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シャドウダンス4空飛ぶ怪異  作者: 六青ゆーせー
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25薬

誠は勇気を連れて帰ってきた。


誠は色々、あれこれと動いていたのだが、勇気の方は、このままでは終われない、とばかりに、一人、指令室の廊下で、じっとベンチに座って待っていたのだ。


そこに川上が主人が帰宅した愛犬のように駆けつけ、何故かカブト、レディ、小百合、ユリコ、ハマユまで集まっていた。


女子がいるとカブトは完全に猫をかぶり、美形の弟として女子受けする態度を演じる。


誠は今までの流れを皆に話した。


「謎の薬?

一時的に影が使えるのか?」


ユリコは首をかしげた。


「おそらく、そういう影なのだと思います。

小柄な少年が格闘チャンピオンを殴り殺すほどのパワーです」


「あれ?

今、学校で誰かが、なんか話してたぜ。

アプリで課金すると薬をもらえる、とか」


川上の言葉にユリコが、


「なんだそれ、スマホから薬が出てくるのか?」


「郵送だと足がつきそうですよね?」


と誠も首を傾げた。


「宅配みたいに、個人のミニバンとかで運んだら、特に目立たないんじゃない?」


小百合が言えばカブトも、


「チャリで運ぶんだよ。

絶対バレない!」


各自、情報収集をしよう、という話しになって散会したが、むろん、勇気は残っていた。


隣から見られるのが嫌なほどの思春期症状を呈している勇気が、ユリコたちjkにオネショの話を聞かれるわけにはいかないのだ。

男のプライドだった。


「ペナンガランは簡単なんだけど、あの水の化け物は、一旦捕まったら逃げられない奴なんだ」


どーしようかな…。


と、誠も頭を悩ます。


「じゃあ、俺もやってみようかな…」


不意に勇気が言い出し、誠が聞くと、


「学生連合だよ!

強くなるんだろ?」


誠は慌てて勇気を止め、


「何か体に残るかもしれないんだ。

いや、無目的に慈善事業をするはずが無い。

使うにつれ、何か体に影響があるのは間違いない!」


学生連合の仕事の一端を、誠は気がついた気がした。





「何度か使ううちに何かが残る?

まあ、影繰りの力なら、確かにありそうだが、しかしアプリを作ったり、手がかかっているな」


アクトレスは唸ったが、麻薬犯罪と同じと思えば頷ける部分もある。


とはいえ、今の段階では全てが仮説に過ぎなかった。


学生連合のアプリを誠も入手すれば良いのだが、おそらくGPSなども関連する恐れもある。


今の段階で迂闊に手を出さない方が安全だった。


昼食を基地で取り、ピッタリと張り付いている勇気をどうするか、誠は頭を悩ませていた。


水の怪物がいる以上、勇気を伊豆には連れていけない。


そういう誠の逡巡を勇気なりに察したものか、ハンバーグランチを食べながら、


「なあ、俺は水の中でも平気なんだぜ」


「いや、あれはただの水じゃない。

捕まったら、逃げられず、万力のような力で潰される」


虫と子供は理解できない誠だが、生真面目なので、説明はキッチリとした。


「奴は無敵なのか?」


「いや、凍らせるとか、あるいはセメントを混ぜるとか、やりようによっては、その場はしのげないこともない。

ただ、たぶん影繰りは別にいると思う」


「ふーん…」


しばらく黙り込む二人だったが…。


「そうか、空はたぶん飛べないな」


誠は思い付いた。


水の化け物は確かに強力で、倒しようも限られているが、水の質量があったら、おそらく飛行はできない。


ペナンガランは空を飛べるのだから、空中戦なら水は無視できるかもしれない。


「そうだよ!」


勇気も飛び上がるように同意した。


誠と勇気は、その日二度目の伊豆へと向かった。






音速で飛んでも、伊豆の空はピンク色に染まっていた。

一日中、誠は勇気をくっつけて歩いていた事になる。

まあ、虫にしてはおとなしい方だった。


森の上空をしばらく飛ぶが、なかなかペナンガランは現れない。

どちらも影繰りが操っているとすれば、水の怪物を避けているのは見えみえかも知れなかった。


だが、誠は颯太や真子、田辺や中村を使うことができる。


森を探すと、


(どうも、南側に変な木が生えている一角があるな)


勘のいい田辺が見つけだした。


そちらに向かうと、黒い柱のように無数のペナンガランが飛び上がってきた。


「勇気、やれるか?」


「頑張る!」


勇気にすれば、一日中、待っていたのだ、数が多いから、などで二の足は踏めない。


とにかく、三角定規の銃を撃ちまくった。


バチン、バチンと弾けるようにペナンガランは落ちていくが、森から次々と上がってくるので、数が減らないどころか、夕日の空を覆い隠すほどの化け物の群れに育っていた。


これは適当に繰り上げないと、身が持たないな…。


勇気の疲労も考え、誠は黒い翼を開いて無数の影の手を広げると、一気にペナンガランを殲滅した。

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