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シャドウダンス4空飛ぶ怪異  作者: 六青ゆーせー
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27犯人の目的

「顔泥棒は捜索願を出されないように、定期的に家に連絡を入れてるんですよね?」


自宅マンションの自分の部屋で、教科書から不意に目を離し、誠は声を出した。


両親は共働きで、この時間は誠以外、誰もいない。


「ええ。

それがどうかした?」


真子はだいぶフランクになっているが、誠は敬語だ。

というか、いつ真子が何を見ているか、誠には判らないので、最近の誠はかなり自重した生活を送っていたが、さすがに禅僧のような訳にはいかない。


なので、見ない、とは言われていたが、心のどこかで一歩引いてしまう。


まだ中村は、わざと入浴中に出てきて冗談を言ったりして、誠との距離を縮めていたが、真子はそのつもりもないようだ。


「こっちから電話をしたらどうでしょう?」


「あっちは本物、こちらは男の子の体を借りてるだけ。

勝負にならないわ」


なんとか顔泥棒の正体に迫りたいのだが、どうも尾っぽが掴めない。

殺された人間が、別人に殺された、と言うのだから、やりようがなかった。


無論、中村や田辺の殺された現場も科学捜査をしているのだが、死体が発見された時点で数日が経過しているのでは、ほとんど何の証拠も出てこない。


「だが、なんでそんなに顔がいるのか、謎だよな」


田辺も語った。


最近の死体発見のペースは一週間に一回。


真子が殺されたのは昨年末なので、そのペースを考えると、何十人も殺されている計算だ。


「シリアルキラーなのかもしれないわね」


と中村。


「何ですか、それは?」


誠が聞くと、シリアルで朝食を済ますように簡単に人を殺してしまうサイコパスと呼ばれる、殺人の重みの判断できない人格障害らしい。


しかし、影繰りもそんなようなものだよな、と誠は思った。


「生きてる風に工作をするのは、矛盾じゃないか?」


田辺は言うが、おおむねサイコパスは頭もよく、人に付け入るのも上手い。


ある意味、無責任で人間をナメ、己を過信しているからそうなのだが、生きている工作ぐらいはしても不思議ではないらしい。


「そうだ。

調べれば真子さんの家にかかってくる電話番号を調べれば…」


「あたしの携帯から、あたしの預金講座を使って支払われて、かかってくるのよ。

ただ、GPSは巧妙に切られているらしいわ」


相手は数段、誠より上手の知能犯らしい。






「いやー死ぬかと思ったぜ!」


水着姿の渡辺龍が、良治に昨日の遁走劇を話していた。


「しかし…」


と、良治。


「そこ、何でもアリなのか?」


最近、ユリと暮らしていることもあり、良治もほとんど遊んでいない。

今の話しは、そんな良治には刺激が強すぎたらしい。


「いやいや、あーゆうのは、知らない顔が入っていったら、どこで聞いた、って話しになるよ。

下手すりゃ、東京湾に浮かぶぜ」


アイチがゲラゲラ笑うが、東京湾に浮かんだ死体を最近見た誠は、泳ぎながらそれを聞いた。


直接聞いても子供に教える話しでもなさそうなので、颯太が盗み聞きをした。


(え、ツカサが北千住の東南アジア系のアブノーマルな店に…!)


誠も男子なので、そんな話は水着で聞きたくなかった。


何でもってどう言うことだろう…、的な興味は、無論、胸に渦巻く。


(あまり、そんなことは知らない方がいいわよ)


真子は言うが、中村は、


(あら、知らない方が、坊やみたいな子には危険なのよ。

世間って、知っておいた方がいいわよ)


と面白がる。


(まー、変態なんて無限にあるんだから、知ろうと思っても無駄だよ)


と田辺。


だが颯太がそんなことを聞き逃すはずもなく。


(✕✕で○○で、しかも△△らしいぜ、あのアイドル)


逆に酷すぎて、誠には人物が理解できなかった。


(そんな事されたら、相手の人は?)


(まー、その辺は追求しない方が心は平穏だぜ)


颯太は訳知り顔で誠に教えた。


とはいえ…。


(そんなに変態な人って事は、少なくとも顔泥棒ではないね)


死体は、顔が無い以外は綺麗なものだった。

そんな野獣のような趣味の人の犯行には思えない。


(ま、ある意味、ツカサって子供っぽいルックスなだけだからな)


(そんなこと無いわ)


と珍しく真子が感情を現す。


(彼は、ほとんどの曲の作詞作曲もしていて、そこには、ありとあらゆる境遇の男女の感情が、とても深く歌い込まれているの)


(え、真子さん、あんな話を聞いてもツカサを?)


(多分、渡辺さんの見間違いよ。

彼は繊細な人よ)


(美男って、特だよなー、誠)


颯太は言うが、誠自身は、自分がそれほど不細工とは思っていなかった。


しかし、なぜ顔を盗み、他人に成り済ますのか?

しかも、それほど大量の他人を使い分けるとは何の目的なのか、誠は頭を悩ませた。


と、額のデバイスが、水中で誠を呼び出した。


「誠、また死体が見つかったわ。

今度は樹海よ」


美鳥の言葉に、誠の気は重くなった。

誠は基本、幽霊などいない、というスタンスを崩したことはないが、本当はメチャクチャ怖かったのだ。


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