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シャドウダンス4空飛ぶ怪異  作者: 六青ゆーせー
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73馬事公苑

影繰りは警察には逮捕されない。

影、を警察が立証できないからだ。


そして同じ意味で、永井が逮捕されることはない。


怪物、を医学は立証できない。


誠は小田原に飛ぶことにした。

春山高校は、実は誠が受験しようと思っていた学校で、中もとてもキレイだった。


今の学校が嫌なわけではないが、つい憧れの視線で春山を見てしまう。


それも、なんとなくいたたまれなかった。


誠は、理論上いくらでも早く飛ぶことが出来る。


目標点と引力で結び、更に飛ぶ間の各点に引力と反発点をつけていけば、音速での飛行も可能な上、誠は元々が透過能力者であり、空気もすり抜けられるのだ。


誠には、音速の壁も存在しない。


スカイウォーカーはおそらく、影のオーラで音速の壁を越えていたのだと思うが、誠は頑丈なオーラを纏うこと無く、音速を越えられた。


数分で小田原につき、達吉の座標に地図アプリで向かう。


正確な場所は、山奥だった。


既にブルーシートが張られ、発見者らしき登山者と警官が、顔のえぐられた裸の遺体を前に、発見当時の状況を話していた。


「いや、ここら辺が林道で立ち入り禁止、とは知らなかったんですよ。

いや、花が見えましてね。

ササユリかと思って、ちょっと斜面を下ったもんで」


登山者は立派なカメラを持っていた。


レンズだけでも相当な値段のしそうな立派なものだ。


被害者は女性で、かなり若い。


元々小柄なのかも知れないが、誠にも年下に見える。


とてもキレイな体だ。

あの白井という人は、平気でこんな人の衣服を脱がすのだろうか?


素朴な疑問が沸き上がるが、頭の隅に追いやり、なにか証拠はないか、と見るうちに、誠はまた、幽霊と出会ってしまった。


なんと和服を身綺麗に着こなした少女だった。



 

「そうですか。

霊というものは空を飛べるものと思っていました」


普通、殺されたショックで取り乱しているものだが、この桔梗という少女は落ち着いたものだった。


「空なら飛べるぜ」


気に入ったのか、颯太が出てきて影の体を少女に与えた。


「何があったの」


真子が、少し小柄な桔梗に聞いた。


「使い魔が、怒っていたのです」


誠を筆頭に、十八人が同時に、虚をつかれた。


「つ、使い魔?」


驚く誠に、桔梗は。


「猫の時雨、カエルの葵、それにインコの蓮が私の使い魔です」


皆、霊体の三つの使い魔が姿を現した。


「あなた、陰陽師かなにか?」


中村が驚く。


「そんな大それたものではありません。

徐霊を生業としていました」


そんな彼女が、幽霊で、しかも影になるとは。


「それで使い魔が怒るって?」


誠は、何かのヒントがあるように思って、聞いた。


「はい。

三匹とも、とても怒っていました。

私は近くの馬事公苑に向かったのですが、そこで男の子が、とても残酷に殺されていました。

相手は、性的な興奮をした男子、そう、なんとなく誠さんに似たところのある…」


誠は、あらぬ疑いに、えっ! と慌てたが、回りは。


「ああ、白井だな」


と納得していた。


え、僕って白井に似てるの?


逆に誠は驚いてしまう。


白井は、かなりモブな、印象の薄い顔の持ち主なのだ。

決して不細工ではないが、線が細く、印象が薄い。


「まー、うちの誠はちゃんと彼女もいるから大丈夫だ」


颯太がいうと、裕次が。


「手も握れないけどな」


いうと、回り全員が笑った。


誠は、かなりの屈辱を感じた。


「しかし、あの白井って、BL野郎だったのか!」


確かに、これだけの綺麗で清楚な少女も、顔を奪う以外は何もしていない。


「とにかく、馬事公苑だ!」


誠は再び飛んだ。


使い魔の白いインコが案内してくれた。


馬事公苑は乗馬のための公園であり、広々とした庭園だったが、一部にうっそうとした茂みもある。


その奥で、ズタズタに切り裂かれた少年の遺体が発見された。


「彼です」


桔梗は、そもそも幽霊の見える体質で、師匠について徐霊をしていたので、隅で震えている中学生を、すぐに見つけた。


「カードのトレードをしようって言って…」


少年は泣いた。


流行りのトレーディングカードの仲間では、自分のいらないカードと相手のいらないカードを交換するのも面白味の一つだった。


レアなカードもあれば、よく使うが、使用限度一杯に持っていたい、数の欲しいカードもあり、それらは操るデッキ次第で全く違うので、お金を使わず、うまく交渉して欲しいカードを揃えられればお互いにメリットがある。


それを餌に、少年は白井の残虐な趣味に巻き込まれてしまったようだ。


「しかし、なぜ顔を取らなかったんだろう?

これでは、すぐに特定が出来るし、もしかすれば世田谷なら防犯カメラなどに映っているかも知れないのに?」


「おそらく、私が目撃したことに気づいたからでしょう」


桔梗は言うが、ならば小田原から帰って、なにか出来なかったのか?


「おそらく、完璧に命を失ってから顔を取ることは出来ないのでは?」


真子が推理した。


少年貴樹を加え、誠は二十の幽霊と、三匹の使い魔を持ってしまった。

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