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シャドウダンス4空飛ぶ怪異  作者: 六青ゆーせー
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42ツカサ

「ツカサの隠れ家ねぇ…」


正直、バイト代は魅力なのだが、相手のアジアンギャングはヤバ過ぎる。


あの辺の奴らにとって命など、犬のクソほどの価値も無いのだろう。


無論、敵に対してもそうだが、自分達の命でも、到底、日本人の感覚では理解できない無茶を平気でしてくる。


だが、放っておけば、やがて長安は挽き肉になるか、畑の肥やしにでもなりかねない。


渡辺龍にも、長安は得難い友達ではあった。


「お前、無茶を言うなよ。

東京には千四百万からの人間が住んでんだぜ。

どー、探せって言うんだよ」


長安は、明らかに寝不足の声で、


「今、奴のメインの仕事はドラマだ。

都心には必ず潜伏してるんだ…」


だが、どれだけ探偵を尾行させても煙のように消えてしまうらしい。

どんな車に乗っているのか、すら判らない。


「俺でも無理だよ。

でも、働いた分はキッチリ頂くぜ!」


全く、ド変態の、子供に擬態した男を尾行するなど、アホらしいにもほどがあるのだが、アジアンギャングが本気で匿っているアイドル様を見つけ出すのは、不可能だし命がけだ…。


その日の午後、渡辺は塗装し直したグリーンのハイエースで撮影スタジオ周辺を流した。


尾行は、勘の鋭いアイチの得意技だ。

アイチで見つけられなければ、多分、何らかの影繰りが絡んでいるのだろう。


本部の竜吉ならば見つけ出すかもしれないが、まさか、こんな馬鹿な雑誌のスクープに真面目な高一を巻き込むわけにもいかない。





ツカサは、白井芳一として電車に乗り、トイレでツカサに戻ってタクシーに乗った。


無論、タクシーの運転手などは口が軽く、軽く酒を飲ませただけでもツカサの事など話すのだろうが、男娼福知祐介の体を得たことで、ツカサは今までの数倍の機動力を得た。


全く、白井と同い年の福知は、四谷のアパートに一人住まいで、ほとんど誰とも接触はなかった。


元々、かなり孤独な生い立ちで、施設を抜けて二丁目で職を得たらしいが、それは電話一本で辞められた。


特に常連などもいなかったらしい。


なのでツカサは、時に福知になって四谷に住み、大半は白井芳一として世田谷の一戸建てに住み、後は適当な顔になって安ホテルに泊まったりしていた。


何しろ白井の母に裸を見られるのはヤバかった。


今の裸の原型はあくまでも福知祐介のもので、医療脱毛はしたといっても前の裸とは違うところがあるかもしれない。


いかに顔泥棒とはいえ、鏡で確認する以上の事はツカサにも不可能だ。

そして肉親とは、得てして、微かな違和感にも気づいてしまうものらしい。


顔泥棒も大昔、親はいたが早くに死に別れたので格別な思いはなかったが、顔泥棒として生きるうち、何度かそんなことがあった。


無論全ての親がそうな訳ではないが、違和感を感じられてしまうことは、何度かはあった。


裸は、だからまずかった。






アイチは、公共バスでスタジオに向かうツカサを認め、渡辺に通信した。


ここからおよそ七時間、最短でツカサはスタジオにこもり、最長なら夜中過ぎに撮影を終えるはずだ。


今までの探偵も仕事をしなかった訳ではない。


ただ、事務所の車で来たり、自分でレンタカーを運転していたり、ロードバイクで来たり、挙げ句に歩いてやってきたり、まちまちなため、そもそも追跡が難しい。


しかも、レンタカーだから帰りもそうか、と思っていると、別人が乗ったり、業者が回収にきたり、ロードバイクは何日も乗り捨てになっていたり、本当にアイドル様は気まぐれなだけだ。


それもこれも、北千住の店がバレた、というのが判っての事なのだろうが、自宅にはもう一月近く帰っていないらしい。


確かに、相当なサディストらしいのは判ったが、まあ、無い趣味でもない。

おそらく同好の仲間も探せばいるだろう。


クリーンなイメージを守るためだけにそこまでするのか、という感じだ。


渡辺は、かなり離れたファミレスで休むことにした。





一方のツカサは、そろそろ男として限界を迎えつつあった。

心は嫌がっているが、肉体が満足しないので、男娼のスマホに入っていた画像で手抜きした。


が、まずいことにこの男娼、本当の趣味はツカサを始め、少年風の男が好きらしかった。


本当に、顔泥棒の趣味と融合させたら、法に触れる。

今まで触れなかったわけではないが、中にはそれを受け入れる女もいないではなかったため、なんとかなっていたが…。


難しく考えるより、適当な顔にして、喧嘩でも吹っ掛けようか…。


ツカサはぼんやり考えた。





大久保の地下闘技場で谷口は、高校生にして五連勝を飾っていた。


最近では、薬を飲まなくても大概の奴には勝てる。


高校に上がってから、悪い奴らにサンドバックにされるようになり、学生連合アプリに加入した谷口だったが、今ではそいつらから巻き上げられた全ての金を取り返し、高校生活を謳歌していた。


「おい谷口!」


振り向くと、金を取り返した隠れヤンキーたちが、どうやら先輩を連れて復讐に来たようだ。


十人、いや、十二人の男たちが谷口を囲んだ。


「てめー、格闘技を習ったからってツケ上がりやがって!」


泣いて土下座した山口が、唾を飛ばして叫んでいた。


しょうがないな…。


これは薬が必要だった。

いつか、こうなるとは思っていたのだ。


谷口は錠剤をハンカチで口を拭くふりをして、呑み込んだ。


「先輩?

こいつらはただの泥棒ですよ?

庇うんですか?」


「バーカ」


先輩の一人、金髪の男が笑った。


「俺は、こいつの兄貴なんだよ!」


言いながら、手はズボンに入れたまま谷口の顔面に蹴りを入れた。


足、上がってないんだよ…。


谷口は思いながら、素早い正拳突きで金髪の顔面を潰す。


山口兄は、数メートル吹き飛んで、頭から地面に落ちた。


それを皮切りに、乱闘が始まった。


ボクシング使いの金玉を蹴潰し、柔道男の片足を折った辺りで、谷口は不意に、周り全てが見えるようになった。


ゾーンって奴か?


まあ便利なので五、六人をいっぺんに相手していたが、だんだん相手が、ビビってきた。


「な、なんなんだよ…、こいつ」


谷口は、後頭部に目が開き、背中に三本目の腕が生えていた。


相手がビビった事で覚醒したのだろうか?


谷口は、後頭部にあと二つの目が開き、肩の後ろの左右から手が出てきた。


ほほ、仏像のような姿になり、同時に出てきた円月刀と槍で、谷口は高笑いをしながら、ヤンキーたちを殺しまくった。

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