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シャドウダンス4空飛ぶ怪異  作者: 六青ゆーせー
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87亜人の強化と誠の特訓

「早くしたり遅くしたりする力?

重力操作とか、誠の引力と反発とかじゃないのかい?」


アクトレスは首をかしげた。


「俺のカラスは落ちないで、しかも遅くなったり早くなったりしたんだよ」


井口が言えば誠も、


「引力と反発力は、理屈をかなり知らないと難しいと思います。

あるいは、オートマで引力と反発力を使っているのかもしれませんが?」


「影は何でもアリだからねぇ…」


アクトレスと吉岡も腕を組んで考え込んだ。


「まーなんにせよ、五人とも力、使えるよーなったんやから、ええやない。

伸ばしていくうちに、なんか判るかもしれんし」


高屋は楽観的に笑った。







資金力の強いチャイニーズマフィアと戦争するにしろ、亜人やラオス・マフィアと知られるのは組織の大きさから可能なら避けたかった。


いずれシーツァの樹が列島を包んだあとなら、烏合の衆の集まりであるチャイニーズマフィアなど問題にならないのだが、今はパワーバランス的に、あちらが上なのは明らかだった。


とはいえ、亜人の数が足りない。


内調との戦いを避けるのなら、現実的に兵隊の数を考えれば、チャイニーズマフィアを標的にするしか無かった。


下手な地域で暴れるのは、ホゥン和也まで敵に回しかねないので、どうしても大久保界隈の地味な店の襲撃になる。


トカゲ亜人やジオラマ亜人、多手多頭亜人などでオープンカフェに乗り込み、散々に荒らした。


だが…。


「お悪戯(いた)は感心しねぇーなぁ。

子供だからって、犯罪は犯罪なんだぜ」


明らかに戦闘員とは違う、巨大な男が現れた。


思うより早かったが、どうやら影繰りが張っていたらしい。

三人とも内調の影繰りには殺されかけているので、一瞬怯んだが、白井が、


「言ったろ。

どんな影かさえ判ってしまえば、こっちで戦い方は教える。

まず、攻撃させるんだ!」


そのためのトカゲ亜人でもあった。


亜人の力は隠したまま、トカゲ亜人は学生連合で得た力、分裂を使って影繰りに近づく。


「やはり影繰りか。

だが、そんなちゃちな能力じゃ、俺にゃー勝てねーなー」


男は、頭にかぶったソフトハットを人差し指で少し押し上げ、その指で、パチン、パチンと二度ほど指を鳴らした。


トカゲ亜人の分身二人が、喉から血を吹き上げて倒れた。


亜人たちは動揺するが、白井は、


「おそらくカマイタチの影だろう。

中間距離、多分五六メートルの射程の影だ。

まずはそうだな…」


白井は一番後ろでささやく。


「ジオラマ亜人。

恐竜の世界にご案内しろ」


隠しカメラなどに亜人の姿が映っていると、こちらが日本のノラ影繰りでは無いのに気づかれる恐れがある。


ジオラマ亜人はすぐさま、スーツ姿の大男共々、チラノのいる世界に旅立った。




永井友哉はクサい。

二人の人間が死に、その近くにいたのだから怪しくないはずはない。


ただ、率先して警察に通報したり、同時期にトイレにいただけだ、とのべたり、の言葉に青山は嘘を感じなかった。


なので今は、美鳥が、友哉の背中に、超小型の羽虫をつけて見張っていた。


成果はあった。


永井友哉は、学生連合アプリをスマホに入れており、数名の生徒にアプリを薦めていた。


しかも…。


薬についても、ささやいている。


どうやら友達を紹介すると友哉のポイントになるらしい。


誠なら、多分薬と、先月の夜の怪物多発事件の因果関係を疑いそうだ。


だが、誠は今、川上と共に、近接戦闘用のオーラをまとう特訓とやらで忙しいらしい。


全て透過で避けられるのに、わざわざ特訓までしようというところが、神経質で完全主義者の誠らしい。


完璧すぎて、バカの領域に入ってる、とユリコも笑っていた。


だがまあ…。


また、あの夜のようなアメーバ怪物が現れたら、ダンサーチームか誠にしか対応は出来ないはずなので、当人がレベルを上げると言っているのに却下も出来なかった。


あの怪物が一斉に現れた夜、行方不明になった未成年も多く、その中には被害者以外にも加害者も含まれるのではないか、と疑われる節がある。


ユリコと小百合が中居と共に戦った相手が、怪物に変容しているのだ。


そのため、内調の人手不足は、より深刻になっていた。


本来、影絡みの事件がこれほどの規模で多発するなど、あまり考えられない事態なのだ。


過去のテロ事件で失われた内調の大人の影繰りも多いのも、美鳥たちを忙しくしてた。




「じゃー誠っち、殴るぜ。

良いんだな」


誠は、今や内調のエースというよりは体育館裏に呼び出された苛められっ子のように青ざめ、小さくなって、コクンと頷いた。


理論上、無抵抗に恐れて殴られれば「本能の硬さ」が出る、はずだった。


多分、一度、それを体験すれば、誠も影のオーラを出しやすくなるはずだ。


はずなのだが、かなりアクトレス教官に鍛えられているとはいえ、痛いのは嫌いだった。


また、アクトレス教官に殴られたり蹴られたりして倒れるのは良いが、川上の前で無様な姿を見せるのも気は進まない。


が、やはり影のオーラは欲しかった。


有るのと無いのでは戦いようも変わるはずだ。


誠は、目を瞑った。


川上が、フックを右頬に突き刺した。

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