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シャドウダンス4空飛ぶ怪異  作者: 六青ゆーせー
133/153

133液体

「うわぁぁ!

ちきしょう!

やったな、この野郎!」


殺人少年は腕を押さえ叫んだが。


「ち、俺ゃあ女なんだよっ!」


少年の顎に鋭いアッパーカットを叩き込んだ。


少年は数メートル吹き飛んで高架下の飲み屋のシャッターを突き破った。


「ちっ、弱えーじゃねーか!」


と、何故かユリコは怒り出し、金髪の髪を掻き上げるが……。


へこんで、半分になったシャッターから、少年がのっそりと出てきた。


顔が斜めに捩れ、顎は砕けてダラダラと血が流れている。


「仕留めて楽にしてやるぜ!」


とユリコが少年に向かうが……。


よろり、とよろめいた少年は、シャッターの中から、ボロボロでサビの浮かんだ丸椅子を取り出すと。


少年の手と、丸椅子が一体となり、丸椅子が一瞬、布のように柔らかくなった、とみると、つるり、と少年の体に吸収される。


少年が、曲がった首を、片手で押すと、折れるように曲がり、一瞬、軟体化した。


顔がまっすぐに戻ると、少年の怪我は、全て治っていた。


「バケモンが……」


ユリコは吐き捨てる。


「あんたも大概、化け物だけどな」


少年は、ヘラッと笑い。


「第二ラウンドだぜ!」


ボクシングの構えで、飛び跳ねる。


ユリコは、やや警戒しながら少年に接近した。

フットワークを使われると、攻撃が当てづらくなるのは内調のスパーリングでも解っていた。


だから最初にダメージを与えたのだが、ボロ椅子一つで全回復、となると戦い方を考えなければならない。


えっと、よく狙ってコンパクトに当てるんだったか……。


頭で反芻しながら、少年に近づく。


ジリジリと用心深くユリコは進み、薄く笑って跳ねるように右手を前に構えながらフットワークを固めた少年に近づく。


リングがあれば、そろそろ中央で向かい合う、という間合いまで接近すると。


少年が素早く、動きながらジャブを連発する。


一撃で人の命を奪うほどのパンチだが、ユリコも近接戦闘の影のオーラを纏っている。


顔色も変えずに、動いて撹乱を計る少年を追って、体を回す。


ユリコが右を前に構えているので、左のパンチが主砲と考えたのか、少年は右に回っていく。


極めて教科書的な動きなのだが、ユリコにとっては自由に動けないだけでイライラしてくる。


と、少年は不意に前蹴りをユリコのみぞおちに突き刺した。


オーラを纏っている、とはいえ、痛いは痛い。


「あんた、こーゆー闘いはヘタクソだな」


ケケッと笑った少年は、なおボクシング風のフットワークを続けながら、不意にカンフーのような掌底を打ち込んだり、ローキックを放ったり、テクニックでユリコを圧倒した。


ちきしょう……!


ユリコは唸るが。


少年が踊るようなフットワークから、パンチを繰り出す動きをした。


ユリコはガードを上げ、顔を守るが、パンチパンチフェイントで、同時に脇腹をキックが襲った。


ヤバッ!


慌てたユリコだが。


パン、とユリコの胴体と少年の足の間で爆発が起こった。


「おいおい、あんた、随分地味な戦いをしてるな。

相手に付き合ってどうするよ」


JRの高架橋の外に、カブトが立っていた。


そしてカブトがパチンと指を鳴らすと同時に、少年の両肩と右足が吹き飛ぶ。


きゃあ、と少年は痛みのあまり叫び出すが。


「カブト、コイツ再生するんだ……」


ユリコが告げた。


「ほう、じゃあ早めに殺らないとな」


カブトは冷酷な笑いを浮かべるが、


「遅いね!」


少年は、落ちていた買い物袋を口で噛む。


買い物袋がぐにゃりと曲がり、少年に吸い込まれる。


すると、無傷の少年が、ゆっくりと立ち上がった。


「ユリコ。

あんた、棒が武器なんだろ?

なんで使わない?」


ぬ、とユリコは喉の奥で唸る。


素手で充分に倒せると思ったのだ。

それに、素手の敵には素手で戦いたかった。


「見た通り、目の前のコイツは、ガキに見えるが、不死の化け物だぞ。

おそらく頭を叩き割らなけりゃ死なないだろう。

長生きしたきゃ、手を抜くな!」


言うと、少年の顔面が破裂した。


とんでもない野郎だな……。


ユリコはカブトを侮っていた。

痩せマッチョ等というが、ヒョロいだけのガキじゃねーか、と。


だが、迂闊に近づけば自分でも、いとも簡単に頭を吹き飛ばされる、と思い知った。


「オメー強いな……」


「あんたも、強いと思うよ。

でも格好つけてたら、すぐに殺される世界だよ、ここは」


カブトは、涼しく笑ったが……。


「おい、ガキが消えたぞ!」


上空で見ていた井口が叫んだ。


えっ、と遺体を見下ろしたとき、そこには微かな血の跡しか残っていなかった。





中居の頭をめがけて、アンキロサウルスの首から上だけが、硬い装甲のような背中の上を滑り落ちてきた。


美鳥の蝶が慌てたように首に張り付くが、生物の体の構造を超えた動きを見せる頭をどう止めれば良いものか、中居も美鳥も全く判らなかった。


中居は高熱の左手を引き抜いて対抗しようとするが……。


何故か、ガッチリと肘の関節部分までアンキロサウルスの胴体に埋まっており、動けない!


しまった!

ハメられたのだ……!


アンキロサウルスの顎は近づくと、中居の頭を丸ごと齧れそうな巨大さだった。


……死ぬ……。


逃れようが無かった。


だが。


高屋の球体が、どこからかアンキロサウルスの顔面を、真横から撃ち抜いた。


なんと、高屋の一撃でアンキロサウルスの首は、背中を離れて、アスファルトの上に転がった。

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