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シャドウダンス4空飛ぶ怪異  作者: 六青ゆーせー
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9メール

アクトレスは報告書は読んでいたが、さすがに目の前で見ると、驚く。


「声真似ってレベルじゃないね…」


「俺も困っているんだよ。

まあ、芦ノ湖に沈んでいるよりマシだけどな」


田辺は苦笑した。

その笑い方も、誠がするには大人び過ぎていて、やや気味が悪い。


「で、こいつは男なのか?」


とにかくアクトレスは聞いてみた。


「さあ。

男便所にはいたんだから、そう思うけど洗面台のところで話しただけだし、判らないな?」


唯一の目撃者ではあるものの、田辺は特に情報は持っていない感じだ。


「声も、ほら、美容師みたいな話し方でさ。

何て言うの? オカマまでいかないけど、あら~、そうなの~みたいなさ」


今時、そんな美容師がいるのかアクトレスは何十年も自分で髪を切っていたので知らなかったが、まあ、それもパズルの一ピースではある。


「美容師なぁ?」


残念ながら警備員もベテランで、理容師しか知らなかった。


「真子は判るかい?」


「いえ。

わたしはお母さんに切ってもらっていたので…」


今時、そんなオボコがいるのか、とアクトレスは言葉を失った。


まあ、誠の中にいるには、このくらいの奴の方が安心か…。


と考えながら。


「リーキーは、この影繰りに見覚えはないんですか?」


誠が聞いた。


「Aじゃないね。

だが、相当の腕の持ち主だな。

ヤギョウとかじゃないのか」


モバイルから声がした。


「ヤギョウは、日本政府に反逆するようなことをするんですか?」


誠が聞く。


「さあ、日本政府といっても一枚岩じゃないだろう。

反対勢力の依頼ってこともあるんじゃないのかい?」


議会制民主主義と言うもの自体が、意見を故意に対立させるような構造にあるし、また、同じ党内でも派閥争いのような物は幾らでもあるだろう。


「ヤギョウ絡みとなると、かなり厄介な事件になるね。

だがマッドドクター。

あんたは仲間の死体をこんなんされて腹は立たないのかい?」


アクトレスが言うと、


「君には話していなかったかもしれないが、僕はマッドドクターと同一人物とは自分を思えないんだ。

別にAに特別な感情はないし、どれだけ自分と彼らが親しかったか、記憶も曖昧なんだよ」


まあ、三ヶ月以上もかけて身体中が若返ったのだ、そんなこともあるのかもしれない。


無論、嘘かも知れなかったが…。


マッドドクター一流の嘘ならば、事はAの仕業、という事になり、3度目の大規模なテロの可能性は捨てきれない。

が、今まで2度のAのテロは、常に不意打ちであり、今回のようにダラダラ影繰りを単独で動かすような動き方はしない、ともアクトレスは感じた。


一方、ヤギョウの行動ならば、もし政治が関わっているのなら、捜査を続けるうちにどこかで妨害がかかるだろう。

今のところは、国にそう言った動きは無いようだった。




一方、大川と滝田は、部活もサボりがちになっていた。


誠に脅された、のは覚えている。

どうやら小田切は、見た目よりずっと恐ろしい人物だったようだ。

それに、迂闊に手を出してしまったのだ。


二人は、一応、部活は続けているテイでいたので、街外れの公園で黄昏ながら、スマホを眺め続けていた。


と…。


(学生連合…)


なにか、ヤバ目の詐欺メールが滝田に届き、滝田は思わず、


「大川」


と声をかけたのだが、同時に大川も、


「滝田…」


と言っていた。


二人は、互いにスマホを見せあい、


「あれか。

一斉送信で、全国に流すって訳だ…」


大川はしたり顔で言うが、滝田はメールを開いていた。


おい、と止める大川にメールを見せる。


(勉強の成績を上げたくないですか?

人より早く走りたくないですか?

容姿を変えることも可能なのです。

私は学生連合総統ー白薔薇ー。

それは私の薬で、全く合法的に手に入れられるのですよ滝田君)


「俺宛のメールだ。

大川、開いてみろよ!」


大川のメールも同じ文句が並んでいたが大川君、になっていた。


「しかし薬って、ドーピングみたいな事じゃないのか?」


それで陸上部の大川と滝田に名指しで送ってきた、という事もある。

幾ら小田切に足で負けたからと言って、ドーピングをして勝とうという気はない。

それでは、全国に行ったらどうするのか?

悔しいが陸上ではタイムが才能の分量なのだ。

諦めるしかなかった。


と、スマホが震えた。


「これはドーピングではありませんよ。

薬ですが、遺伝子から変える力を持つ新薬なのです。

今なら、君達には無料モニターになってもらって構わないんだけど、ビビッて止めますか、二人とも」


滝田は、滝田のスマホを覗き込む大川を振り返った。


大川の目に、強い光りが宿っていた。


どうせ半分終わっちまった夢だった。

最後に、すがれるものがあるなら、手を伸ばしても良いじゃないか…。


滝田は、大川の目の光りが、そう告げている気がした。

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