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シャドウダンス4空飛ぶ怪異  作者: 六青ゆーせー
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8顔泥棒

自分で自分のパンツの中身部分に乳液を塗っていると、なんか変な気分になるな…。


と、思いながらも、誠は我慢して真子の指図のままにお手入れを続けた。


と、不意に頭に付けたモバイルが振動した。


「あ、誠です」


そのままモバイルは通話も出来る。


「誠、赤いドレスの女、スモーク、スカイウォーカー、ゾンビマスターの遺体が、霞ヶ関から盗まれた」


アクトレス教官からの電話だった。


「え、霞ヶ関って、あの公務員のいる?」


事務所ビルだと、誠は思っていた。


「あの地下には医療センターがあって、影繰りの研究がされているんだ」


全くの初耳だったが、どこかに研究機関があってもおかしくはなかった。

本部にも吉岡先生はラボを持っているが、国の影研究があそこだけ、と考えると、確かに規模が小さすぎる。


だが、霞ヶ関とは…。


「影繰りですか?」


「そうとしか考えられん。

地下五十メートルにある施設なんだ!」


誠にはそれほどの驚きはないが、あの霞ヶ関の地下五十メートルに、というのは、普通なら驚きなのだろう。


「判りました。

霞ヶ関に行けばいいですか?」


「マップを送る」


誠の頭に、マップが広がる。


モバイルは、スマホなど問題にならない早さだが、現実には素っ裸の誠は、慌てて乳液やコットンをしまい、衣服を整え、と時間がかかった。


五分後、空に舞い上がった誠は、数分で霞ヶ関ビルを落ち、地下五十メートルの研究機関に到着した。


アクトレスたちは、警備員と防犯カメラをチェックしているが、それで影繰りを見つけるのは、影繰りでも難しい。


生でなら、影を纏った影繰りもなんなく見えるが、撮像管には、うまく映ってくれないものなのだ。


あえて、本人が姿を見せていれば判るのだが、そうでなければ画面全体が気がつかないほど微かに薄暗くなり、戻る。


これがそうだ、と教えられても、なお見つけるのは困難だった。


と、誠に電話が入る。


「やあ、リーキーだ」


「え、急に何ですか?」


「困っているようじゃないか、僕なら、影繰りが見えるように出来るよ」


誠は怒った。


「覗き見していたんですか!」


「なに言ってるの。

当然、モバイルの性能調査はしているよ」


釈然としないが、仕方がない。

誠は、リーキーの提案をアクトレスに伝えた。


「バカだね。

あれをおいそれと外に出せる訳がないだろ」


当然リーキーは訊いているので、


「問題ない。

監視カメラをパソコンに接続し、僕の送るメールをダウンロードすればいい」


無論、誠、アクトレス、警備員と激論が交わされたが、リーキーは

スピーカーホンにして。


「皆さん、僕は総理から権限を与えられています。

それで納得されないなら、そちらの研究室長官渡辺さんから電話させますが?

それより、早くあなた方で犯人を見つけた方がお互い楽なんじゃないですか?」


警備員は、長官の名を聞くと、すぐに折れた。


監視カメラのハードディスクレコーダーとパソコンが接続され、すぐにリーキーがリモートで操作を始めた。


画面に幾つかのフィルターがかけられると、徐々に一人の人物が画面に姿を現した。


「…驚きました。

これはどういう理屈なんですか?」


誠は聞くが、


「まあ、影を検知する可視光線があり、そこだけを取り出せば、このように影繰りも姿が見える、ということさ。

なに、すぐに国家機関ではこのプログラムは採用されるだろう。

僕はちょうどいいテストパターンを手に入れたわけさ」


一人の、男とも女とも、大人とも子供ともつかない、ある種、芸能人的な痩せ型の人物が、そういう能力者なのか、鍵を使う様子もなく、扉をあけ、地下にのんびり向かっていた。


人とすれ違っても、全く気づかれない。


そして、遺体安置所へ入ると、ロッカー式の遺体置き場から四人の遺体を取り出すと、手をかざした。


遺体は、萎れるように、あるいは植物が枯れていくように、縮んでいき、やがて、何か小さな球体になった。


誠には、小型の玉ねぎのように見えた。


ピクルスなどにラッキョウのように入っている小玉ねぎだ。


痩せ型の人物は、ひょい、とポケットにそれをしまうと、来たときと同じように帰っていった。


「驚きましたな…」


警備員は、額の汗を几帳面にハンカチで拭った。


「どんなスパイ仕掛けで侵入したのかと思えば、まるで魔法使いのようだ。

あの死体をラッキョウにする魔法も、影なのですか?」


なにしろ影の研究室の警備員なので、一応の知識はある。

警備員の中には、影繰りもいるはずだ。


アクトレスは唸った。


「施設に侵入できる影繰りは色々見てきたけど、こんなに散歩のようにしてのけた奴は初めて見たよ。

しかも、同根の力なのかは不明だが、死体を球根みたいにしちまうとはね」


まあ、ラッキョウも玉ねぎも球根ではあった。


「大竹さんのような植物使いかも知れませんね。

鍵も、木で作るのかも…」


誠は言うが、


「まあ、そう簡単な鍵じゃないんだがな」


アクトレスは話す。


「場所によって色々なんですよ。

眼球認証や指紋認証、パスワード磁気カード。

ただの鍵開け名人じゃあ、とても入れんのです」


「顔泥棒だよ…」


高めの、子供っぽい声で話していた誠から、不意に田辺の、男らしい声に代わり、周りは驚いた。


「あれが、俺の見た、顔泥棒だ…」

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