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シャドウダンス4空飛ぶ怪異  作者: 六青ゆーせー
71/153

71遺伝子

「お前、凄かったな」


ホヮン和也が誠に声をかけた。


カカカ、とレディは笑い。


「コイツは、何でも地下に落としちまうんだ。

強いぞ」


白井は誠の力を知った。


地面に落とすのか。

面白い能力だな…。


あまり聞かない力でもある。


一瞬で十二人を消し去った破壊力もただ事ではない。


しかも…。

顔泥棒の最大の悩みは、死体の処理だった。


海に落としたり、樹海にテレポートしたりしていたが、どうしても完全に死体を消し去るわけにはいかない。


だが、奴の力なら、死体は完璧に葬れる。

顔泥棒にとっては夢のような力だ。


とはいえ、ホヮンのいる前で彼をいたぶるわけにもいかない。


影繰りなら、また見ることもあるだろう…。


白井は、粘着力の高い眼差しで誠を見た。


「おぅい、チビを集めたぞ!」


ほんの小学生から中学ぐらい、十五人の男女が集まってきた。


「じゃ、誠」


言うと、一瞬で十二人を落としたひ弱そうな少年は、影の巨大な手を出して、子供を乗せると、なんと空に舞い上がった。


馬鹿な!

空を跳ぶ影繰りなんて聞いたこと無いぞ…。


厳密には、一人いるらしいが、都市伝説のようなもの、と白井は思っていた。


少年は、一瞬で空の彼方に消えてしまった。






「本当に人体実験とか、しないんだね?」


リーキー・トールネンに疑惑の視線を送る誠だが、リーキーは。


「んー、健康診断程度の検査はするよ。

そのくらい、問題ないだろ。

栄養状態も心配だし、可能性としては色々な病気の可能性がある。

性病を含めてね」


かなり猥雑な環境にいたことは間違いないのは、誠にも否定しようが無かった。


「でも、慈善事業で内閣府が出てくるなんて?」


「怪物に変身した少年たちがいる。

それは、僕らも興味を持っている」


それなら逆に得心がいく。


「この子達もそうだと?」


リーキーは頷き、


「トー横とチャイナマフィアの戦いでも、似た現象がトー横の少年たちにあったと報告が来ている」


確かダンサーチームがトー横に張り付いているらしい。

ミオさんもいるのだから、かなり正確な報告だろう。


「だから、可能なら、怪物化の謎を解くヒントが得られる程度に精密な検査をするよ。

ただ、別に人体実験じゃない」


誠は迷ったが、子供たちに過酷な検査をさせるよりは、と。


「ヤギョウが、あの力は影繰りというよりは、妖怪に近いものだ、言っていた」


と教えた。


ふむ、とリーキーは考え。


「遺伝子情報の書き換え、かもな…」


「どういう事だ?」


「つまり、影繰りがギリギリ人の力、とするなら、学生連合の薬は、むしろ遺伝子情報の書き換えを起こす薬品、と考えられる。

それは人を越えた力を産み出すが、しかし最悪のドーピングでもある。

何度も繰り返すうちに修復不能な肉体に変化する。

おそらく、それが妖怪であり、怪物化の正体なのだろう」


「だけど、あの巨大粘菌とか、怪物ではあっても、とても遺伝子情報の書き換え、なんかじゃないと思うけど…?」


「そうだ。

あれこそが妖怪だろう。

そしてあの晩、それに近づいた子供たちが数多く生まれた。

標本も集めてある。

細胞は、見た目と同じ、人とは言えないものだった」


もう少し聞きたかったが、しかし遺伝子の話など誠には判らない。


「子供たちの安全は保証するよ」


「彼らはトー横に帰れるのか?」


「それは、あそこが安全になってからだな」


確かに、それはそうだった。

誠は学校へ帰った。





五時間目にクラスに戻った誠は、美術室に走った。


石膏像のデッサンが、すでに始まっていた。


「あ、誠!

ここ来いよ!」


カブトは美少年だが常に不機嫌、のようなキャラなのだが、誠にだけは態度が違う。


何度かトラブルは起こっていたが、女子には優しく、男子は力で従えて、クラスに君臨しつつあった。


そのカブトが誠にだけは態度が違うため、クラスには、誠は何者? 、的な空気が漂っていた。


また、金髪の白人ユリとも仲が良く、常に元気なムードメーカー川上も、なにか誠を上に見ているような態度をとるため、小柄なひ弱そうな誠が、このグループの重い位置を占めているようにクラスでは見えていた。


誠はカブトの隣に座り、スケッチをやり始める。


颯太の画力で、誠は飛躍的に美術の腕まで上がっていた。


「小田切の絵は、いいな」


無口な美術教師が、呟く。


やれやれ…、と全く関心の無い誠が近くの窓を見たとき…。


(誠君、ほら白井がいるよ)


偽警官はなぜか誠に親切で、いろいろアドバイスをくれたり、身を挺して守ってくれたりするが、人の顔を覚えるのもうまいようだ。

誠は気が付かなかったが、グランドでは二年生が体育をしており、中に白井がいるらしい。

言われて、初めて誠はまともに白井の顔を見た。


取り立てて目立たない、地味な男子だった。


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