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シャドウダンス4空飛ぶ怪異  作者: 六青ゆーせー
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16川遊び

ペナンガランと顔泥棒?


全く別なはずの二つの事件だが、今、ほとんど同じ場所で、別行動をとっているはずの影繰り二人が、重複するように活動してたことが判った。


無論、それには何の相関性もない。

顔泥棒は他人の顔を盗むだけだし、ペナンガランは所かまわず人を襲う。


ただ、それではペナンガランを操る影繰りは顔泥棒を襲わないのか?、と考えると、謎が生まれる。


例えば、ペナンガランの影繰りが、顔泥棒の方が強いので襲わない、と判断したとしたら、井口はなぜ襲われたのか?


確かに顔泥棒は、狙った獲物を確実に殺している、その意味では強力な影繰りだが、直接戦闘も強いのだろうか?


また仮に井口はペナンガランより弱い、と思われたにせよ、それでは今の状況はどうなのか?


誠も、カブトもそれなりの戦闘力もあり、また小学生たちも、途方もない影の持ち主なはずだ。


それとも、影の力などは判らずに、外見だけで襲う相手を選んでいるのか?


ならばなぜ、野方に現れたのか?


このような森であれば、外見上確かに強そうではない高一の誠たちや小学生は襲いやすい、と考えるにしても、東京の真ん中では、警官も多いし身に覚えのある屈強な男も多いはずだ。

個人営業の影繰りも、都会では意外なほど多いのが、最近は誠にも判った。


井口も、誠からみたら大人だが、成人から見れば高二の釣り好きにしか見えないだろう。

顔つきも幼いだろうし、しかも、青山とかよりむしろ、井口はスリムで中背だから、襲いやすいと思われたのかもしれないが、野方はそうではない。


それに真子の見た顔泥棒は、誠とそう変わらない年齢の、ある意味、華奢な少年だったはずだ。

田辺の見た顔泥棒も、それが成長したような姿だったし、華奢で中性的なのは変わらない特徴のようだ。

ならば、なぜペナンガランは顔泥棒を襲わないのか?


深く考えている間に、誠は子供たちの川に戻った。

しかし、そこでは、川から次々と浮き上がってくるペナンガランに子供たちとカブトが襲われていた。


「キャア!」


岩の上でレイナちゃんが叫んでいる。


海面から、ポコリ、と二体のペナンガランが浮かび上がり、なんと長い髪の毛を岩に伸ばして、ズルッ、と這い上がってきた。


いつもは血気盛んな元気だが、今は別の岩で、腰が抜けたように座り込んでいた。


元気を取り巻くように二匹のペナンガランが空中を踊っている。


カブトは、ペナンガランをドンドン爆破していた。


が、次々に水の中からペナンガランは飛び出してくる。


川上はウサギで複数のペナンガランと戦ってはいるが、相手は空中に逃れられるので分が悪い。


誠は、岩に座り込んだ勇気を抱えて、空に飛び、同時に二体のペナンガランを影の手で殺した。


「勇気、どうした?」


勇気は顔を赤らめて、


「漏らしちゃった…」


あえて、勇気の下半身を水につけてやり、


「川上君、皆を車に!」


殺しても爆破しても、ペナンガランは無数に出てくる。

これは思ったよりも、ずっと強敵のようだ。


勇気は、漏らした痕跡が消えると、急に元気になったようだ。


「よし、皆変身するぞ!」


戦隊ヒーローに変身した子供たちは、今までの怯えはどこに行ったのか、というほどの戦闘力で、ペナンガランを撃退し始めた。


「川上君、どこかに影繰りはいないかな?」


無限に現れるペナンガランを一々相手にしていてもしょうがない。

本体を倒すしか、仕方がなかった。


「探してるんだけどよ、誠ッち、俺たち以外人間の気配は無いんだ!」


ん、どういうことか?


ともかく八人は河原の岩を登って、車に向かった。


が…。


運転手の窪田さんがいない。

男物の革靴の片方が、ゴロンと落ちていた。


「おかしいな、窪田さんの気配がない!」


もし最悪の事態があったとしても、それを子供たちに見せる訳にはいかなかった。


「大丈夫だ!

ロボットに合体して、車を運ぶから!」


勇気が言うと、子供たちは車を出し、ロボに合体した。

カブトと川上はワゴン車に乗り、ロボットがワゴンを軽々と抱え、走り出した。


誠は空中から、ロボットを援護した。


ロボットは、最速ならば高速に乗れそうな速度で走れた。


近くのペナンガランを誠が撃退すると、後の敵は、背後に撤退した。

ペナンガランが何者かの意思で動いている感じを、誠は感じる。

だが近くに術者らしきものはいないのだという。


誠が軽の後部ドアに、ペナンガランの首を入れようとすると、ふと透視してしまった。

満員電車などでも、誠にはよくある事だが、そこに人体が見えようとは思っていなかった。


窪田さんは、身体を背骨から半分に折られた姿で、そこに押し込められていた。


これは…。


顔だけの妖怪に、血は吸えるかもしれなかったが、とても人間の腰骨を折る力があるとは思えなかった。

何か別の、影繰りなり、妖怪なりが介在しているように、誠には思えた。


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