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シャドウダンス4空飛ぶ怪異  作者: 六青ゆーせー
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70影の戦い

大量のスズメバチは、蜂独特の怒ったような羽音の唸りを上げながら、誠に迫る。


誠は大量の影の手を体から出して備えた。


美鳥やユリと戦ったことがないので判らなかったが、これだけの虫の大群に襲われるというのは凄いプレッシャーだ。

1匹逃しても、大きなダメージを追うのは判りきっている。


だが誠には現在16体の幽霊が味方に付いていた。

分担していくつかの手を操ってもらえば、影の手に蜂の毒も効かないため、有利に戦えるはずだ。


誠は全身を覆うように手を伸ばした。


と、突然。


蜂が消えた。


えっ…、消えた?


驚いた誠だが、ミホが、


(消えたんじゃないわ!

一瞬、早くなったんです!)


なに? と蜂の動きを改めて追うと、確かに、ごく数メートルの距離を全ての蜂が、テレポートしたように動いていた。


ミホに言われなければ、何が起こったのか判らなかった一瞬の出来事だ。


どうもミホは影繰りの力が感知できるらしかった。


だが、一瞬だとしても加速させる能力は、判っていても、とても危険だ。


防御を崩されるし、相手はバラバラに動く虫の大群なのだ。


(誠!

奥の奴らも狙ってるぜ!)


裕次が、叫んだ。


最後尾の二人は、おそらく長射程の能力者、と読んでいたが、二人とも右手を前に出し、何かを始めようとしている。


(あの立っている男が、スピードを早めるの?)


誠が聞くとミホは、


(おそらく…。

あの瞬間、微かに空気が変わりました…)


彼がいるだけで、回りの影繰りは数段、強くなる。

彼自体に戦闘力はなさそうだが、この戦いの中核だった。


蜂が誠に襲いかかった。


誠は、透過しながら、自分の体の中を影として、地面に虫を強制的に移動させた。


美鳥やユリも、虫一体作るのにそれなりの力を使っている。

同じだとしたら、敵は新たな虫を作らなければならなくなる。


(誠!

奥の奴ら、撃つぞ!)


誠は全ての幽霊の視力を自分の見たものに出来る。

元々が、影の目、だからだ。


奥の二人は、前に出した右手から、音もなく何かを発射した。


(影の弾丸だわ!)


ミホが理解した。


なるほど、実弾は影のオーラで弾き返すことも出来る。

誠は、今でも自信が無かったが、川上でも、普通の誠のパンチなど猫に舐められたほどにしか感じない。


ただし、誠は透過を使うから、川上でも倒せるだけだ。


影のオーラは万能、と影繰りは考えがちだが、誠のような透過能力者や、また影の攻撃は受け止めづらくなる。


影を、ある種の、液体か気体の層と考えた場合、異質な金属や人間の拳などは通りにくいが、同じ影は、それよりはずっと、馴染みやすいのだ。


影の虫や、同様に影の銃弾が影繰りに効きやすいのはこのためだ。


誠は地面を這わせた影の手で、弾丸を掴もうとした。


が、瞬間、影が加速して手を逃れた。


(早くされるのはヤバい…!)


誠も判った。


ただでさえ早い銃弾が、一瞬とはいえ加速するのだ。

蜂なら一メートルの移動で済んでも、銃弾では誠まで到達してしまう。


加速男を殺すしかなかった。


「透過」


加速男は、声一つ残さず、アスファルトの下に消え去った。


影繰りは、影を武器として戦うが、あまり持つ力を敵に把握されると、それがたとえ魔弾の射手であれスカイウォーカーであれ、命を落とすことになる。


誠は、徐々に影繰りの戦いを理解してきた。


影の体は、誠の新しい力であり、表だって使うのは、まだマズイ。


「透過…」


誠は、十二人の敵を、同時に地下に落とした。


(誠、お前、最初からすればヨカッタじゃん?)


颯太が言うが、


(いや。

出来れば透過もあまり見られたくないんだ…)


用心深すぎる、などと霊たちが言う中…。





トー横広場の奥に、白井邦一が紛れていた。


(なかなか、面白い影繰りがいるようだな…)


白井は、人の顔や才能を盗む能力を持っていたが。


その力は、影能力にも適用は出来た。


ただし、顔を盗むのが、むしろ白井のエネルギー供給になるのに対し、盗んだ力、つまりテレポート能力は力を失う事になる。


だから、いくらでも盗める、というものではなく、おおよそテレポートだけで維持するのも精一杯な力だった。


ホヮンの力や、今見たレディの力は、いかにも派手で力を使いそうだ。


だがあの少年の力は?


敵をどこかに消す能力のようだが、どこに消したのだろう。


謎ではあったが、とても興味深い。

影能力を奪って、呆然とする中、ミリミリとなぶり殺すのも悪くは無い。


だが白井には、ホレポレの実を作るという白井にしか出来ない役目があるため、前線に出て戦う事はほとんど無かった。


まあ…。


戦いの恐ろしさは、内戦の時に生死の境をさ迷うほどに体験していた。


残念だが、今の白井は影繰りと戦っている場合ではないのだ。


薬を配り、ガキどもを戦わせる。


やがて時期が来れば、彼らもシーツァの花の影響を受けるだろう。

そのときのため、白井は大量のポレホレの実が必要だった。

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