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シャドウダンス4空飛ぶ怪異  作者: 六青ゆーせー
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80死に方

アハハ、と白井は笑い。


「ユズはテロリストに会ったことがあるの?

あんなのは、ただ暴れたいだけなのを政治の問題に転化しているだけの連中じゃないの?」


ウフフ、とユズも笑う。


「全てがそうじゃないわ。

新しい世界を作ろうとしている人だっているのよ」


まだ面白そうに横隔膜を震わしながら、


「だとしても、それと君の死が関連するとは思えないよね?」


白井は言ったが、ホレポレの実にするためには、一旦ユズを殺し、寝かせてから実にする必要があった。


顔を盗む方がはるかに簡単なのだが、ユズはどうしてもホレポレの実にしてみたい。


とにかく直感力のようなものは他人より、ずっと優れているはずだし、それ以外にも、なにかをユズには感じていた。


問題は、ユズを殺すのは、顔を盗むよりはるかに難しい、ということだ。

この場で殺る訳にもいかないし、テレポートするのも考えものだ。


なぜなら、直後にまた、遺体を寝かせるためにテレポートする必要がある。


昔の体ではないとはいえ、連続テレポートは負担が大きく、もし、また内調に追われるようなことがあれば、不安が大きい。

テレポートは消費エネルギーが大きいのだ。


「でも、君が僕を殺人者だと思うのなら、何でメールなんてくれたんだい?

あのメールがなければ、僕は約束を忘れていたかも知れないのに?」


「ホー君は、自分がどう死ねば一番ラッキーだと思う?」


不意にユズは話を反らした。


「ラッキー?

宝くじに当たるみたいな?

漫画の死後転生みたいなことかな?

女の子にはモテモテで、力も強くてもどんな男も敵わない。

そして、どんどんレベルアップして自分の思うような世界を作る、みたいなことかな」


今度はユズが声をあげて笑った。


「どんなに素敵でも、死んだ後じゃ仕方ないじゃない。

誰も、あなたの死の意味を知りもしないわ。

だけど、死にかたによっては、本がベストセラーになったり、歌になって世界中に知られる、なんてこともあるのよ。

有名な文学者だって、死に方が良かったから今でも愛されている人も少なくないわ。

ロックスターも、老いぼれて醜態をさらすより、若くして死んだ人の方が名が売れるものよ」


なるほど白井は音楽にあまり興味は無いが、そういう人も少なからずいる。


「ユズは、なにか作っているのかい?

SNSで残しているの?」


「秘密よ。

言ったらダメなのよ。

偶然にそうなることに意味があるの」


そうは言うが、現代では一瞬、ツイッターで騒がれて終わる、ぐらいの方が多いんじゃないか?

と、白井は思った。


むしろユズは、死に対して、なにか大きな幻想を抱いている気がした。


まあ多分、彼女にも好きな男性や家族がおり、そういう人たちに一種の傷痕を残したいのかもしれない。


「ええと…。

それ自殺じゃまずいの?

僕が犯人になる必要ってある?」


自死してくれれば、手間も省けると言うものだ。


「ダメよ。

幽霊になったら、ただの怪談だもの」


大事なSNSも、単なる呪いの入り口のようになってしまう。


「それ、殺されても同じなんじゃないの?」


「だから殺されるとしても、相手を選ぶのよ。

テロリストの凶弾に倒れた、ならいいけど、通り魔に殺されたじゃダメなの」


単なる被害者ではなく、もっと高みにユズを運ばなくてはならないらしい。


「僕は単なる高校生だよ?

何の理想があってテロなんてするのさ?」


「もし高校生がテロのリーダーで崇高な理想で大人を動かしたら、すごい天才よ。

多分、普通は他の大人の理想を実現しようとしている最年少の戦闘員ね。

それでも、かなりの天才だわ」


幕末の志士には多くの十代の少年がいたはずだが、ほとんど名は残せてはいない。

せいぜい、志士ではないが沖田総司ぐらいか。


だが、白井がこれから行う戦いは、ほぼ学生たち、というか、元は学生だったもので行われる。


内調は、まだ大人の出番にはなっていないだけだが、今までのテロでも、そのまま少年少女の戦いになってしまっていた。


死ぬのはいつでも…、と思索の世界に入りかけた白井だが、今はユズをどうするかだ、と思い出した。


東京で、人目につかない殺害現場、というのは限られている。


事故でない限り、自宅やホテルなどが現場になることが多いが、そんな金は白井にはない。


無論、ツカサならカードはブラックで無制限の買い物が出来たが、ここでツカサのカードを使い、足跡を残すわけにはいかない。


あの時の潰れたカラオケ店などは、さすがに使えないし、下北沢という繁華街でユズを殺すのは、なかなか難しかった。


「ま、面白い議論を続けるのもいいんだけど、なにか用事があるんじゃなかったの。

僕は何で呼び出されたんだい?」


と白井は笑顔で聞いた。


んふ、とユズは笑い。


「そうなの。

個展を見てもらおうと思ったのよ」


とあらかじめ用意していたのか、きれいな封筒に入った券を白井に渡した。


長谷川柚子個展…。


写真の展覧会のようだ…。

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