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シャドウダンス4空飛ぶ怪異  作者: 六青ゆーせー
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21いけない店

「それっぽいのが入ったぞ」


渡辺が背後にささやくと、アイチに伝わる。


店の廊下や階段に豆粒ほどのカメラを仕込んでおり、動画を撮影できる。

ヌーヌーは、動作は鈍いが、細かい作業もこなせるし、影繰り以外には目視も認識もできない。


ハイエースの後部は、そのモニターで埋まっていた。


高感度カメラには、ローアングルで、若者の顔が捉えられた。


「当たり、だな…」


アイチは液晶画面を見て、頷いた。


トップアイドルも人の子、って訳だ。


「ちょっと尾行するか…」


豆粒カメラを仕込んだ、粘着テープのタイヤを持つラジコンがある。


ほんのおもちゃだが、小指の先ほどの大きさで、天井を走れる。


アイチが上手いのは、何もスケボーだけではない。

バイクは限定解除だし、また、ラジコン操作も天才的だ。


ツカサは階段を上がり、三つ目の店に入った。


全てスナックやバー、居酒屋を偽装しており、また実際に客も入るが、奥の個室では特殊なサービスが受けられる。


個室は、マンガ喫茶ほどの大きさだったが、パソコンは無くシングルベッドが入った。


ツカサは、カブトの予測通り、地声の、意外なほど普通の男の声でボソボソと通話した。


「おー、こりゃ聞きしに勝る変態だな!」


変に喜ぶアイチだが…。


この渡辺所有のハイエースに近づく人影があった。






眠気覚ましにガムを噛みながら渡辺が回りを見ると、少年が歩いてきた。


北千住でも飲み屋街のこの一帯に、この時間、こんなに幼そうな子供が出歩くことはない。


見た感じ、スポーツジャージとハーパンで、トレーニング中という感じだが、そうでないのは空気で判る。


野郎、影繰りだな…。


渡辺龍にはすぐ判った。


だてに、小学生から中学、高校、大学生の影繰りの通うトレーニンク場にいるわけではないのだ。

彼らの、影を出すときの雰囲気を、渡辺は探偵らしい観察眼で掴んでいた。


「出るぞアイチ」


小さく語り、渡辺は走り出した。


コインパーキングも、入って料金内なので、スムーズに出られる。

そう操作して、入金を済ませて停めているのだ。


影繰りと戦っても、アイチもいるので、まず負けないが、相手はおそらくアジア系マフィアだ。


その影繰りとなると、ヤバ過ぎた。


ハイエースは、百キロ超えで、タイヤを鳴らしながら昭和通りに遁走した。







「俺、おねしょしたんだ…」


小学五年の、深刻な悩み相談である。


ただし、誠は子供の悩みを受け止められるほど大人でも人格者でも無かった。

むしろ、子供と虫の区別もつかない、ぐらいに、子供の事など何も解らなかった。


が、勇気にとって、とても重い告白なのは、さすがに判った。


「…それは多分…」


誠は、なんとか話のイニシアチブを取り、早期解決をはかろうとしたが…。


「ペナンガランが、怖かったんだ!」


「えっと、誰でも、本当に妖怪なんかが出てきたら…」


「面白れー、って思ってたのに、俺、漏らしちゃったんだ!」


深刻な告白なのは、判る。

現に勇気は萎れて、目に涙をためている。


「あー、なんていうかな、そういう心霊とかこの世に無い物、と思っている事に対する感受性っているのは人によって違って、わりと普通に受け止められる人もいれば信じていない分、拒絶反応を起こす人間もいて、それは強さとかとは全く関係ない事なんだ。


同じアニメを見て、同じように面白くっても、感じ方はそれぞれだろ。

なんでもないところが怖かったり、逆に笑っちゃったりするだろ?


それを個性って言うんだよ」


誠は、よく自分でも判っていない話を、なんとかまとめた。

まとめたが、それを勇気が是とするか、は別の問題だった。


「…だけど俺、これじゃあ林間学校に行けないよ…」


誠は、その当時、どうしたら林間学校に行かずに済むか、にしか頭を悩ませていなかったので、根本的に、とても楽しみにしているらしい勇気が理解できなかったが、本能的に理解できたフリをして頷いた。


それでなければ、この状況から逃げ出せそうになかったからだ。


「そうだな…」


と、考えるフリをして、誠は単純に子供に判りやすい方法を提案してみる事にした。


「多分、原因の一つは、あのペナンガランに負ける、と勇気が思っているからだ!」


あえて断定的に言い切った。

迫力で納得させてしまおう、という方法論だった。


「え…、でも、怖いよ…」


「顔が飛んでると思えば怖いが、ただの鳥と考えるんだ。

勇気の銃で充分に落とせるはずだぞ」


やや、自分でもキャラが違う、とは思うが、極めて日曜朝のヒーローっぽく、勇気を元気づけた。


「多分、一匹倒すのは造作もないだろう。

だが、あの時は川から大量に出てきたから、皆、怖がったんだ!」


「だけど他の奴は平気みたいなんだ…」


「たまたまだよ。

ちょっとオシッコを我慢しているときに出会ったから、漏れた、それだけなのさ!」


勇気は、懐疑的に考え始めていた。


「考えても始まらないぞ。

もう一度、あそこに行って、ペナンガランを倒すんだ。

それで君の悩みは、必ず解決する!」


我ながらキャラではなかったが、誠は一刻も早く一人になりたかった。


「え、今から行くの!」


勇気がビビった。


「行かなければ今夜も危ないぞ!」


脅かすと、勇気はジレンマに震えながらも、


「判った!

やるよ、俺!」


頷いた。

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