表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シャドウダンス4空飛ぶ怪異  作者: 六青ゆーせー
74/153

74発見

遺体を警察に引き渡す以外、誠にやれることはなかった。


誠は学校に戻った。


だが…。


白井邦一は、教室の窓から外を眺めていた。

白井は、影繰りである。


影に隠れた誠の姿を見ることが出来る。


あいつ…。

うちの学校だったのか…。


誠は、不味い瞬間を見られてしまった。






奴は何年なんだ?


見たところは小柄で一年のようだが、白井のクラスにも小柄な奴はいる。


三年にも、一年のような貧弱な体の男はいるし、白井自体、鍛えてはいるがそうは見えない。


顔は覚えたが、なにしろ地下に敵を落とす、ということは、多分、自分が壁を通り抜けることなども出来そうだ。


どう探すか…。


白井は薄い唇を舐めた。





誠は、川上に戦闘訓練に付き合え、とせがまれていた。


「え、川上君は探査チームなんじゃないの?」


「この前、カブトと一緒に怪物と戦ったッスよ!

俺のウサギたちも中々の戦闘能力だし、俺自身、自分のスピードとパワーに驚いてるッス!」


誠は、端的に言って川上に負けたくはなかった。


そんな無様を晒したくないが、相手はどうやら飛躍的に強くなったらしい。


あの八匹のウサギとスピードとパワーの上がった川上、となると、もしかすると誠の苦手な相手かも知れない。


つまり透過が間に合わない、という奴だ。


映画で、四方八方をゾンビに囲まれた、とか、悪役集団何百人に廃倉庫で囲まれる的な十字砲火を受けるのは、誠は荷が重い。


誠はまだ、近接戦闘用のオーラはまとえていないのだ。

オーラは筋肉量にも関係し、また禅僧のような瞑想で強化することも出来るのだが、瞑想に関しては聞いてもサッパリだった。

何も考えないで座禅を続ける、というのは特殊な技能で誰にでも出来る、ほど簡単ではないのだ。


落としていいなら問題ないのだが、川上を落とすわけにはいかないし、それではスパーリングにはならない。


カブトやレディなら容赦無く打ちのめすかも知れないが、誠は川上にそこまでしたくはない。


だが、負けるぐらいなら…。


最悪、ウサギは落としてもいいのだが、しかし影のイメージで作られた生物、蝶やカラスやウサギは、落としたとして、それで消えるのだろうか?


ゲームの敵キャラのように、ループして、また出てきたりするのではないか。


誠は頭を悩ませた。


美鳥にでも聞いておけば良かったが、まさかウサギと戦うとは思わなかった。


そして、前に戦った時には、ウサギも川上もかなり強かった気がした。




白井が珍しく学校に残って誠を探している頃、誠は川上に半ば強引に浜離宮地下の基地に連れられていた。


リングではなく、床と壁がクッション素材で出来た個室だ。


個人練習のための部屋だった。


「よし、行くッスよ!」


八匹の影のウサギが現れ、すごい速度で走り始めた。


川上は癖毛の頭に犬のような耳を立て、また足が蹄に変形する。


手も、猛禽類の足のように爪が生まれていた。

人間のような板の爪ではなく、円錐形の、明らかに武器になる爪だ。


元々、川上はそれなりに格闘技は身に付けていた。

それが手足に凶器を付け、格闘ウサギという子分まで引き連れているのだ。


(誠、俺たちを出せよ)


颯太は言うが、まだそれは秘匿しておきたい。


影繰りは手の内を全てさらけ出すアスリートとは本質が違うのだ。


影に飛び込んで短距離を移動するとか、影の体などは、まだ秘匿していた方が良い気がした。


川上は、首に角笛のようなものもぶら下げている。

前はそれでウサギを操っていたが、今は違うらしい。


では角笛にはなんの意味があるのか?


それは誠には謎だった。


ウサギたちは二足歩行で弾丸のように走る。


壁にぶつかると、空中で壁を蹴り、更に加速して走るのだ。


かと思うと、途中で二体のウサギが重なると、空中で足と足を合わせて、互いに跳ねる。


この狭い空間でやられると、目が追いきれなかった。


誠はウサギたちを透過で避けるが、ウサギに紛れて、川上は誠に接近していた。


おそらく、川上はいつの間にか、ウサギを自在に操れるようになったのだ。


それ自体は美鳥や井口もそうなのだから、川上が出来ても当然なのだが、今の川上は、蹄の足でオリンピック選手より早く走り、猛禽の爪で一撃で人を殺す力があった。


ウサギを透過した誠に、真横から川上の狂暴な爪が突き出される。


瞬間、焦ったが、膝で川上の腕を跳ね上げた。

アクトレス教官との訓練で、誠はヨガ行者並みの柔らかい体を手に入れかけていた。


そのまま川上に向かいたいが、影のウサギが途端にジャマをする。


川上は蹄の足で、軽々と数メートルを跳び下がった。


この調子でヒット&アウェイを繰り返されたら、いつかは誠も無傷ではいられまい。


(じゃ、俺たちは幽霊でお前の目になるよ)


裕次が提案した。


途端に二十人分の視力が誠に備わった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ