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シャドウダンス4空飛ぶ怪異  作者: 六青ゆーせー
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72春山高校

白井は学校の体育などチンタラやっている場合ではなかったのだが、親と学校が連携して白井を見張っている以上、受業を一定時間以上抜け出すわけにはいかなかった。


が、新宿で死んだチャイニーズマフィアの影繰りたちの死体は大部分を回収していた。


適度に安定させてからホレポレの実にすればいい。


今は、まじめに、そして地味に学校で時間を過ごすだけだ。


来る変革の日に、まず三百体の仙体を作る必要があった。


そうすれば全てが変わるはずだ。

世界の有り様が決定的な進歩を遂げる。


白井は、適度なタイムで走りながら、その日までのタイムテーブルを考えていた。


内調の影繰りは邪魔だ。

が、いいポレホレの実になるはずでもある。


適度に熟成した仙体を何体かでマークした一人の影繰りに当たらせ、殺すことができれば、極上のポレホレの実になる。


が、それは内調との全面戦争の狼煙でもあった。


どうするかな…。


白井は、まだ迷っていた。





永井知哉は、釈然としないながらも日常生活に戻っていた。


高田類など、会わないならむしろ喜ばしい奴だし、知哉が警察に話したことで、類がコンビニ強盗だった事も判明した。


狙撃犯は見つからないが、どうせ強盗の共犯か何かだろう。


知哉は顔も見ていないのだから、襲われることもあるまい。


朝はスッキリした気分だったのだが三時間目を過ぎると、なぜか頭がぼんやりしてきた。


トイレで顔を洗う。


知哉が洗面台に顔を埋めているとき…。


知哉の後頭部から、動物の腸のようなものがスルスルと伸びて、個室トイレに入った。


中では田中という生徒が、マンガ雑誌を広げていた。

グラビアを朝、見てから、ビキニの少女の濡れた水着が、微かに透けているようで、どうしても我慢できなくなっていた。


夢中で股間を慰めていた田中は、一瞬で喉笛を、腸の先端から出た鋭い牙に噛まれ、即死していた。


永井がタオルで顔を拭くと、個室の床から血液が流れているのも気づかず、トイレを出た。


気分は、素晴らしく良くなっていた。






顔泥棒が目の前にいる…。


真子はどんな気分なのだろう。

いや、真子以外にも、颯太以外の皆は、等しく顔泥棒に殺されていた。


「気分は良くはありません。

でも、いずれ戦う相手なので、むしろ一歩前進した感覚です」


真子は言う。


「体を盗まれた少年もいる、ってことを誠くんはよくよく考えた方がいいよ。

僕らは、君がいなければ、おそらく成立しなくなるはずだ」


と偽警官。


顔にしろ、肉体にしろ、能力にしろ、簡単に盗める力というのは、確かに恐ろしかった。


真正面から戦えないし、対策を立てようもない。


そして誠は、自分の顔を白井が知っている、という事実を知らなかった。




放課後、誠は美鳥と共に有名進学校春山にいた。


生徒がトイレで殺されていた。


そして、あのシーツァの花が咲いた日に、同じ死に方をした少年がいた。


たまたま、彼の近くにいて、彼の死を通報した少年が春山の学生だった。


「偶然にしては出来すぎね」


美鳥は言うが、誠は、


「逆にミスリードに導いているような気もしませんか?」


と疑った。


ともかく、他の子供たちは怪物化しているのに、その永井という生徒は、人間のまま怪物の力を駆使している、というのだろうか?


「ご覧の通り、我が校は六年前に盗撮の不祥事を起こして以来、プライベート環境の気密化には本腰をいれているのです」


教頭は警官に語っていた。


なるほど、喉を噛み切られた生徒の入っていた個室は、天井まで壁があり、床も水が流れるほどの隙間しかなかった。


「そこに円い通風穴がありますね?」


「換気は必要ですから。

しかし、中にはフィルターがあり、小型のカメラも入れません。

つまり、密室なのです!」


警察が調べると、確かにプラスチックの枠に活性炭なども入った厳重なフィルターが納められていた。


誠は、警官の後ろで。


影繰りなら、どうでも出来るけど…。


と考えていた。


水が流れるということは、1センチ近い隙間があるわけで、影の手はもちろん、美鳥の蝶もレディの分銅も入り込む。


おそらく、その獣も同じように隙間から中に入り込んだのだろう。

 

前回も、誰も獣の姿は見ていない。

コンビニの防犯カメラに、二人の少年は映っていたが、獣は映らなかった。


長井少年が狙撃、と思い込むほどの一瞬の襲撃なので、おそらく夜間の防犯カメラの広角レンズの荒い画像には映らなかったのだ。

 

長井少年を犯人に導くミスリードなのか、それとも自覚無き殺人犯なのか、あるいはジギル&ハイドのように変身するものなのか、誠にはまだ、状況は読めなかった。


誠は美鳥にそう話すが、美鳥は。


「人が二人、死んでいるのよ。

放置は出来ないわ」


「だが長井さんがブービートラップのようなもので、どこかで顔泥棒の一味に囲まれる、という場合もあり得ます。


各地で暴れた怪物たちは、顔泥棒がどこかに匿っているんですよ。

例えば下手に突っついて、この春山に化け物が集団で現れたら、死人は十や二十では済みません」


美鳥はブスリと、


「正体の判っている白井を捕まえるべきなのよ!」


確かに、彼が中核を成しているように見えていた。


「テレポーターを捕まえられる人がいればいいんですが」


そこが問題だった。


渡辺たちが白井を尾行しているのだが、白井は自由にテレポートしてしまう。


渡辺はヘトヘトだった。


「必ず現れる、と判っているところは張れる。

だが、途中で海外にいるのか、山の中にいるのか、誰かを襲っているのかは、ちょっと追跡不能だ!」


半ば匙を投げた発言をしていた。

達吉のパソコンで、その間の動きは追っているのだが、どうしても後追いになるのは仕方がなかった。


その間に、行方不明者も二名出ていた。

おそらく、もう命は無いだろう。


「誠さん、そちらが膠着しているのなら、小田原に飛んでください。

正確な座標を送ります」


行方不明者が見つかったようだった。


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