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シャドウダンス4空飛ぶ怪異  作者: 六青ゆーせー
15/153

15森

「ほーら、蟹を捕まえたぜ!」


いつの間にか、靴を脱いでズボンを膝まで捲り上げたカブトが、子供たちに加わった。


精神年齢が近いのかもしれない。


と、自閉症気味の誠は断定したが、誠が自在に外部を遮断できるのも、ある種の幼児性であることは認識していなかった。


それにしても修学旅行では悔しい思いをした、と誠はまた、己の精神に入り込む。


奈良、京都を自由行動できたのだが、班行動だったため、地下には全く行けなかったのだ。


中二といえば、いい大人なのだから独り行動くらいさせてくれてもいいのにな…。


と誠は思う。


問題があったらスマホで連絡を取れば、大抵は済むはずだ。


あと、何故か大浴場に入れたがる学校側の姿勢にも疑問を感じる。

別に真子が誠の心にいなくとも、誠は他人に裸を見られるのは好まなかった。


男子の裸など見たくもないが、たまに物凄く見たがる奴もいる。

その毛のある奴なのか? とも思うが、普通に女子好きらしい話もする。

そういえば、川上も不意に誠のハーパンをめくって中を見たりした!


急に怒りが湧くが、まあ川上とは仲良くなっていたから許せるのだが…。


同じことをカブトもする。

これは趣味なのが明確なのだが、何故か見られてるのは誠だが、真子ちゃんも嫌がっていた…。


修学旅行といえば、宿の部屋には、ちゃんとバスルームがあるのに、使うなと言うのは学校の横暴ではないか?


と、誠が勝手に怒っていると、


「誠っち、西の方で怪しい鳴き声が聞こえるんだ。

見てきてくれないか?」


川上のウサギが一匹走ってきて、誠に語った。


「判った…」


誠は空に浮かんだ。


西方面にゆっくり飛行しながら、耳を澄ます。

西側は、傾斜の急な山に向かっており、川は左手に折れて鋭角に曲がり、渓流になっていた。


ささやかだが滝があり、その音もあって、鳴き声は聞こえない。


(川上君の耳は、ウサギの影もあって、凄い威力だな…)


誠の透視は、他人には羨ましがられるが、現実には衣服の透視などはできない。


わずか一ミリにもならないような透視をするのは、とても困難なうえ、衣服も肌も均等な厚みになることはほとんど無いからだ。


だいたい、裸がみたい、と思うのは、微かでも好きだからだが、その子の筋組織や血管を見たりしたら、好きな分だけ衝撃も大きい。


そして近くは拡大で見れる誠だが、何故か遠くを望遠鏡のようには見られないのだ。


透視はある程度の距離までできるのだが…。


そして、今のような大自然が相手だと、透視もあまり意味はない。

ある木を透視しても、その先にも木があるだけだからだ。


みんなの思う透視と、違い過ぎている!


不満が、自分への怒りに変わりかけた誠だが、


(おい、誠!)


颯太が誠を現実に引き戻した。


遠くで、りりりり…、というような微かな声が聞こえてきた。


誠は、影能力には不満があったが、颯太はとてもいい相棒だった。

無論、真子ちゃんも田辺さんも頼りになるのだが、なんとなく誠の魂に一番近い位置にいるのが颯太のようだった。


颯太がいなくなったら、僕は一/三ぐらいの力しか出ないだろうな…。


思いながらも、誠は音のする方へ向かった。


きりきりきり…。


物悲しげな、寂しい鳴き声だ。

誠は二度目なので、それがペナンガランだとすぐに判った。


どこだ…。


果てしない森林なので、敵の位置特定ができない。

山は平坦ではなく、木で見えないが複雑な起伏があるため、音は反射して、当てにできない。


と…。


きりきりきりきり…。


別の声だと判る鳴き声が、聞こえてきた。


カラスなどでも、一羽が鳴いているのと二羽なのでは、声の違いで区別できる。

同じように、微妙に違う声のペナンガランが、近くにいた!


どうする…!


カブトにも来てもらうか、と考えるが。


(待って。

二匹とは限らないわ。

カブトは子供の側にいるべきよ)


真子ちゃんがアドバイスしてくれた。


確かに、こんな距離で二匹もペナンガランがいるのだとしたら、全体ではどれ程のペナンガランがいるのが、想像もできない。


誠は、手間取ってはいられなかった。


(誠君、左下と右の先だよ)


田辺が言った。


(田辺さん、判るんですか?)


誠は全く判らない。


(俺は勘がいいんだ。

任せてくれ)


田辺に感覚を任せると、すぐ誠も判った。


見えないものが、急に見えた感じ…。


寄り目にすると立体に見える写真のように、不意にペナンガランの位置が判った。


同時に影の手で仕留め、死体は研究のために、持ち帰る。


(田辺さんの、これは感知能力なのかな?)


田辺には、不明な事がまだあるようだった。


と、田辺が再び語った。


(誠君。

どうやら、森に死体がある)


誠が見ると、首を吊って亡くなった遺体だ。

全裸であること、顔が抉れて無いことから、犯人は明白だった。




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