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シャドウダンス4空飛ぶ怪異  作者: 六青ゆーせー
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樹海

誠は、非科学的だ、と怖い話しなどは聞かなかったが、実はネット怪談などはチラ見し、心底怖がっていた。


影繰りで無かったら、とても山の中など入れない。


意外と有名なネット怪談などは知っていたが、知らないと言い張った。


メチャクチャ怖い!


樹海なんて、自殺する人以外には、面白がって見に行き、祟られる人しかいない、と思っていた。


用心のため、しっかりトイレに行き、美鳥のバイクに乗った。


「まー、そんなにビビらないでも、既に警察も地元の巡回の人たちもいるのよ」


美鳥は言うが、場所が恐ろしいのである。

警察が、どう幽霊を祓うというのか…。


自分の体内に、既に幽霊がいることを忘れ、誠は犬なら尾を股に挟むようにビビっていた。


(まー考えようだぜ誠。

お前なら、おそらく最怖の怨霊をゲットできる!

下手な影繰りより、ずっと強いぜ)


田辺は慰めたが、


(駄目です。

祟りは、えてして何年もかかって相手を不幸にしていくんです。

影のように、目の前の敵を一撃で殺す力はありません…)


びびりながらも、誠は理屈っぽく語った。


(妖怪とかの方が、戦闘力なら高めだよな)


颯太は面白がる。


(ベナンガランぐらいなら、束でかかっても一撃で倒すじゃない)


真子は、何を恐れるのか、心底不思議そうだった。


(妖怪と幽霊の境界線は僕には判りませんが、どちらにしても、相手が死ぬまで何年でも祟り続けるところに恐ろしさがあるんです。

今だけならば、凶器を持った人間の方が、確かに怖い。

だけど、それなら、排除すればいい。排除できないから祟りは怖いんです!)


誠は熱く語り始めた。


心の中に既にいる人たちに、今さら非化学的などと嘘をついても始まらない。


樹海とか、✕✕トンネルとか、祟る神社とかには、絶対に行きたくない!


首塚とか耳塚とか道路の真ん中にあるけど切れない木とか、誠は無意識を装い、避けて通るのが常だった。


「しかし、よく顔泥棒も樹海なんて行きましたね!

もっと近くにいくらでもいい場所はあるだろうに!」


恐怖が、怒りに変わりかけてくる。


「向こうにしてみれば、死体が見つかるのは困るんでしょ」


美鳥はバイクを楽しみながら語った。


むしろ樹海ならば、高速を利用できるし、山道よりも格段に快適に向えた。


「しかし、よく考えて見ると、被害者は皆、テレポートに近い感覚を味わっています。

もしや、それが顔泥棒の力かも…?」


「そこは意識を失っているだけかもしれないわ。

姿を、声まで盗むというのは、相当に強い能力よ。

さらにテレポートまで自在に操る、となると、隠れて人を襲う意味があるかしら?」


これ、という人物に目星をつけたら、相手だけテレポートすればいいのだ。


また、顔を盗むという力の意味も判らない。


(快盗とかのイメージだよな。

ベリッと顔を破って)


颯太が語る。

アニメは大好きらしかった。


が、窃盗事件は報告されていなかった。

確かに、殺してまで顔を盗む意味が判らない。


テレポートが出来るのなら、変装など不要のはずなのだ。


(しかし、律儀と言えば律儀だな。

顔は盗むが、永遠に彼が真子ちゃんを存在させ続けているんだから)


(しかし、あたしはだから、永遠に死ねないのです。

あたしの知らないどこかで、嘘にしろあたしが生きているのだから…)


真子ちゃんの言葉に、皆がシーンとしたとき、高速をおりた美鳥が山道を進み、


「ここよ」


誠のイメージとはかなり違う、整地された道から数メートル入ったところに、警察車両や軽トラなどが多数、入り乱れて止まっていた。


美鳥と誠は、手帳を見せて、奥に進む。


森は、通りやすいように下生えを刈ってあったので、樹海に入る、というような困難さはなく、ただ木の太い根に注意しながら、誠たちは進んだ。


ブルーシートにのせられ、相変わらずの、抉られたように顔が無いが、全裸である以外、肉体的には傷一つない遺体がブルーシートに乗せられていた。


今まで、入水、投身、首吊りなどで死因を特定するのは容易だったが、この遺体には何の傷もなかった。


ただ、倒れていたのだ、と第一発見者は語った。


鑑識医は、被害者には心臓疾患があり、ほぼショック死だったろう、と推定した。


「誠、例のやつ、やりなさい!」


美鳥の言葉に一瞬首を傾げた誠だが、霊を探せ、と言うことだと気付き、泣きそうになりながら嫌がったが、颯太は面白がって、回りをさがした。


入り口付近のせいか、樹海のわりに恐ろしげなものはいなかったらしく、ただ、被害者は己が死んだとは気がつかずに、必死に森を抜けようとしていた。


「あたし、コンテストがあんのよぅ!」


女性言葉だが、肉体は男性のようだった。


「てっぺんすぎんまで美容院で練習して、終電で新井薬師に帰ったわ!」


とても、興奮しているらしい。


「それでコンビニでサラダチキンを見ていたら、後ろから、なんか可愛い男の子の声がしたの。

振り向いたら丸顔の…、ちょうどこの子のような子が立っていて、わっ可愛いって…」


え、この子って僕の事か?


誠は驚いた。


だけど、丸顔って言うのは納得できない。

誠は一度たりとも太ったことはなかったし、ここ半年は内調のトレーニングで、徐々に体重は増えていたが、ほとんど筋肉のはずだ。


「気がついたら、裸で森の中だもんで、あたし必死に出ようとしていたのよ!」


途中で命が尽きたのは偶然のようだった。

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