまう。


そこで、様々な妖怪と戦い、あるいは仲間になって、悪魔、穢れ無き白き仮面、と戦う、というストーリーだった。


このヨシオドールのカードはとんでもないレアであり、漫画と同じ力がある。


なんのアイテムも付けなければただの人形だが、実はその状態でも不死であり、アイテムを付けると、アイテムのコスト分のパワータフネスを得ると共にアイテムも破壊不能の能力を持つ。


理論上、無限に強くなれるカードなのだ。


トー横の子供たちは、皆カードが大好きで、カードをもらえる、というだけで悪い大人にもついていってしまう。


なんとか和也が彼らを教育しているが、とはいえ、トー横で暮らす子供は、皆、それなりの理由があって家から逃れている。


カード一枚の暖かみでも、大人を信じてしまうのだ。


ゲームは、レディがヨシオドールを引き当てた時点でほぼ決まりなので、和也は回りを見回して、


「大地やガンチはどうした?」


「んー、なんか、スマホで呼ばれたみたい…」


ストリートチルドレンでもスマホは持っているのが日本の子供だった。





大地とガンチは、中央線からお茶の水で総武線に乗り換え、浅草橋からスカイツリーに向かっていた。


二人ともとうに十二は越えているが、子供キップで移動している。


最近は背の高い小学生も多いし、比較的小柄なストリートチルドレンの二人が咎められることはない。


小柄な二人は、荒事には不向きと見なされていたが、学生連合のアプリがそれを変えた。


今は和也にも頼りにされていたが、とはいえ…。


十万ポイントが目の前にぶら下がったら、ストリートチルドレンの二人は一もニもなかった。


和也に禁止されてはいたが、性的なアルバイトをしたとしても、十万まではもらえない。


和也のお陰で、トー横の子供たちも、衣食住はなんとかなるようになってはいたが、現金収入はほとんど無いのが実情である。


頭の良い、とか感じの良い子供は、飲食店など気に入られればアルバイトや、下手をすれば養子縁組の話もあるが、その辺不器用で無愛想な大地とガンチは、なかなかアルバイトも上手くいかない。


大人に何を話せば良いのか判らないし、黙っているだけで睨む、とか言われてしまう。


和也に隠れて二丁目で人に言えない写真のモデルなどをしたりしても、数千円に買い叩かれる始末だ。


小柄な二人は、迷い迷いスカイツリーに到着した。


「遅かったな」


白井がホームで待っていた。


「俺たち、こんな所まで来たの初めてなんだ」


見た目は小学生なのだが、話すと太い声のガンチが答えた。


「ま、間に合ったからいい。

ソラマチに入ったら、この薬を飲んでくれ」


「誰かと戦うのか?」


大地は、やや裏声で話すことにしている。

見た目と合わせている、と言っているが、何人かお客を取っているので、声は変えられない。


「行けば判るよ。

とにかくソラマチでこれを飲め」


白井も、これから地下でシーツァの粉末に火を着け、一帯を花の香りで満たさなければならないので、手短に語って、走り去った。





「まったくよぅ」


高校生格闘チャンピオンを病院送りにした田中圭介は、しばらく留置され、裁判前に家に帰った。


弁護士とも話したが、全くの遊びであり、相手も格闘家でチャンピオンだ。


やり過ぎた感はあるものの、相手も回復に向かっており、圭介の話しが嘘ではないのを証明したので、示談か、それか向こうが告訴を取り下げる気配が濃厚らしい。


そりゃそうだ。

せっかくチャンピオンになったのに、遊びで怪我をしてクラスでも小柄な圭介を訴えた、などとなったら、もう復帰できないだろう。


圭介は、親から小遣いももらえず、家で退屈していたところ、十万ポイントのメールが来た。


ま、多くはないが、スマホ決済にも使えるからニ三日遊ぶくらいにはなるだろう。


田中圭介はスカイツリーの展望デッキで、ココアと共に薬を飲み干した。

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