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シャドウダンス4空飛ぶ怪異  作者: 六青ゆーせー
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64ホゥン和也

「え!

ツカサは影繰りで、テレポートを使うんですか!」


翌日の早朝、誠が朝の訓練に来るとアイチに出会った。

渡辺やアイチは永田に詫びをいれ、同時にジムのサウナ目当てもあり、昨夜から来ていた。


なにしろ夜中までツカサの追跡に明け暮れ、ハイエースで基地まで来て、過去に誠も泊まったような宿泊所で休んだのだ。


「もう、へとへとだぜ。

都内じゅうに飛び回りやがって」


アイチは水風呂代わりにプールで泳ぎ、休憩中の誠と話した。


顔泥棒は、学生連合と繋がっているのが確認されており、また、テレポートは誠の目の前でしていた。


話しているうちに、王商店や東南アジア系ギャングとの関連も明らかになってきた。


誠たちと渡辺たちは、別々に、同じ敵を追っていたのではないか…。


ツカサに似た男女不明の人間、という話が、顔泥棒に関して何度か出ていた。


誠がアクトレスに話し、やがて渡辺は指令室で永田に仕事の全容を語っていた。


「あの顔泥棒は、実はツカサで、同時に白井という金持ちの家にも住み、また福地佑介として四谷にアパートも借りていた…」


誠も目を丸くする。


まさか芸能人が関わっている、とは夢にも思わなかった。


ツカサなら、別にファンでは無かったが、誠も年末の紅白で見かけている。

ここ数年は常連だったはずだ。


そんな芸能人が、実は影繰りで、しかも学生連合と結び付いており、東南アジア系ギャングのメンバーだったとは!


誠は海外に行ったことはなかったが、印象では同じアジア人とはいえ、少し浅黒い、いわゆる南方系の顔立ちの人を誠は連想するが、実はインドシナ半島に位置するラオス周辺は人種のルツボで、日本人と言っても判らない人もいるらしい。


顔泥棒なのだから、実は素顔はアジア系なのかも知れなかったが、しかし…。


顔泥棒は、一度死んだはすでもあった。


あの四谷で見つかった老人だ。


とても美美しい芸能人のツカサとは思えないが、あれは本体であったはずなのだが、四谷で死体が見つかった。


だが、福地佑介であり、白井という金持ちの一家の誰かでもあり、また芸能人のツカサでもあるならば、顔泥棒は、同時に体も盗める事になる。


また、昨夜、都内各所で暴れた怪物たちの親玉のようにも、あの時、振る舞っていた。


なにしろ、誠自身が真子を見たのだから、間違いはなかった。


「家宅捜索とか、警察の手を借りることは出来ないのかい?」


アクトレスは永田に聞いた。


「まー、この辺の行政機関は、皆、縦割りでね。

なかなか垣根を超えて交流、ともいかないのさ。

まだ自衛隊の方が仲は良いんだが、それでも向こうにして見りゃ疫病神みたいなもんだろう」


前のAの襲撃では、自衛隊員にも多くの死傷者が出た。


完全に戦う軍隊であるなら、大なり小なり、軍の中に影繰りも抱えているのだが、その点、自衛隊は内部でも自己矛盾を抱えたままの軍であり、むしろ本物の軍にしたいのは政治家、という側面もある。


新首相鳳は、徐々にそんな軍も変えようとしているようだが、これは反対勢力もかたくなであり、教育改革などと共に、なかなか困難を極めている。


ただし、昨年末から、何度となくテロは日本でも起こっており、自衛隊、警察の意識も少しずつは変化しつつはある。


ともあれ…。


「ま、子供に被害は多数出ているはずだ。

そこら辺をデータに出来れば、政治家主動で警察とのコンタクトも不可能じゃないだろう」


そこに竜吉が指令室に入ってきた。


「データはまとめました」


田部に言われて、竜吉の首にあるのがキスマークだと、誠は始めて知った。


「誠君。

実は問題の白井家の一人が、うちの学校の生徒なんですよ」


竜吉の言葉に、誠以外にも指令室の大人たちが、声を揃えて驚愕した。




一方、レディとミオは、まだ新宿にいた。


戦いはチャイニーズマフィアとトー横ギャングの争いになっていまい、ダンサーチームが介入する余地が無くなっていたのだ。


が、確かに影繰りの存在はあり、また、昨晩都内各所で暴れた怪物たちもトー横ギャング内にいる様子は見受けられた。


ミオとレディは、常にドレスアップしているため、また最高位のクレジットカードも持っているため、今はトー横に最も近い東宝ホテルに泊まって、トー横ギャングを観察していた。


ミオもレディも諜報活動の影繰りではなかったが、

その分、機材は所持していた。


ほとんど無音の小型ドローンで様子を観察し、必要に応じて盗聴機を遠隔操作で設置する。


セミスイートは、取り寄せたパソコン関連機器で埋まってしまった。


「怪物にホレポレの実を埋め込むと、元の人間に戻って、しかも何倍も強くなるんだってさ」


メークを落としてTシャツ姿の、少年に戻ったレディが、ヘッドホンを外してミオに教えた。


ミオは、幾つかのドローンをコンピューターでプログラム操作しながら、レディが語るリーダー、ホゥン和也の話を聞いていた。


ホゥン和也は、日本人とラオス人のハーフで、トー横では面倒見のいい兄貴分だった。


トー横に集まった家出やイジメ、劣悪な家庭環境の子供を保護しながら、ギャングとは名乗ってはいたが、歌舞伎町の人々には義勇軍のように頼られている。


そして…。


レディこと春川順平は三丁目にはよく遊びに来ていた関係で、実はホゥン和也を知ってもいた。


時にはトー横で未成年同士で酒を飲んだりもしていたレディだった。


「あの辺はチャイナマネーが大量に流れて、凄い勢いで進歩しているらしいよ。

ただ、中華系の奴らが大きい顔をするんで、ホゥンたちは結束して戦っているんだ」


と思い出しながら語ったレディは、ふと頬を掻き、


「やべ!

ニキビが出来ちゃったよ!

俺、薬持ってきたかな!」


大騒ぎを始めた。


現在新宿東口は封鎖され、職安通りと明治通り、大ガード外に高架線路沿いに走る道の内部は、ほとんど外部との接触を絶たれていた。


とはいえ日本中の超一流企業が凌ぎを削って大工事をしている現場なので、ホテルや飲食は莫大な金が落ちている。


チャイニーズマフィアの組織も、それ目当てに集まったのには違いは無かった。


ただし、ホゥンたちは、何年も前からここでよるべない子供たちを守って来たのであり、昨日今日色眼鏡で寄ってきたチャイニーズマフィアたちとは、完全に敵対関係だった。


レディは、どちらかと言うと、昔馴染みのホゥンが、本当に悪いことを画策しているのか、微かな疑念を持って見守っていた。

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