学生連合アプリの新ページ
どうやら美容師で、コンテストに出るほど優秀だったらしい。
聞いてみると、幼い頃から心臓は弱く、運動はしなかったようだ。
そのせいか、元々の性分か、死んだと気がついても、誠の中にいる、というのは気に入ったようだ。
(そーね、マコちゃんは、もう少し髪を伸ばしてアイドルのツカサ君風にするか、逆に切って固めても可愛いわね)
(あの、この子、半分あたしなんで、変なアドバイスはしないでください)
そういえば、真子だけは、誠から真子へ変身する力を持っている。
微かではあったが、影繰りだったからだろうか?
(あら、リバーシブルになれるのね。
素敵。
ちょっと古いけど、荻野目ちゃんみたいな髪型ならどちらにも合うんじゃないかしら!)
誠は全く解らなかったが、中村は賛成のようだった。
新井薬師のコンビニに警察が急行したが、いずれにしろ昨夜の事では指紋の採種も難しそうだ。
「学生連合のアプリは、若年層を中心に、既に百万ダウンロードを記録しているようです」
オペレーターが調べていた。
「内容のほとんどは、学生たちの世間話のようなもんですが、突発的に合コンイベントや集合イベントがあり、参加するとポイントが加算されます。
それ以外にもゲームとか、あと学業やスポーツの成績でもポイントが稼げるようですが、こちらで調べただけでは、課金で薬が手に入る、というような不健全な側面は見つけられていません」
ナビゲーターは首をかしげるが、竜吉が画面に割り込み、
「おそらく対象を絞っているのでしょう。
ただプログラムを調べてもシークレットエリアにはいけない。
よくある鍵かけです。
向こうの求める人材だけが、シークレットに入れるわけです」
「じゃあ、迂闊には侵入できないか?」
永田が聞くと、
「サーバーに侵入すればいいんですが、向こうも影を使っている、となると、ちょっと慎重にした方がいいでしょうね」
竜吉は言うが、
「しかし、我々には既にシークレットエリアに入っているスマホならあるじゃないですか」
チャンピオンを入院させた少年は、まだ警察署に抑留されていた。
普通のイベント開催、などの連絡が、楽しげなホップでカラフルに集合を誘っている。
スポーツのイベントもあるし、スタンプラリーに近い内容のイベントもある。
一人で達成できるものもあり、仲間で参加を促すものもある。
ただ、映画を観る、等もあるし、特定の場所で路上ライブを行い、集まった人数でポイントを稼ぐものもある。
それらの他愛ない募集案内の下に、外から調べたのではスクロールできない面があった。
三分間無敵、とか、一時間暗記する、などの薬もあり、それらは、学生に無理のない金額。
安いものなら数百円、高くても何万かで購入できた。
また、同じように、金を稼ぐ手だてを募集するものもある。
いわく、アイドルの中吊り広告を取る、とか軽犯罪から、川からゴミを十個拾う、などの善行もある。
書き取り一ページとか、オリジナル漫画を書く、等もあった。
「ゲームをクリアしたり、数々のイベントに参加してポイントを稼ぐことで、薬サイトやアルバイトサイトにアクセス出来るようになるようです。
おそらく、この手の他愛ないイベントやゲームは、学生連合の人選に関わっているのではないでしょうか」
竜吉の言葉に永田は、
「人を選ぶのか?」
「一人のスーパーマンを作るより、大量の兵隊を集めている、そんな感じを受けますね」
「ま、今のところ、推測だがな…」
永田は唸った。
永井時哉は大きな安堵のため息をついた。
無事にテストが終わったのだ。
時哉は、間違いなく前よりもよい成績を得、前よりもよい席を手に入れられるだろう。
超名門進学校の春山では、それはとてつもなく重要なことだった。
スマホのバイブが作動していることに永井は気がついた。
また、新しいページが開いたのだ。
学生連合では、ミッションクリアや、薬の購入などの後に、新しいページが開く。
それらのイベントをこなせば、より多くの薬が安く手に入り、またポイントも入手できる。
このポイントは、実は換金所という別サイトで電子マネーと交換が出来る。
好きなものも買えるし、無論薬の購入にも使えるのだ。
永井がスマホをスクロールすると、今まで無かったページに繋がった。
高円寺北三丁目のユリアマンション六◯八号室の郵便ポストに、花を一輪、さす。
これは意味不明のイベントだったが、永井の近所のマンションであり、確か古い物件なので、やるのは造作もなかった。
しかも…。
獲得ポイントはなんと三万だ。
実質三万円として電子マネーで使える。
永井は考えた。
今晩じゅうに達成すれば、おそらく先着一名になり、三万円をゲットできるだろう…。
その住戸が、霧峰という事など、永井は全く知らなかった。